プレスリリース バックナンバー(2000年)

磁気冷凍システムの開発について ~世界初! フロンを使わない次世代の冷凍技術~

平成12年10月3日
中部電力株式会社

 当社は、このたび株式会社東芝(社長:岡村正氏、住所:東京都港区芝浦1-1-1)と共同で、磁気を利用した冷凍システムの開発に世界で初めて成功しましたのでお知らせします。
今回当社が開発した磁気冷凍システムは、従来の気体を圧縮・膨張させる気体冷凍技術と異なり、磁性体※に磁界※の変化を与えると温度が変わる現象(磁気熱量効果)を利用したものです。
          ※磁性体:磁場をかけると磁気を示す物質。
          ※磁 界:磁力が働いている空間。
 
 磁気冷凍技術には、次のような優れた特徴があります。

1. 環境にやさしい。
 オゾン層を破壊するフロンや代替フロンの替わりに、磁性体の磁界変化による温度変化を利用す
るため、地球環境にやさしい。
2.エネルギー変換効率が高い。
 気体の圧縮・膨張を使わず、固体である磁性体の磁界変化を利用して温度変化を得るため、エネ
 ルギーの損失が少なく効率が高い。
3.省エネが可能である。
 コンプレッサが不要で動力が少なくてすむため、省エネルギーを図ることができる。

 今後さらに、この開発を進めることにより、フロンや代替フロンを使用することなく、環境にやさしい、また高効率で省エネルギーが図れる次世代の冷凍システムの実現を目指します。

  研究期間  平成11年9月から平成13年3月
  研究費用  約4千万円
 なお、本研究の成果は10月4日(水)、5日(木)に当社技術開発本部(名古屋市緑区大高町字北関山20-1)にて開催する「テクノフェア2000」において、デモ機により実演公開します。

以  上

<別 紙>

1.研究の背景

 最近、地球温暖化を引き起こし、オゾン層を破壊するフロン等を用いない冷凍技術の開発が行われています。その中でも、今回の磁気冷凍技術は、従来の気体の圧縮・膨張による技術とは異なり、磁性体に磁界の変化を与えると温度が変わる現象(磁気熱量効果)を利用したものです。しかし、1回の磁界変化による磁性体の温度変化幅は小さいため、エアコンや冷蔵庫などに応用するのは困難と考えられていました。

2.磁気冷凍の原理と特徴

(1) 原理

 今回開発に成功した磁気冷凍システムは、磁性体に磁界をかけていくと磁性体が発熱し、磁界を取り去ると温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用しています。磁性体が冷えるのは、外部の磁界により磁性体中の磁化※の向きを揃えられている状態から磁界を弱くする(ゼロにする)と、磁化の向きバラバラとなり磁気エントロピー※が増加するためです。この時、磁性体の周りから熱を奪うため、冷凍を行なうことが可能となります。
 外部磁界の変化に対し、磁気冷凍で利用できる磁性体の磁化の向きと温度の関係の概念を下図に示します。
※磁 化:磁性を示す基となる向きを持った最小単位。
※磁気エントロピー:磁化のそろっている程度を表す量。完全にそろっている状態は0となる。

磁気冷凍の概念

(2) 特徴

 磁気冷凍技術を従来の気体冷凍技術と比較すると、以下の特徴があります。


・環境にやさしい。

 フロンや代替フロンの替わりに磁性体の磁界変化による温度変化を利用する、従来とは全く異なる次世代の冷凍技術です。


・エネルギー変換効率が高い。

 気体冷凍技術では、気体を圧縮・膨張する際、損失が発生します。一方、磁気冷凍技術は、固体である磁性体に磁界変化を与えることで一様かつ瞬時に温度変化が得られるため、理想的な冷凍サイクルに近づけることが可能となります。


・省エネが可能である。

 コンプレッサは不要であり、動力は熱交換媒体の循環と磁性体の移動に必要なだけであり、省エネルギーを図ることができます。

3.開発の概要

 磁気冷凍により熱を取り出すためには、磁界変化によって生じる磁性体の温度変化を、媒体(水など)により熱交換する必要があります。また、1回の磁界変化で生じる磁性体の温度変化は小さいため、繰り返し磁界変化を与える必要があります。
 今回開発した装置では、磁性体が磁石の中を上下に往復運動することで、磁性体に磁界変化を繰り返し与えています。この磁界の変化に合わせて、磁性体と熱交換する媒体(水など)の流れの方向を切り替えることで熱を取り出すことができます。
 これにより、磁性体としてガドリニウム(Gd)を2kg使用して、28℃から-1℃まで冷凍することに世界で初めて成功しました。
 今回開発した装置の性能を効率(COP)に換算すると、4.3と考えられますが、今後熱交換部分の改良にさらに高効率な冷凍システムの実現を目指します。
※COP(coefficient of performance):消費電力当たりの加熱、冷却能力をあらわしたもので、この値が大きいほど効率が良くなる。

       

4.今後の進め方

 今後は、フロン等を使用しない高効率な冷凍技術である磁気冷凍技術の実用化を目指し、高い磁気熱量効果を持つ磁性体の開発や装置の小型化などの研究開発を進めます。

以  上

別紙

磁気冷凍について