
導入事例#035

株式会社景水 緑翠亭景水さま(長野県大町市)
北アルプス山麓に抱かれ、鹿島川のほとりにある信州大町温泉郷。自然豊かなこの温泉郷にある株式会社景水 緑翠亭景水さまは、和風モダンをコンセプトにしたくつろぎの空間と、庭園大浴場や露天風呂を備える創業約35年の温泉旅館です。
長野県大町市は冬の外気温は、ときには-20℃、1日の積雪量が50センチになることもある寒冷地で、緑翠亭景水さまでは灯油を用いる吸収式冷温水発生機で空調や給湯を行っていました。
「ここは寒さが厳しく、冬になると灯油などの油を多く使う地域です。しかも、私たちのような旅館は大がかりな装置や設備が必要になるため、エネルギーコストが非常に高くなってしまいます。電気のみならず、灯油も含めたエネルギーのコストをなんとか削減できないものかと、中部電力には2年ほど前から省エネ対策を相談をしてきました」と同社専務取締役の碓井さまは語ります。
昨今の原油価格の高騰、環境保全への取り組みといった点からも省エネと省CO2効果に優れた熱源機器の導入を考えていた緑翠亭景水さま。既設の吸収式冷温水発生機を新しくするか、灯油を使わない新しいシステムに切り替えるか、熱源機器の選択を検討していました。また、熱源機器の更新に当たってはイニシャルコストの軽減や、工事期間中も休館日を設けず営業を続けるという要望がありました。
緑翠亭景水さまから相談を受けた中部電力は、省エネと省CO2を図る熱源機器の選択、イニシャルコストの軽減、そして工事期間中の休館回避という3つの課題解決に着手しました。
第一の課題の解決策としてヒートポンプを考えましたが、外気温−20℃、積雪・凍結といった気象条件において、空気の熱を利用するヒートポンプでは安定した性能を発揮することが難しい場合もあります。中部電力は、空気の熱に替わるものとして地下水の熱に注目。調査の結果、この地域は飲料用水として利用している地下水が豊富で、水温も外気温より温かい約10℃で安定していることがわかりました。そこで、地下水の熱を有効活用するヒートポンプシステムの構築に取り組みました。
第2の課題であるイニシャルコストの軽減については、国の補助金制度の中から緑翠亭景水さまに最もメリットがあるNEDOの補助金制度をご紹介。碓井さまを補助金の説明会にご案内したり、申請書類の作成などもお手伝いしました。
工事期間中の旅館営業という第三の課題については、中部電力グループの株式会社トーエネックと協力して工事のプランを考えていきました。
緑翠亭景水さまの施設は大きく分けて本館と新館の二棟があり、それぞれ吸収式冷温水発生機で給湯、浴槽昇温、空調を行っていました。中部電力は、まず本館の吸収式冷温水発生機を水熱源ヒートポンプに切り替えるご提案をしました。
水熱源ヒートポンプの試算も出し、年間のエネルギーコストは対前年で2千5百万円の削減、一次エネルギーは対前年比20.8%の削減、CO2排出量は対前年比29.5%削減という試算値を提示しました。

「寒冷地ではヒートポンプの導入は難しいと思っていましたから、地下水の熱を利用するヒートポンプの提案を受けた時は正直驚きました。中部電力からは熱源機改修に関するさまざまな調査データや多角的なレポートの提出もあり、それが非常にわかりやすく、検討する際に役立ちました」と碓井さまは当時を振り返ります。
中部電力は、碓井さまを「ENE-WAY(中部電力主催の展示会)」や設備・機器メーカーの工場にご案内してヒートポンプの設備をご紹介したり、実際に寒冷地でヒートポンプを使用している施設を見学していただきました。
こうした提案が受け入れられて本館に水熱源のヒートポンプの採用が決まり、取水井戸、井水槽、ヒートポンプ(能力260HP)を導入しました。
緑翠亭景水さまが採用した水熱源ヒートポンプは、まず取水井戸で地下水を汲み上げて貯水タンクに収め、配管を通してヒートポンプの熱源として供給します。ヒートポンプで作った冷温水は、本館の各施設に供給。給湯・冷暖房・かけ流しの温泉の温度保持に活用しています。
以前の緑翠亭景水さまは、約660キロリットルの灯油を使用していました。中部電力ではその灯油使用量を約160キロリットルに削減できるよう水熱源ヒートポンプのシステムを構築しています。
2009年2月から水熱源ヒートポンプの本格運転に入り、同年10月までの9か月間で一次エネルギー削減の実績値は、計画値20.8%を上回る28.6%を達成。CO2排出量も計画値29.5%に対し、実績値が40.9%と計画値を上回る結果になりました。
「この半年間だけでも、灯油の使用量が圧倒的に減りました。また、ヒートポンプは燃焼部がないので故障も少なく、自動制御システムなので日常的なメンテナンスの手間も省けました。予想以上によい結果を得ることができたと実感しています」と碓井さまは、省エネ効果とともにメンテナンスの容易さも評価しています。


水熱源ヒートポンプを導入したことで、従業員の意識も変化しました。「導入前は、従業員も『本当に省エネがうまくいくのか』と半信半疑だったと思います。しかし、ヒートポンプによって大幅な省エネが実現できたことで、現在は従業員一人ひとりがより真剣に、より意欲的に省エネ活動に取り組むようになったと思います」(碓井さま)。
第二の課題であったイニシャルコストについては、NEDOの補助金の採択が決まりました。これにより当初の投資額の約1/3を削減でき、初期投資の回収期間も短縮できました。
また、工事期間中も旅館の営業を続けるため、緑翠亭景水さまとトーエネック、中部電力による綿密な打ち合わせを実施。状況に応じて工事内容を変更するなど、さまざまな工夫と努力を重ねました。これにより工事期間中も一日も休館日を設けることなく、工期完了の期限も延長することなく、水熱源ヒートポンプの設置と既設の吸収式冷温水発生機の撤去を終えました。
上質なくつろぎが広がる旅館での時間を楽しんでいただくことをテーマに、料理やサービスにおもてなしの心を行き渡らせる緑翠亭景水さま。水熱源ヒートポンプは省エネや省コスト、省CO2を実現するとともに、客室の空調などを通じて利用客が心地よく安心して過ごすことができる空間づくりに貢献しています。
今後は新館にもヒートポンプの導入を検討しているという緑翠亭景水さまのために、中部電力は本館の水熱源ヒートポンプのデータ収集と検証を行い、新館に採用する際のシステム構築に反映させていきます。
「設備やシステムについて勉強をしていますが、私たちでは最新の情報はなかなか入手することができません。中部電力のソリューション活動は、そういった最先端の技術情報を提案してもらえるので大変ありがたいですね」(碓井さま)。
これからも中部電力は、緑翠亭景水さまのニーズに最適な設備機器やシステム、最新の技術情報を提案し、省エネや省コスト、環境保全の取り組みをサポートしていきます。
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