プレスリリース バックナンバー(2003年)

浜岡原子力発電所5号炉のアクシデントマネジメント検討報告書および確率論的安全評価報告書の提出について

平成15年7月16日
中部電力株式会社

 本日、当社は、浜岡原子力発電所5号炉のアクシデントマネジメント検討報告書および確率論的安全評価報告書をとりまとめ、経済産業省へ提出しました。

 提出した報告書の概要は、以下に示すとおりです。

 アクシデントマネジメント検討報告書は、浜岡原子力発電所5号炉の安全性をより一層向上させるために検討した、アクシデントマネジメント(設備上の対応策、実施体制、手順書類、教育等)の整備方針をとりまとめたものです。

 確率論的安全評価報告書は、アクシデントマネジメントを選定するため、および選定した対策の効果を確認するために実施した、確率論的安全評価結果をとりまとめたものです。

 当社といたしましては、今後とも、このような活動を通して浜岡原子力発電所の安全性向上のため、努力して参ります。

以上


(解 説)

浜岡原子力発電所5号炉のアクシデントマネジメントについて

アクシデントマネジメントとは

  • ○ 原子力発電所の安全性は、多重防護の思想に基づき安全確保対策を行うことで十分確保されています。
  • ○ そのため、燃料が溶けるなど、炉心が大きく損傷するような過酷事故(シビアアクシデント)が発生する可能性は十分小さくなっています。
  • ○ アクシデントマネジメント(AM)とは、発生の可能性が十分小さいとはいえ、シビアアクシデントに至る恐れのある事態が万一発生した場合、それが拡大するのを防止するため、もしくは拡大した場合にもその影響を緩和するために実施するものです。
  • ○ AMは、電力が自主的に実施します。
  • ○ AMの検討は、確率論的安全評価(PSA)の結果等を活用して実施します。

経 緯

  • ○ 昭和54年3月
    スリーマイルアイランド2号炉事故。これ以降当社は、AMに関する検討を積極的に進め、万一、設計の想定を超える事象に至っても、現有する設備を有効活用することにより適切な対応が可能なように、手順書を整備・充実し、教育等を行ってきた。
  • ○ 平成4年5月
  •   原子力安全委員会が「シビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さい」としたうえで、安全性を一層向上させるため、AMの整備を奨励。
  • ○ 平成4年7月
    通商産業省(当時)が「現時点では規制的措置を要求するものではない」としたうえで、電力に自主的な保安措置としてAM整備を要請。
  • ○ 平成6年3月
    浜岡1~4号炉のAM検討報告書提出。
  • ○ 平成9年10月
    原子力安全委員会は「新設炉については、詳細設計の段階以降速やかにAMの実施方針について行政庁から報告を受け検討する。この検討結果を受け、原子炉設置者はAM策を燃料装荷までに整備する。」とした。
  • ○ 平成14年5月
    浜岡1~4号炉のAM整備報告書、AM有効性評価報告書提出。
  • ○ 平成15年7月
    浜岡5号炉のAM検討報告書提出。

確率論的安全評価(PSA:Probabilistic Safety Assessment)

  • ○ PSAとは、原子力発電所で発生する可能性のある異常事象を想定し、事象がどのように進展していくかを安全装置の故障確率などから計算することで、燃料の入った炉心や放射性物質を閉じ込める原子炉格納容器の損傷確率等を評価するものです。
  • ○ AMを選定するためおよび選定した対策の効果を確認するためにPSAを実施しました。
  • ○ この結果、浜岡5号炉はPSA結果を踏まえ選定したAM策を整備することにより、炉心の健全性が脅かされる可能性が約4割低減され、原子炉格納容器の健全性が脅かされる可能性が9割以上低減されることを確認しました。 (添付-1参照)
  • ○ これらの評価結果により、PSA結果を踏まえ選定したAM策が浜岡5号炉の安全性をより一層高めるうえで有効であることを確認しました。

5号炉のアクシデントマネジメント

設備上の対策

(添付-2参照)

○ 原子炉および格納容器への注水機能にかかわるAM策(代替注水手段)
 原子炉等に冷却水を注水するための非常用炉心冷却系ポンプが万一故障した場合に備えて、補給水系や消火系のポンプによっても原子炉および格納容器へ注水できるように配管を接続します。
○ 格納容器からの除熱機能にかかわるAM策
 格納容器に耐圧性を強化したベントラインを設けます。
○ 安全機能のサポート機能にかかわるAM策(電源の融通)
 浜岡4号炉から低圧交流電源を融通して直流電源を復旧できるようにし、非常用ディーゼル発電機の起動電源や高圧交流電源を融通する際の遮断器の駆動用電源等を確保します。また、浜岡3号炉から動力用の高圧交流電源を融通します。
安全機能のサポート機能にかかわるAM策(電源の融通)
なお、「原子炉停止機能」については、基本設計段階で採用したAM策により十分に機能向上が図られています。

