プレスリリース バックナンバー(2002年)

世界初!ナノテクノロジーによる水素分離膜の開発について ~水素利用技術の大幅効率アップに期待~

平成14年10月1日
中部電力株式会社

 当社は、ノリタケカンパニーリミテド(社長:岩崎 隆氏、住所:名古屋市西区則武新町三丁目1番36号)と共同で、世界で初めて、ナノサイズの微細孔を有するセラミックス分離膜の開発に成功いたしましたので、お知らせいたします。

 例えば、燃料電池へ水素を供給する場合は、メタンなどから水素を分離し取り出すといったガス分離工程が必要となります。
 微細孔(ふるいにかけ水素を分離するための小さな穴)を有する多孔質膜を使用したガス分離は、他の方法に比べ連続運転が可能で、装置の小型化が図れ、処理量を大きくとれる等の特徴があります。また、耐熱性および耐腐食性セラミックス分離膜の場合、適用範囲が大幅に広がるため世界各国で開発が進められています。

 従来の分離膜の製造方法では、その過程で大きな孔が生成されてしまうことから、高い分離性能が得られませんでした。
 今回、当社では、世界で初めてナノサイズの微細孔しかないセラミックス分離膜の開発に成功し、分子ふるい※1という理想的なガス分離機構を実現しました。
 ※1 分子ふるい:細孔より小さい分子のみを透過させるガス分離方法で、非常に高い分離性
          能が得られる

 今回開発した分離膜は非常に高い分離性能を持っているため、メタンの改質ガス、石炭ガス、石油精製所の排ガス等からの水素分離など種々の適用が考えられます。
 燃料電池の水素ガス供給にこの分離膜を適用した場合、水素の分離が高純度かつ大量に行われるため、燃料電池発電システム全体として大幅な効率アップが期待できます。

 今後は燃料電池等の改質器への適応に向けて集合化・大型化技術の開発を行い、3年以内の実用化を目指します。


  • 研究期間  平成11年4月から平成14年3月
  • 研究費用  約1億円

以上

<別 紙>

1.研究の背景

 微細孔を有する多孔質膜を使用したガス分離は、他の方法に比べ連続運転が可能で、装置の小型化が図れ、処理量を大きくとれる等の特徴があります。
 加えて、耐熱性および耐腐食性に優れた材料でこれを実現できれば、適用範囲が大幅に広がるため、世界各国でセラミックス製の分離膜の開発が進められています。
 当社は平成12年にポリシラザンと呼ばれる有機ケイ素化合物を用いて耐熱性に優れたセラミックス分離膜を開発し、従来不可能であった800℃という高温での使用を可能としました。

 ここで、多孔質膜の開発において、ガス分離性能の向上が重要な課題となります。
ガスを分離する機構は細孔の大きさにより主に以下の2つに分類されます。

(1)クヌッセン流れ

 分子を超える大きさの細孔の場合、細孔を透過する際の抵抗がガスの透過性能に影響を与えます。このため、質量が軽く、飛び回る速度の速い分子ほど孔を透過する際の減速が小さくなり、優先的に透過します。
 その透過のし易さの差を利用することで、ガスの分離を行うことが出来ます。

(2)分子ふるい

分子と同程度となるナノサイズの細孔の場合、孔より小さな分子だけが選択的に透過することが出来るため、高いガス分離性能が実現されます。
 分子ふるいはナノサイズの細孔を持つ分離膜を実現すればできるのですが、従来の分離膜ではサブミクロンクラスの穴がどうしても存在してしまうため不可能な分離方法でした。

多孔質膜での主なガス分離機構

2.開発の概要

 開発を進めている水素分離膜は、ポリシラザンと呼ばれる有機ケイ素化合物を利用して、高温・腐食に強く、機械強度も高い窒化ケイ素(Si3N4)で、基材と分離膜が一体に作製された分離膜で、現在、高温(800℃)で使用可能な唯一の分離膜です。
 ガス分離に必要な細孔は、ポリシラザン中に含まれる有機成分が、熱分解時に分解し、窒化珪素として結晶化する際に、ナノサイズの空隙を残すことを利用するものですが、従来、ポリシラザン中の有機成分が偏って気化してしまい、大きな孔が発生していました。
 今回、特殊な還元性ガスを用いて熱分解を行うといった、通常の熱分解手法では用いられない製膜方法を開発するにより、有機成分を均一に気化させることに成功し、ナノサイズ以下の細孔からなる画期的な分離膜を実現することが出来ました。
 今回の分離膜は、分子ふるい領域でのガス分離が実現し、飛躍的に高い分離性能※2が得られています。
 ※2 水素と窒素の混合雰囲気中において、(水素の透過量)/(窒素の透過量)=120

3.開発の成果

 今回開発した分離膜は非常に高い分離性能を持っているため、メタンの改質ガス、石炭ガス、石油精製所の排ガスからの水素分離など種々の適用が考えられます。
 水素は燃焼時に二酸化炭素を発生しないクリーンなエネルギー源として、特に21世紀のエネルギーシステムとして期待されている燃料電池には不可欠な資源です。
 今回開発した分離膜を、燃料電池の水素ガス供給に適用した場合、水素の分離が高純度かつ大量に行われるため、燃料電池発電システム全体としての効率が大幅に向上します。例えば、火力発電以上の発電効率を持つ溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)にこの分離膜を適用できた場合、従来と同じ温度で反応の効率が高まるため、更に約5%のシステム効率の向上が可能となります。
 さらに、水素は石油化学工業等において欠かすことのでない重要な原料ガスです。
今回開発した分離膜を製造プロセスに適用することにより、水素のみを選択的に供給することが可能であることから、製品の製造効率の大幅な向上が期待できます。

4.今後の進め方

 今後は燃料電池等の改質器への適応に向けて集合化・大型化技術の開発を行い、3年以内の実用化を目指します。

以上