プレスリリース バックナンバー(2002年)

世界初!永久磁石を用いた冷凍システムの開発について ~フロンを使わない磁気冷凍システムの実用化へ前進~

平成14年10月2日
中部電力株式会社

 この度、当社は株式会社東芝(社長:岡村 正氏、住所:東京都港区芝浦1-1-1)と共同で、世界で初めて、弱い磁界でも0度以下までものを冷やすことができる磁気冷凍システムの開発に成功しましたので、お知らせいたします。

 磁界の変化を利用して温度が変化する現象は以前から知られていますが、実際にものを冷やすためには強力な磁界変化が必要でした。

 今回は、永久磁石の弱い磁界でも温度を下げることができ、0度以下までものを冷やすことができるシステムを開発いたしました。永久磁石を用いることで、コンパクト化等を実現できるため、将来の実用化に向けたコスト低減が可能になります。

 当社は、フロンや代替フロンなどの気体を圧縮・膨張させる気体冷凍とは異なり、磁性体※1に磁界変化を与えると発熱し、磁界を取り去るとその温度が下がる現象を利用した磁気冷凍の実用化に取り組んでいます。すでに平成12年には、超電導マグネットによる強力な磁界を用い、室温(20度付近から0度程度まで)冷凍できる磁気冷凍システムの開発に成功しております。
 ※1 磁場をかける(磁石を近づける)と磁気を示す(磁石のようになる)物質

 今回は、複数の磁性体(4組3種類)を組み合わせることで、永久磁石が発生する弱い磁界でも室温冷凍が可能となり、これによって平成12年度に開発したシステムと比べ1/10の大きさにコンパクト化することができました。

今回開発した装置には、次の特長があります。


(1)環境にやさしい冷凍技術
フロンや代替フロンを用いない地球環境にやさしい技術

(2)永久磁石による磁気冷凍
磁界発生の動力が不要で、コンパクト化を実現

(3)省エネが可能
永久磁石による動力低減、コンプレッサ不要、磁気冷凍の持つ高い冷凍効率から、省エネが可能

  • 今回の開発により、磁気冷凍による冷凍システムの実用化へ大きく前進いたしました。

  •    研究期間  平成13年4月~平成15年3月
  •    研究費用  約8千万円

以上

<別 紙>

1.開発の背景

 地球温暖化を防止するため、従来のフロンや代替フロンガスを利用した気体冷凍機に変わる冷凍機の開発が期待されています。また、エアコンや冷蔵庫といった冷凍機を用いた電気機器は、使用時間が長いため省エネルギー型の機器開発が進められています。
 ここで、ある種の磁性体に磁界の変化を与えると、その温度が変化する現象(磁気熱量効果)が知られています。この現象を利用した磁気冷凍技術は、環境にやさしく高効率で省エネが期待できる技術であり、当社はその実用化に向けた開発を進めています。すでに平成12年には、室温付近で動作する磁気冷凍システムを開発し、その動作を検証しました。この装置には、磁場を発生させるために超電導マグネットを用いており、装置の小型化が課題でした。今回、永久磁石を用いた磁気冷凍システムの開発に世界ではじめて成功しました。

2.磁気冷凍について

 磁気冷凍は、ある種の磁性体(以下磁気作業物質という。)に磁界をかけていくとその磁気作業物質が発熱し、磁界を取り去るとその温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用するものです。気体冷凍と比べ
 ・ 環境にやさしい
 ・エネルギー変換効率が高く省エネが可能
 という特徴があります。

3.開発した装置の概要

 今回開発した装置は、磁界発生源に永久磁石を用いることで、平成12年度に開発した超電導マグネットを用いた磁気冷凍システムに比べて約1/10の大きさにコンパクト化することができました。
 永久磁石を用いることで、利用できる磁界はせいぜい0.6T(テスラ)程度となります。磁気熱量効果は磁界の大きさに依存するため、磁界の変化幅が小さくなると温度変化幅も小さくなります。
 このため、より効率的に熱交換する必要があります。今回開発した装置は、4組の磁気作業物質を充填した容器の間を永久磁石が水平方向に往復運動することで、磁気作業物質に磁界変化を繰り返し与えています。一度の磁界変化による温度変化が小さい分、熱交換する流路を4組直並列に接続することで効率よく熱を取り出すことができました。
 磁気作業物質には、直径0.6mmの球形に加工したガドリニウム系合金を3.6kg使用しています。ここで、磁気冷凍に利用できる程度の大きな磁気熱量効果が生じる温度範囲は磁気作業物質ごとに固有であり、ガドリニウム系合金に永久磁石程度の磁界変化を与えた場合には、合金の組成に応じた最適動作点があり、そのコントロールに成功しました。
 今回、数種類のガドリニウム系合金を組み合わせることで、永久磁石による磁場変化でも室温から0度以下まで温度を下げることができました。
 磁気作業物質には、さらに低温で磁気熱量効果を発揮するものもあり、今回の開発で永久磁石を用いた磁気冷凍システム実用化に向けた装置開発に目処をつけることができました。

4.今後の進め方

 今後は、フロン等を使用しない高効率で省エネが可能な磁気冷凍技術の実用化を目指し、磁界変化を与える駆動部分や熱交換部分の改良により、さらにコンパクトで高効率な装置の開発と、冷凍能力を引き出したい温度でより高い磁気熱量効果を持つ磁気作業物質の開発を進めます。

以上

<参 考>


永久磁石磁気冷凍システムの主な緒元

磁界発生源 ネオジウム系永久磁石
磁界の強さ 0.6 テスラ
磁気作業物質 ガドリニウム系合金
熱交換媒体 水+アルコール
運転周期 4秒
寸法 H416mm x W1040mm x D310mm
重量 200 kg

永久磁石磁気冷凍システムの動作フロー