運用面の整備方針

  1. ○ AM実施体制として、中央制御室の運転員とそれを支援する組織(緊急事態対策本部の一部が該当)にて、AMを実施する。
  2. ○ 事故対応で使用する手順書に、整備するAM設備に関する操作を記載し、また、AM実施のためのガイドライン(緊急時運転操作指針)を制定する。
  3. ○ 予想される様々なプラント状態に対して適切に対応するため、それぞれの要員の役割に応じた教育等を継続的に実施する。

参 考

用語の解説

【解説に関する用語解説】

○ 原子炉格納容器
 原子炉格納容器は、空間部であるドライウェルと非常用炉心冷却系(添付-2に関する解説○参照)の水源等であるプール水をもつサプレッションチェンバから構成される

【添付-1に関する用語解説】

○ 高圧注水・減圧失敗
 『原子炉が高圧の時でも注水可能な系統での原子炉への注水』と『原子炉圧力の減圧』の両方に失敗すること
○ 高圧・低圧注水失敗
 『原子炉が高圧の時でも注水可能な系統での原子炉への注水』と『原子炉が低圧の時に注水可能な系統での原子炉への注水』の両方に失敗すること
○ 電源喪失
 原子炉への注水や原子炉格納容器からの除熱に必要な電源の確保に失敗すること
○ 残留熱除去失敗
 原子炉格納容器からの熱除去に失敗すること
○ 未臨界確保失敗
 原子炉の停止に失敗すること
○ 原子炉冷却材喪失
 配管の破断等により原子炉内の冷却材(水)が喪失すること
○ 貫通部過温
 原子炉格納容器内部が炉心溶融物(燃料や制御棒等が溶けたもの)によりゆっくりと加熱される現象
○ 格納容器雰囲気直接加熱
 原子炉圧力容器が高圧の状態で破損した場合に原子炉格納容器内の雰囲気が炉心溶融物により直接加熱される現象
○ 水蒸気(崩壊熱)による過圧
 原子炉に注水された水が炉心の熱により蒸発して発生する蒸気により、原子炉格納容器の圧力がゆっくりと上昇していく現象
○ 未臨界確保失敗時の過圧
 原子炉の停止に失敗しているため大量の蒸気が炉心で発生し、早期に原子炉格納容器の圧力が上昇する現象
○ 水蒸気爆発
 炉心溶融物が大量に水中に落下し、何らかの原因で微細化するような場合に、炉心溶融物のもつ熱エネルギーが瞬時に格納容器に衝撃を与えるエネルギー(機械的エネルギー)に変換される現象

【添付-2に関する用語解説】

○ ほう酸水注入系
 原子炉を停止させる制御棒のバックアップ系統のこと。中性子を吸収するほう素を含むほう酸水を原子炉に注入して、原子炉を停止させる
○ 代替反応度制御
 原子炉停止機能を向上させるために、安全保護系※とは別の信号系により、再循環ポンプを停止させるとともに制御棒を挿入するようにした機能のこと
※安全保護系:原子炉水位の低下等の異常状態を検知した場合に自動で原子炉を停止等させるための系統
○ 非常用炉心冷却系(ECCS:Emergency Core Cooling System)
 原子炉冷却材喪失が起こった時などに冷却材を燃料のある炉心に注入し、炉心を冷却する系統
○ 低圧注水操作
 非常用炉心冷却系には、『原子炉の圧力が高い時でも原子炉へ注水することができる系統』と『原子炉の圧力が低いときに注水することができる系統』がある。
 低圧注水操作とは、『原子炉の圧力が低いときに注水することができる系統』で原子炉に注水すること
○ 給水系
 発電所の通常運転中に原子炉へ水(冷却材)を供給する系統
○ 制御棒駆動水圧系
 原子炉を自動停止させるために水圧で制御棒を炉心に挿入するための系統
○ 原子炉格納容器スプレイ冷却系
 原子炉格納容器内に水をスプレイ(注水)することにより、原子炉格納容器内の温度と圧力を低減させるための系統
○ 不活性ガス系
 原子炉冷却材喪失時に、原子炉格納容器内で発生する水素と酸素が急激な燃焼反応を起こすことを防止するため、原子炉格納容器内の空気を不活性(窒素)ガスに替えるための系統
○ 非常用ガス処理系
 事故時に原子炉建屋内の空気をフィルタにより浄化する系統
○ ドライウェル内ガス冷却系
 原子炉運転中の原子炉格納容器内の温度を一定温度以内に維持するため、原子炉格納容器内のガスを循環して、冷却するための系統
○ 原子炉冷却材浄化系
 原子炉の冷却材(水)中の不純物を除去する系統
○ 余熱除去系
 原子炉停止後に燃料のある炉心から発生した熱を除去・冷却するためおよび原子炉冷却材喪失時等に原子炉に冷却材(水)を注水して、冷却するための系統
○ 非常用ディーゼル発電機(DG)
 外部電源※がなくなった時に、発電所内で必要な電力を供給する発電機のこと。ディーゼルエンジンで駆動する
※外部電源:送電線から発電所への送電
○ 炉心損傷頻度
 燃料のある炉心の健全性が損なわれる確率
○ 格納容器破損頻度
 放射性物質を閉じ込める原子炉格納容器の健全性が損なわれる確率