プレスリリース バックナンバー(2000年)

世界最高性能を持つ超電導線材の開発について ~強磁場利用技術を大きく向上~

平成12年7月11日
中部電力株式会社


 この度、当社は昭和電線電纜株式会社(社長:權正信行氏、住所:川崎市川崎区小田2-1-1)と共同で、現在、実用化されている超電導線材の特性を大幅に上回る新型超電導線材の開発に成功いたしました。

 今回開発した線材は、平成10年5月に開発した世界初の高強度大容量導体で使用した線材の通電特性(電流密度)を3倍に引き上げた(10テスラで20万A/cm2 )もので、現在、超電導磁気浮上列車(リニアモーターカー)や加速器、核融合炉など、超電導線材を使用して開発が進められている超電導応用機器の性能を大きく向上する新型線材です。

 超電導線材には金属系と酸化物系があります。現在、さまざまな機器で実用化されているのは金属系ですが、今回開発した線材は酸化物系で、金属系に比べて次のような優れた特徴があります。


1.臨界電流密度(線材の単位面積あたりに超電導状態で流すことができる電
 流の限界値)が高い。
2.磁場による臨界電流値の低下がほとんどないため、今までにない強い磁場を
 作ることができる。
3.臨界温度(超電導になる温度)がかなり高いため、クエンチ(発熱などに
 より超電導状態が壊れる現象)がない。

 今回開発した線材は、電力分野では、SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage:超電導電力貯蔵装置)と呼ばれる電力を貯蔵する装置など、強い磁場を必要とする超電導装置には最適な線材であり、超電導応用機器の実用化を大きく前進させることができます。

 研究期間  平成9年4月から平成13年3月
 研究費用  約1.8億円

以  上

<別 紙>

1.研究の背景

 強力な磁場を作るには、電線を何重にも巻いてそこに大きな電流を流す必要があります。
超電導線材は、銅線に比べて電流密度が非常に高く、また、電気抵抗が無いため、細い線で大きな電流を流すことができます。このため、超電導線材を使えば、銅線で巻くより巻数を増やし大きな電流を流せることから、強力な磁場をコンパクトに作ることが可能となります。

 超電導材料には金属系と酸化物系があります。1960年代に開発が進んだ金属系は、現在、磁気浮上列車や核融合炉、MRIと呼ばれる画像診断装置など、強力な磁場を必要とする装置に実用化されています。しかし、金属系では、磁場が強くなるにつれて流せる電流が小さくなるとともに、超電導が壊れる臨界磁場と呼ばれる限界値も存在します。

 一方、酸化物系は、高温超電導体とも呼ばれ、超電導となる温度が高いため、超電導化に必要な冷却が簡単で、超電導ケーブルなど、従来の超電導機器には無い新しい応用を目指した開発が進められています。
 また、酸化物系は、金属系が使われている低温では臨界磁場が非常に高く、磁場による臨界電流密度の低下がほとんど起きないという特徴があります。しかし、これまでの酸化物系は、線材内部の電流分布が不均一なため、電流密度が低いという課題がありました。

2.開発の概要

 今回開発した超電導線材は、一昨年の5月に開発した世界初の高強度大容量導体で使用した線材の臨界電流密度を、3倍に引き上げた酸化物超電導線材です。

臨界電流密度

この線材は、
・金属系超電導線材を越える電流密度を実現
・金属系超電導線材のような磁場による臨界電流密度の低下がほとんどない
・金属系超電導線材に比べ超電導となる温度が高いため、超電導状態が安定している
 という特長があり、現在実用化されているすべての金属系超電導線材の特性を大幅に向上した世界最高性能を持つ超電導線材です。

 今回の開発では、超電導原料の均質化と加工条件の最適化により、線材の中にある超電導フィラメントを細くしてバランスよく配置することで、フィラメントの均一性を高めました。これにより、超電導線の電流密度を上げるためには不可欠な、線材内部の電流分布を均一にすることを可能とし、前回開発した酸化物線材の臨界電流密度を3倍に向上することに成功しました。

3.開発の成果

 今回開発した線材を巻きコイルを作製すれば、大きな電流を流すことで、コンパクトで強力な磁場を発生することができます。このため、従来の金属系超電導線材では実用化が難しかった強力な磁場を利用する超電導応用機器の開発が可能となります。

 強力な磁場を利用する技術は、電力分野を始め医療や輸送分野などへの幅広い応用が可能です。また、強力な磁場中では、結晶成長や化学反応などで通常とは異なる現象が起こることが確認されており、新しい材料開発の研究が進められています。

 電力分野では、SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage system)と呼ばれる超電導電力貯蔵装置への応用が挙げられ、今回開発した線材を用いると、強い磁場を利用してエネルギー貯蔵密度を高めることができるとともに、コイルの大きさを従来の金属系を用いたコイルに比べて1/5にコンパクトできます。また、超電導となる温度が高いことから超電導状態が安定しており、信頼性の高いSMESを実現できます。

 このほか、今回開発した線材は加速器や核融合炉、核磁気共鳴(NMR)装置など、性能が磁場の強さで決まる装置に用いるのに最適であり、これまでの技術では難しかった強力な磁場を利用する技術の実用化を、大きく前進させることができます。
 また、酸化物超電導体の臨界温度が高いことから、従来の液体ヘリウムを用いた冷却から冷凍機で直接冷却する新しい超電導システムを実現できます。

4.今後の進め方

 今回開発に成功した線材は、従来の超電導機器に使用されている金属系超電導線材の幅広い置き換えが可能で、なかでもSMESでは、その性能、信頼性を大きく改善すると考えられます。
 SMESは、今後のIT関連でますます重要となってくる瞬時電圧低下対策に優れた機能を持ち、既に、海外では一部導入が始まっており、また、急激な負荷変動となる新幹線などの鉄道の負荷平準化用としてもその効果が期待されます。
 他にも、MRIやNMRなど医療・医学用超電導機器や加速器等の高磁場利用分野などへの応用が期待され、今後は、引き続き線材の性能向上を進めるとともに、線材供給を含めた超電導事業の展開へ向け検討を行います。

以  上

線材比較図
線材比較表
強磁場利用技術への波及効果メッセージ