プレスリリース バックナンバー(2002年)

超低損失超電導磁気軸受と高回転安定型ロータの開発について ~新型超電導電力貯蔵フライホイールの開発~

平成14年6月17日
中部電力株式会社

 当社は、三菱重工業株式会社(社長:西岡 喬氏、住所:東京都千代田区丸の内2-5-1)と同和鉱業株式会社(社長:吉川 廣和、住所:東京都千代田区丸の内1-8-2)と共同で、高速回転時の性能を大幅に向上できる新型超電導フライホイールの開発に成功いたしましたので、お知らせいたします。

 超電導体は、内部に侵入した磁力線を固定する特徴があるため、磁石との組み合わせで、非常に強力で安定した磁気浮上を実現することができます。超電導フライホールとは、この現象を利用して円盤の軸受部分を非接触にして高速回転させ、電気エネルギーを回転エネルギーに変えて電力を貯蔵する装置です。

 その貯蔵量は、ロータ(回転体)の大きさと回転速度の2乗に比例しますが、高速化すればするほど「磁場変動が増大して軸受損失※が増加する」・「軸の振動が大きくなり安定性が不十分となる」という主に2つの課題がありました。

 この克服に向け開発を進めてきました結果、実用化の鍵を握る下記の2つの中心技術の開発に成功し、高性能な超電導フライホイールの構造を確立いたしました。


超低損失の超電導磁気軸受の開発
世界最大となる高性能大型超電導体(バルク体)の開発により軸受損失の大幅な低減
軸受損失: 3.1kW → 38W @10,000rpm
高回転安定型ロータの開発
ロータを縦長から偏平構造に変えるなどの構造見直しにより回転性能を大幅に向上
軸 振 動: 50ミクロン → 10ミクロン

 今後は、商用機となる10kWh級超電導フライホールについてシステムの検証を行い、3年以内に世界初となる実用化を目指します。

※ 軸受の回転部と静止部間で生じる摩擦損失。超電導軸受では非接触のため摩擦損失は生じないが、磁場変動による損失が生じる。

  • 研究期間  平成8年4月から平成14年3月
  • 研究費用  約6億9千万円

以  上

<別 紙>

1.研究の背景

 フライホイールは回転軸に取り付けた円盤を回転させることにより運動(回転)エネルギーとしてエネルギー貯蔵を行う装置です。
 その貯蔵量は回転体(ロータ)の大きさに比例しますが、回転速度の2乗にも比例します。そのため、高速回転型のフライホイールにすると小型でエネルギー貯蔵量の大きなフライホイールが実現しますが、軸受の摩擦損失も回転数に比例して大きくなるため、小容量機以外では高速回転型は実現していませんでした。
 超電導フライホイールは、この軸受部分を超電導による磁気浮上を利用した非接触の軸受とすることで、高速回転型を可能とするものです。しかもその浮上に冷却以外のエネルギーを必要としないため、従来にない効率の高く、コンパクトな電力貯蔵装置となります。
 しかし、これらの特徴を活かすためには、以下に示す2つの大きな技術課題を克服する必要があります。

(1)軸受損失の低減

 超電導軸受は複数の超電導バルク体を並べることにより必要な浮上力を得ます。
しかし、バルク体とバルク体の間で発生する磁場の変動により損失が大きくなります。この損失を小さくするには、磁場の変動に強くサイズの大きなバルク体が必要となります。

(2)回転安定性の向上

 高速になればなるほど、ロータの振れ回る力が大きくなるため、回転性能が低下します。従来のフライホイールは縦長のロータを採用しているため、軸のたわみが大きく、高速回転時の安定性が不十分となる傾向にあります。この場合、軸受を追加するなどの方法で振動を抑え込む必要がありますが、超電導フライホイールは非接触を特徴としているため、実現は困難であります。

2.開発の概要

(1)超低損失超電導磁気軸受の開発

 今回、磁場特性の優れたサマリウム・ガドリニウム系の超電導バルク体にて大型化技術を確立しました。これにより磁場変動に強く、軸受損失の大幅な低減が可能となりました。
 本技術を現在開発中の12.5kWh機に適用した場合、軸受損失は機械式軸受の3.1kWに対して、その1/80である38Wまで低減しました。これはこのクラスの軸受としては、現在世界最小の軸受損失となります。

(2)高回転安定型ロータの開発

 また、軸のない偏平な構造をとることにより、ロータ自体が振動を発生しない新しい構造を開発しました。これにより超電導軸受のみで軸振動を低減でき、高速回転時の安定性が大幅に向上しました。
 本技術を12.5kWh機に適用した場合、軸振動は既開発である1kWh実証機の50ミクロンに対して、その1/5となる10ミクロンまで低減しました。

従来(縦長構造) 新型ロータ(扁平構造)

 今回の開発により、回転時の信頼性の向上と低損失化が図れ、高速回転に有利な超電導フライホイールの特長を最大限に活かせる構造を確立しました。
 これにより、現在開発中の12.5kWh機の要素技術が確立し、実用化の目途が立ちました。

3.今後の進め方

 今後は、商用機となる10kWh級超電導フライホイールについて電力貯蔵システムとしての検証を行い、3年以内に世界初となる実用化を目指します。

以  上

参  考

世界最大のサマリウム・ガドリニウム系超電導バルク体


高回転安定型ロータ(12.5kWh機用φ1.2mロータ)