プレスリリース バックナンバー(2002年)

PCB迅速分析法の開発について ~課題であった分析時間の短縮を実現~

平成14年11月12日
中部電力株式会社

 当社は、廃油等に含まれるPCB(ポリ塩化ビフェニル)の濃度を迅速・簡易かつ高感度で分析できる方法(GC-MS/NCI法)の開発に成功いたしましたのでお知らせいたします。

 PCBは、絶縁性に優れていることから電気設備等に広く使用されてきましたが、現在は新規の製造・使用が禁止されております。昨年、PCB特措法が制定され使用者が管理しているものについて処理期限が定められたことから、各地の自治体、企業等で処理施設の建設が進められております。

 処理の最中には、試料の濃度を分析する工程が必要です。PCBを分析する方法としては国が定めた分析法(公定法)がありますが、油などの混在物質からPCB成分を完全に分離精製し濃度を分析する方法であるため、その工程が煩雑で長期間を要し費用も高額であることから処理中の分析には適しておりません。
 そのため、メーカー等で迅速分析方法の開発が行われておりますが、さらなる分析手法の簡略化、時間短縮を目指して研究開発に取り組みました。

 今回採用した分析法は、PCB成分の構成元素である塩素をイオン化させその塩素イオン量からPCB成分全体としての濃度を分析する方法で、PCB成分を分離精製する必要がないため前処理を非常に簡素化することができます。
 この方法では、従来イオン化を安定させることが困難でしたが、質量測定装置への試料注入方法やイオン化温度など最適条件を見つけこれを実現したことが開発成功のポイントです。

 これにより、公定法では1週間程度,従来迅速法では2~3時間程度要していた時間を1時間に短縮できるとともに、費用も公定法の1/5~1/10に低減させました。今後更なる時間短縮に向けた開発を進め、各処理施設への適用・技術提供を検討してまいります。

主な特長は以下のとおりです。

(1)  迅速に分析できます。
   前処理から分析・定量までに要する時間は約1時間です。
(2) 前処理が簡単です。
   前処理は有機溶剤(n-ヘキサン)で希釈するだけで、煩雑な前処理は必要としません。
(3) 安価な分析ができます。
   分析装置は公定法で使用する装置と比べ、低価格で汎用型のものを使用します。
(4) 高感度な分析が可能で、分析値は公定法と良く一致しています。
   廃油PCB処理基準値である0.5mg/kgを判定できます。
 また、分析値は公定法と比較して良く一致していることを確認しています。
(5) 廃油以外の試料についても分析できます。
  排水,排ガス,土壌,大気中のPCB分析へも適用できます。
※詳細は別紙のとおり

以上

<別 紙>

1  研究の背景

 PCB廃棄物の処理については、法で認められた高温焼却法による処理が一時期実施されたものの、展開にあたっては住民の理解を得られず、事実上処理できない状況であったことから、事業者による保管が長期に渡り実施されてきました。
  その後PCB廃棄物が特別管理廃棄物に指定され、保管状況調査が行われた結果、全国大で約7%(台数ベース)が不明・紛失という状況であったことから、国レベルで高温焼却法以外の処理基準・技術の評価検討および法整備が行われ、新たに化学分解処理法が認められました。これを受けて、各種の化学分解処理方法が開発され、事業者におけるPCB無害化処理が行われてきています。
 この無害化処理にあたっては処理施設のプロセスにおけるPCB分析が必要ですが、国が定めた分析法(以下公定法)では油など妨害物質の影響を除くために、PCB成分の分離精製が必要であるため、分析結果が出るまでに長時間が必要で費用も多くかかります。そのため、処理施設の現場で迅速・簡易で高感度な分析ができる方法が望まれており、処理施設の製造者などによる迅速分析方法の開発が行われてきましたが、簡易的ではあるもののPCB成分を分離精製するという前処理が必要なことから、分析工程もやや煩雑であるため、さらに分析手法の簡略化,時間短縮の余地があると思われます。
 当社では、処理施設の現場で日常的なPCB分析(処理プロセスにおける確認分析)に使用できる、従来の迅速分析法より簡単な分析法の確立に向けて研究に取り組み、「ガスクロマトグラフ-負化学イオン化質量分析装置」(以下GC-MS/NCI)を用いた、新たな分析法(GC-MS/NCI法)として技術開発に成功しました。

2  開発の概要

(1) GC-MS/NCI最適測定条件の確立

 GC-MS/NCIは、従来農薬等の分析に利用されてきたもので、原理上塩素などのハロゲン元素に高い感度と選択性を持つことから、油などの妨害物質の影響を受けにくいという特徴がある一方、イオン化の安定性にやや難があるため、PCB等の分析には適用困難と言われていました。今回の開発研究では、測定条件(イオン化の温度条件,ガスの種類および流量,試料注入法等)について検討・試験に取り組み、安定して高感度にPCB分析を実施できる最適条件を確立することができました。

(2) 前処理方法の確立

 GC-MS/NCIは前述のとおり、妨害物質の影響を受けにくいため、公定法や従来の迅速分析法のように前処理でPCBを分離精製するという煩雑な操作を省くことができます。今回開発した分析法では、有機溶剤(n-ヘキサン)で希釈し、感度補正用に標準物質を添加するという非常に簡素で短時間でできる方法「直接希釈注入法」を考案しました。

図-1 分析フロー図

(3) GC-MS/NCI法測定試験結果

 標準PCBおよび実試料を用いて測定試験を実施した結果、廃油のPCB処理基準値である0.5mg/kgを判定できる定量下限を持つことを確認しています。
 また、今回開発した分析法は総PCBだけでなく、各塩素数別の定量も可能です。

(4) 公定法との相関調査

 測定試験で得られたデータから、公定法との相関調査を行ったところ、良い相関が得られました。
(相関係数R=0.9885)

3  廃油以外の試料への適用

 今回開発した分析方法は廃油中のPCB分析を目的に開発してきましたが、他試料への適用性についても調査してきた結果、排水,排ガス,土壌,大気中のPCBについても、それぞれの基準を下回る数値まで精度よく分析ができることを確認しています。

4 今後の展開

 現在、さらなる分析時間短縮に向けて、前処理操作の自動化とデータ処理の自動化に取り組んでいます。(目標 総分析時間 約1時間→30分程度)
 また、PCB分解処理施設への適用および社外向け分析技術の提供を検討してまいります。

以上