プレスリリース バックナンバー(2002年)

超電導線材の作製における合成技術の確立について ~多段高速合成技術により、世界最速・最長合成を実現~

平成14年6月6日
中部電力株式会社

 当社は、株式会社フジクラ(社長:辻川昭氏、住所:東京都江東区木場1-5-1)と共同で、実用化が待ち望まれていた次世代超電導線材の合成技術の開発に成功いたしましたので、お知らせいたします。

 電気抵抗ゼロを特徴とする超電導技術は、電力の流通段階で発生する電力損失を大きく低減できるため、有益な環境技術として実用化が待ち望まれております。

 当社が従来から開発を続けているイットリウム系超電導線材は、大電流を送れるものの、結晶同士のつながりが悪いため、線材を作製する際に、結晶同士のつながりを規則正しくさせる制御が必要になります。
 このため、超電導体の原料を気体にして作製する気相法※1を採用しておりますが、線材作製に時間がかかるなど長尺化が困難という課題がありました。

 この克服へ向け、当社では、平成11年10月に発表いたしました多段合成手法※2
のさらなる開発を進めてきました結果、今回、実用化の課題となっていた気相法の合成速度を実用化レベルまで到達させる線材合成技術の開発に成功いたしました。

※1 気体中に線材の基となる金属テープを通過させ、表面に原料の結晶を付着させることで、
   超電導体を作製する手法
※2 超電導物質の反応領域を複数化し、そこを通過させる基材の移動速度を上げることで、高
   速成膜を可能とする手法

開発した技術のポイントは、以下のとおりです。

1 多段合成技術の確立
   6段合成手法により、世界最速となる実用化に必要な10m/hを達成
    (平成11年10月発表時点では、3段合成技術により3m/h)
2 連続合成技術
   原料供給システムの構造の改良により、24時間以上の長時間連続合成が可能
    (平成11年10月発表時点では、最大4時間程度)

 合成速度10m/hにて、10時間の連続合成を行い作製した100mの線材は、世界最速・最長であります。
 本技術の開発により、高性能な超電導電力貯蔵装置(SMES)等のマグネットや大容量・低損失な超電導ケーブル等の実現に見通しを得ることが出来ました。
 今後は、上記超電導機器作製のために必要な長さ500m以上の線材量産製造システムの検討に入ります。

 研究期間: 平成2年4月~平成16年3月
 研究費用: 約8億円

以  上

<別 紙>

1 研究の背景

 電気抵抗ゼロを特徴とする超電導技術は、発電および電力の流通段階で発生する電力損失を大きく低減することが可能となるため、有益な環境技術として、その実用化が待ち望まれています。
 超電導材料の中でも、液体窒素温度(-196℃)で超電導が可能となる高温超電導体は、液体ヘリウム温度(-269℃)で超電導が可能となる金属系超電導体に比べて冷却が容易で、実用化されれば一大技術革新となります。
 現在開発が進められている高温超電導体は、銅の酸化物の結晶体で、大きく分けて、イットリウム系とビスマス系の2種類があります。当社では、高温超電導体発見当初より、性能の高いイットリウム系の線材化技術の開発を進めております。
 今回確立に成功した超電導線材多段高速合成技術は、平成11年に超電導結晶成長領域を3段化し、線材合成速度の高速化(3m/h)を可能とした技術を更に発展させ、完成させたものです。

2 開発の概要

(1)これまでの取り組み

 ビスマス系は、結晶同士の繋がりが良く、細い銀銀のパイプに粉末状の酸化物を封入して、延ばすだけで線材を作ることが出来、現在、送電ケーブル等の実証試験が可能な段階まできていますが、イットリウム系に比べ電流密度が低く、また磁場中では、特性が劣化する性質があり、超電導技術導入のメリットが十分発揮されていませんでした。
 一方、イットリウム系は、電流密度がビスマス系の10~100倍で、磁場中でも特性劣化が少なく、液体窒素温度で使用可能な最も性能の高い超電導体ですが、結晶同士の繋がりが悪いため、線材を作るには気体状の元素を基材の表面に結晶化させる手法(気相法)が必要となります。
 しかし、気相法は、元素が結晶化する速度が遅く、線材作製速度には限界があり、その長尺化は、実用化への大きな課題となっていました。
 線材を実用レベルまで長尺化するためには、この気相法による線材合成速度を高めることが必要不可欠となります。当社では、結晶成長領域を複数化し、1段当りの線材合成速度を上げる多段合成技術の開発に取り組んできました。
 これまでの開発において、超電導体の結晶成長領域の多段化により、線材性能を劣化させることなく合成速度を向上出来ることの原理検証に成功し、多段合成手法が合成速度向上に有効な手段であることを明らかにしました。

(2)6段合成手法の検証

 今回の開発では、本手法の実用性能を実証するため、実用レベルの合成速度10m/hをターゲットとする結晶成長領域の更なる多段化(6段化)の検証を実施しました。
 多段化は、単に段数を増加させれば良いと言うわけではなく、各段における結晶成長反応を同時に、しかも原子のレベルで精密に制御することが必要となります。
 今回の開発では、各段により異なる最適な反応室温度、原料組成、原料供給量等の合成条件を見出し、また、この条件を正確に制御することにより、合成速度10m/hにおいても、超電導性能を劣化させることなく、線材合成を行うことを可能としました。

(3)連続合成技術

 実用レベルの長さの線材を作製するためには、合成速度の向上と同時に、長時間に渡る連続かつ安定な原料供給系の実現が不可欠となります。従来の供給系では、時間の経過と共に原料を供給するシステムに詰まりが生じ、連続運転には限界がありました。
 今回の開発では、原料供給システムの構造の見直しを行うことにより、24時間以上の連続運転を可能とし、連続運転時間を飛躍的に向上させました。

3 開発の成果

 上記の2つの技術、6段合成手法、連続合成技術を用いて今回、合成速度10m/hにて、10時間の連続合成を行い、100m長に渡り良好な超電導特性を得ることに成功しました。
 今回達成した合成速度10m/h、線材長さ100mは、世界でも例がなく、本技術は正に、世界最速・最長の超電導線材を生み出す画期的な技術であると言うことが出来ます。
 今回の実証により多段合成技術を、長尺化が課題であったイットリウム系線材の合成手法として確立することに成功いたしました。
 本技術は、従来、長さ10mが限界であった線材化を、工業化が見通せるレベルまで引き上げたものであり、これにより、高性能な超電導電力貯蔵装置(SMES)等のマグネットや大容量・低損失な超電導ケーブル等の実現に見通しを得ることが出来ました。

4 今後の進め方

 今後は、上記超電導機器作製のために必要な長さ500m以上の線材量産製造システムの検討に入ります。

以  上

<参 考>

多段(6段)合成手法によるイットリウム系線材(線材長100m)


6段合成装置(全景)


6段合成装置(線材合成部)