プレスリリース バックナンバー(2000年)

新型高温超電導導体の開発について ~超電導ケーブルの実用化に目途~

平成12年11月13日
中部電力株式会社

 このたび、当社は株式会社フジクラ(社長:辻川 昭氏、住所:東京都江東区木場1-5-1)、昭和電線電纜株式会社(社長:權正信行氏、住所:川崎市川崎区小田栄2-1-1)と共同で、超電導ケーブルの大容量・コンパクト化を可能とする新型高温超電導導体の開発に成功いたしました。

 今回開発した技術は、線材の並びを転位導体※化することにより超電導ケーブル開発における技術課題であった交流通電時の電流の不均一(偏流現象)による交流損失の大幅な低減を実現可能とするものです。
 ※転位導体とは、複数の線材をねじることなく撚り合わせる構造をした導体

 今回開発した高温超電導導体は、以下のような特徴があります。

  1. 1.従来の3倍の機械強度を持つ幅狭線材の開発により、従来不可能であった転
      位導体構造の実現に成功
  2. 2.転位導体化により、偏流を完全に解消し、超電導ケーブルの交流損失の開発
      目標値(1W/m)の1/10となる0.1W/mの低損失を実現

 交流損失の大幅な低減に成功することにより、超電導導体の発熱を大幅に軽減することが出来、その結果、ケーブルのコンパクト化、冷却設備の軽減を図ることが可能となり、超電導ケーブルの建設コストも従来の電力ケーブル建設費とほぼ同等となる見通しを得ることが出来ました。

 今後は、実系統導入を前提した検討を行い、実用化に向けて開発を進めます。

 研究期間  平成6年4月から平成13年3月
 研究費用  約4.4億円

以  上

<別紙>

1.研究の背景

 超電導の最大の魅力は、電気抵抗がゼロになることです。この現象を利用した超電導電力ケーブルは、コンパクトなサイズで大容量の電力を無駄なく送ることが可能となるため、その実用化が待ち望まれています。
 現在、日米欧を中心に活発な研究開発が展開されていますが、大容量・コンパクトケーブルを実現する上で、欠かすことの出来ない技術として、交流損失の低減を挙げることができます。
 本来、超電導は抵抗が無いため、電力損失は発生しませんが、交流電流を超電導導体に流すと、偏流現象(電流が導体の外側に集中して流れる現象)が発生し、大きな交流損失が発生します。この損失は、エネルギーロスとなると同時に発熱による温度上昇を招き、最悪の場合、超電導状態が壊れてしまいます。


 従来の超電導導体は、図1のようなフォーマーの周りにテープ線材をスパイラ ル状に巻き付け積層する多層スパイラル構造による導体化が行われていますが、 この方法では、比較的容易に導体化が可能となる反面、大容量化するために層を 重ねていくと偏流現象が起こり、大きな交流損失が発生するという問題がありま した。

 この対策として、図2に示すような各層の超電導線材の巻き付け幅を調整し、 導体内を均等に電流が流れるようにするスパイラルピッチ調整が検討されていま すが、大容量化のため重ねる層の数を多くするとテープ線材の巻き付けピッチ調 整が困難になり、本法による導体の大容量化には限界がありました。  そこで、今回の開発では、この偏流を抑制する手法として、超電導導体を転位 構造とすることにより、導体内の電流を均一に流し、交流損失の低減を図ること を検討しました。

2.開発の概要

(1)転位導体とは

 転位導体とは、図3に示すように複数のテープ線材を撚り合わせることにより 構成された導体であり、超電導線材の位置を導体の軸方向に対し、内層-外層- 内層へと順次入れ替えるものです。これにより導体内の線材の位置で決まる電流 の不均一を完全に解消し、交流損失を大幅に低減することが可能となります。  しかしこのような構造は、線材に加えられる曲げが非常に大きく、転位構造は 難しいと考えられていました。


(2)転位導体用幅狭線材の開発

 そこでまず、転位導体用として通常の超電導線材より曲げに強い幅狭線材の開 発を行いました。これは線材の厚さは同じで、幅を狭くすることにより、小さく 曲げることが出来、また超電導体を包むシース材料も、従来の銀ではなく、特殊 な合金とすることで、従来の線材に比べ、曲げに対しては3倍、引っ張りに対し ては6倍の高い機械強度を実現し、テープ線材による転位導体化が可能となりま した。図4に幅狭線材による転位導体の断面写真を示します。

スパイラルピッチ調整導体構造
転位導体の構造図
幅狭線材による転位導体の断面写真

(3)積層転位導体と交流損失の測定

 ここで、この転位導体は、転位を構成する線材の数を増やすことにより、容易に大電流化が図れます。今回、更に積層技術も取り入れ、実使用可能な2~3層の積層を行う積層転位構造での開発を進め、3層積層転位導体を用いた通電実験を行い電力損失を測定した結果、積層転位構造による均流化に成功し、0.1W/m(1,000A通電時)の低損失を実現しました。
 これは、超電導ケーブル開発の目標値である1W/mの1/10に相当します。
 また、現在使用されている銅の電力ケーブルに比べて、およそ1/300もの低損失導体と言うことが出来ます。

3.開発の成果

(1)低損失積層転位導体の効果

 これまでの超電導導体は、大容量化のために導体の断面積を増やそうとすると、偏流現象が顕著となり、大きな電力損失を生む結果となっておりましたが、今回開発した超電導導体は、大容量と低損失を両立させることが可能な画期的な導体と言うことが出来ます。
 高温超電導ケーブルは液体窒素による冷却が必要ですが、本導体は0.1W/mという低損失の実現により、熱となる電力損失が非常に小さいため、同じ電流容量、同じ太さの導体を考えた場合、発熱の少ない分、冷却管を細く出来、ケーブルがコンパクトになります。
また、発熱による液体窒素の温度上昇分を再冷却するために必要な冷却ステーションの間隔を長くする事が可能となるため、システム全体として、冷却設備に係るコストを削減することが可能となり、超電導ケーブルの建設コストも従来の電力ケーブル建設費のほぼ同等となる見通しを得ることが出来ました。
また、冷凍装置に必要な電力を送電損失として含めた超電導ケーブルの電力損失は、従来の銅ケーブルのおよそ1/6(1,000A通電時)程度であり、ランニングコストの面からも、大きな導入効果が期待できます。

(2)熱収縮吸収構造の開発

 超電導導体は、液体窒素(-196℃)の冷却により、その長さが0.3%程度収縮 します。これを1kmのケーブルで換算しますとその収縮量は3mにもなり、そ のままでは超電導体に引張力が働き超電導特性が大きく劣化してしまいます。そ こで図5のような低温で超電導体よりも収縮量の大きなスペーサーをケーブル内 部に配置し、冷却時には、このスペーサーが収縮することで超電導導体の収縮を 吸収し、収縮時の引張力を緩和することを可能としました。

熱収縮吸収構造

4.今後の進め方

 当社は、超電導送電システム開発に関連してこれまでに、超電導に不可欠な液体窒素を用いた極低温冷却技術、電力系統との接続に必要な77kV級終端接続部を開発しており、今回の偏流抑制転位導体、ならびに、これを使用した低損失超電導導体の開発によって、超電導送電システム実現に必要なケーブル主要技術の開発に見通しが得られました。
 今後は、更なる大容量・低損失ケーブルの実現を目指した研究開発を進めるとともに、実系統導入を前提とした検討を行い、長尺冷却や信頼性など実使用に必要な検討を進めて行く予定です。

以  上

<参 考>

積層転位導体の開発

積層転位導体の開発