プレスリリース バックナンバー(2002年)

バイオ技術による大型藻類の種苗生産技術を開発 ~ 中部国際空港島の藻場造成事業に採用される ~

平成14年8月6日
中部電力株式会社

 当社は、わが国の沿岸海域で衰退、消滅しつつあるアラメ、カジメ等の大型藻類の群落(藻場)の再生をめざして、バイオ技術による大型藻類の種苗生産技術を開発してまいりました。
 このほど、中部国際空港(株)殿が空港島西側の傾斜堤護岸において実施される藻場造成事業に、本技術を適用した藻場造成工法が採用されましたので、お知らせいたします。
 バイオ技術による人工種苗が大規模事業に適用されるのは、わが国では初めてとなります。

本技術の特長は、次のとおりです。

 藻類の胞子(陸上植物の種子に相当)を培養、育成することにより、必要な時に必要な量の種苗を生産できる。
 この種苗を用いた藻場造成工法は、全国的に希少となった天然藻場から、 大量の母藻を採取することなく藻場を創ることができる。

 また、創出した藻場は、日本の森林に多く生息するカンバ林に匹敵するCO2の吸収、固定能力があることを実証しており、地球温暖化の抑制にも貢献することができます。
 従って、中部国際空港(株)殿がめざす環境に優しい空港づくりの趣旨に沿った技術として、本技術を使った造成工法が採用されたものと考えております。

 空港島の藻場造成事業は、魚介類の産卵・生育場所の創出を目的として、空港島の南側および西側護岸約6.5kmで実施される計画であります。今回は、西側護岸の約4kmで、カジメを主体として行われ、 その約70%に当たる藻場造成工事を、当社の関連会社である(株)テクノ中部が、当社の技術を使って実施することになりました。

 当社は、環境に優しい技術開発の一環として、平成5年から、バイオ技術によるアラメの種苗生産技術を開発してきました。
 カジメの種苗生産技術と藻場造成技術の開発は、この技術を基にして、平成8年から、(財)国際環境技術移転研究センター(ICETT)と共同で実施したものであります。また、これらの技術開発と並行して、アラメ、カジメより浅い海域に生息するアマモの種苗生産技術も開発しており、今後とも、地球環境の保全に寄与できる技術開発に取り組んで行きたいと考えております。

以上

【 別 紙1】

1 技術開発の背景

 大型藻類の群落(藻場)は、魚介類が産卵したり、孵化した仔稚魚が身を隠しながら生育する場所となるほか、地球温暖化の原因の一つとされているCO2を光合成により吸収・固定するなど、海洋の生態系や地球環境にとって重要な役割を果たしています。
 一方、わが国沿岸海域では、この藻場が衰退、消滅する現象(磯焼け)が多発しており、水産資源の回復や海域の環境修復を目的とした藻場の造成事業が国家プロジェクトとしても計画されるようになってきました。
 当社では、発電所周辺海域でも同様の現象が生じていることから、地球環境の保全に寄与できる技術開発の一環として、藻場の修復、再生に貢献できる技術の開発に取り組んでまいりました。

2 技術開発の概要

 海生生物に関する技術の開発は、海の中の生物やその環境との係わりが、大変複雑で奥深いものがあることから長い年月を要しましたが、当社では、水産資源の回復や地球環境の保全に寄与できる、以下の技術を開発することができました。

(1) アラメ、カジメ種苗の周年大量生産技術を確立

 アラメやカジメの天然母藻から採取した胞子を、培養液の濃度や温度、照度を一定条件下で管理することにより1年中保管 、増殖、発芽させることができるようになり、陸上水槽における種苗の計画的な生産が可能となりました。

(2) 種苗移植による藻場造成技術を確立

種苗移植による藻場造成技術を確立  陸上水槽で生産したアラメ、カジメの種苗を三重県内の試験海域に移植し、630mの人工藻場を造成しました。
 また、移植した種苗の生残率を高めるために、移植時の最適種苗サイズや、移植後の種苗が魚やウニなどの底生動物から食害されることを防止する方策を検討し、種苗移植の生残率の向上方法を把握しました。

(3) 造成藻場の効率的拡大技術を確立

 造成した藻場の種苗は成熟して胞子を放出します。この胞子は潮流に乗って拡散し、着地点の環境が良ければ、その場所で発芽、成長して藻場を拡大して行きます。
 技術開発に当たっては、胞子が着生しやすい基板(自然海域の岩石の役割を担う胞子の受け皿)を考案すると共に、胞子の拡散方向と胞子の着生用基板の効果的な配置方法を検討し、効率的に藻場を拡大する技術を開発しました。

(4) 造成藻場のCO2固定量を把握

アラメやカジメなどの海藻類は、陸上植物と同様に光合成によりCO2を吸収、固定します。当社は、三重県内の試験海域に造成した藻場で、CO2の吸収、固定量を測定しました。
 この結果、造成した藻場(水深7m地点および13m地点の2ヶ所)の単位面積当たりの平均固定量は1,181 g-CO2/m2/Y(49%)で、藻場全体の年間固定量は0.7t-CO2/Yとなることがわかりました。
 なお、近傍に残っている天然藻場(水深8m)の固定量は1,980g-CO2/m2/Yでしたが、造成藻場の浅い地点(7m)の固定量は1,967g-CO2/m2/Yであり、ほぼ天然藻場と同様な値でありました。
 すなわち、水深が浅いほど太陽光による光合成が活発となり、CO2の固定量が増加することが確認できました。また、人工造成藻場と天然藻場のCO2の固定量には、差がないことも確認できました。


【 参考 】

 以上の結果から、空港島の造成藻場における年間の固定量は、試験的に造成した藻場での測定値を適用すると、約100t-CO2となります。
 ちなみに、一人当たりのCO2排出量(1997年統計)は、日本人が9.2 t-CO2/Y 、アメリカ人が20.1t-CO2/Y 、インド人が1.1t-CO2/Y であります。

3 三重県南部で実施した試験造成によるカジメ藻場

【 別 紙2】

中部国際空港島の藻場造成事業

以上