プレスリリース バックナンバー(2000年)

電線絶縁材リサイクル技術の開発について ~超臨界水によるかきょう架橋分解手法の開発~

平成12年6月6日
中部電力株式会社

 この度、当社は昭和電線電纜(しょうわでんせんでんらん)株式会社(社長:權正信行(ごんしょうのぶゆき)氏、住所:川崎市川崎区小田栄2-1-1)と共同で、従来、再利用が不可能であった電力ケーブルの被覆に用いられている電気絶縁材(架橋ポリエチレン)を、リサイクル可能とする技術を開発いたしました。
 
      架橋ポリエチレン;温度があがって溶融しないよう、架橋と呼ばれる
               特殊な化学処理を施されたポリエチレン

 今回開発した技術は、超臨界水(高温高圧の水)によって、リサイクルを阻害 していた架橋ポリエチレンの架橋部分を分解し、通常のリサイクル可能なポリエチレンに戻すものです。

 現在、超臨界水は、PCBやダイオキシン等の有害物質の分解や、プラスチックスの油化、モノマー化などの分解処理に利用が検討されていますが、今回開発した超臨界水による架橋分解技術には、


1 プラスチックの構造を分子レベルで制御

2 そのため、もとの油や原料にまで分解せず、製品として再利用可能

3 また、水のみを使用する処理で、分解後の後処理が不要

という特徴があります。

 今後は、新しいリサイクル技術の一つとして、架橋ポリエチレンに限らず、各種材料・用途への適応検討を進める予定です。

 研究期間  平成11年4月から平成14年3月
 研究費用  約1億円

以  上

<別 紙>

1.研究の背景

 ポリエチレンは、電気絶縁性能に優れたプラスチックスですが、温度を上げると溶融するため、電気を送る場合、電気抵抗による発熱でポリエチレンが軟化、溶融し、電気絶縁性能を維持できなくなります。
このため、電力ケーブルに使用されるポリエチレンは、架橋と呼ばれる、温度が上がっても溶融しない特殊な化学処理が施されております。
また、品質面でも、不純物が極めて少ない特に良質なポリエチレンを使用しており、架橋処理とあいまって、優れた電気絶縁性能を実現しております。
 しかし、この架橋処理によって、通常のプラスチックスのリサイクル手法である加熱による溶融再処理が不可能となり、使用済み電力ケーブルの架橋ポリエチレンは、優れた品質を持つにもかかわらず、一部が燃料として利用されているものの、ほとんどが産業廃棄物として埋め立て処理されています。

2.開発の概要

水は、温度、圧力が、それぞれ 374.2℃、22.1MPa以上の状態になると、気体と液体の両方の性質を もつ超臨界水と呼ばれる流体となります。  超臨界水は、液体の時のような大きな分子のまま、気体のように活発に動くた め、液体の溶解力と気体の拡散力を兼ね備えた状態となります。 このため、通常は水に混ざらない油や有機溶剤でも、超臨界水には溶け、分解に必要な酸素も混ざるため、どんな有機物でも酸化分解できます。
 現在、超臨界水による分解処理は、PCBやダイオキシン等の有害物質の分解や、プラスチックスをもとの油や原料(モノマー)などに分解する処理技術として検討されています。
 今回の開発は、このような分解処理を行うのではなく、プラスチックの分子構造制御に超臨界水分解を利用し、架橋ポリエチレンの架橋構造を分解するもので、これにより燃料以外に利用できなかった架橋ポリエチレンを、様々な用途にリサイクルできるポリエチレンに戻すことに成功したものです。

開発概要図

3.開発の成果

 今回の架橋分解技術では、ポリエチレンを分子レベルで構造変化制御し、ほぼ架橋処理前の状態に戻すことができます。このため、燃料として使用し、炭酸ガスと水に分解してしまうサーマルリサイクルとは異なり、資源として再利用する完全リサイクルの道をひらくものです。

4.今後の進め方

 今後は、大容量の処理を行えるシステムに必要な連続化などの要素技術開発に加え、他の材料・用途への適用性の研究を進め、新規事業としての展開も視野に入れた開発を進めます。

以  上

<参考>

ポリエチレンの架橋機構

ポリエチレンの架橋処理による効果

架橋ポリエチレン結晶組織の電子顕微鏡写真

ポリエチレンの結晶構造
ラメラ(折りたたみ)構造