プレスリリース バックナンバー(2005年)

イットリウム系超電導線材の超高速合成技術の確立について~次世代超電導機器の開発へ大きく加速~

平成17年10月19日
中部電力株式会社

 当社は、実用化が待ち望まれているイットリウム系超電導線材を合成する技術の超高速化を確立いたしました。また、本技術を用いて製作した線材を使用し、小型サイズにもかかわらず高磁場を発生するマグネットの開発にも成功いたしましたので、お知らせいたします。
 本技術の確立により、高性能な超電導電力貯蔵装置(SMES)等のマグネットや大容量・低損失な超電導ケーブル等の実現に向けた見通しを得ることができました。

 今回の成果は、財団法人国際超電導産業技術研究センター(ISTEC(イステック))が独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より受託している「超電導応用基盤技術研究開発」プロジェクトにおいて実施したものです。

 電気抵抗ゼロを特徴とする超電導技術は、電力の流通段階で発生する電力損失を大きく低減できるため、有益な環境技術として電力分野での様々な応用が期待されています。当社は、数ある超電導線材の中でも、電流密度が高く、磁場中での特性低下が少ないイットリウム系線材の開発を進めています。
 これまでに、線材を製作するための結晶合成プロセスを複数化させる多段合成手法※1を確立することにより、線材合成速度10m/hを達成し、線材の実用化の最大の課題である長尺化に関して、100mという長尺をスピーディに製作することに成功しております(平成14年6月発表済み)。

※1 超電導物質の反応領域を複数化し、そこを通過させる基材の移動速度を上げることで、高速成膜を可能とする手法

 今回、多段合成手法をより一層発展させることにより、従来の合成速度を大幅に上回る線材合成速度を達成いたしました。これにより、従来と同じ時間でさらに長尺な線材を製作することが可能となり、実用化に向けて大きく前進することができます。

 今回開発した技術のポイントは以下のとおりです。


1 超高速合成技術の確立

  • ・従来の多段合成技術をさらに発展させることで、実用化が見通せる線材合成速度50m/h(電流密度約2百万A/cm2)を達成

2 小型高磁場マグネットの開発※2

  • ・小型マグネット(外径64mm 高さ77mm)を試作し、イットリウム系線材を用いたマグネットとしては、世界最大級の発生磁場0.65T(T:テスラ※3)を実現

※2 経済産業省資源エネルギー庁のSMES開発国家プロジェクト「超電導電力ネットワーク制御技術開発」において、1の成果である線材を活用して、小型マグネットの試作を実施。

※3 磁力線の強さを表す単位

 今後、本プロジェクトにおいて、より一層の高性能化、低コスト化技術の開発を進めて参ります。

以上

<別紙>

<イットリウム系線材とは>

 超電導材料の中でも、液体窒素温度(-196℃)で超電導が可能な高温超電導体は、液体ヘリウム(-269℃)で超電導が可能となる金属系超電導体に比べて冷却が容易で、実用化を目指した開発競争が日米欧を中心に繰り広げられている。
 この高温超電導体は、銅の酸化物の結晶体で、大きく分けて、イットリウム系とビスマス系の2種類がある。ビスマス系は、結晶の同士の繋がりが良く、細い銀のパイプに粉末状の原料を封入して、細く引き延ばすだけで、比較的容易に数100mの線材を作ることが出来、現在、送電ケーブル等の実証試験が可能な段階にまで開発が進んでいる。しかし、イットリウム系に比べて電流密度が低く、また、磁場中では、特性が大きく低下する性質がある。
 一方、イットリウム系線材は、電流密度がビスマス系の10~100倍で、磁場中でも特性低下が少なく、液体窒素で使用可能な最も性能の高い超電導体である。本線材が実用化されれば、送電ケーブルおよび超電導電力貯蔵装置(SMES)を始めとするマグネット応用機器の更なるコンパクト化、低コスト化が期待できる。



<多段合成技術とは>

 イットリウム系超電導体は、結晶同士の繋がりが悪いため、線材を作るには、気体状の元素を線材の元となる基材の表面に結晶化させる手法(気相法)が必要となる。この気相法は、結晶化する速度が遅く、線材合成速度には限界があり、その長尺化は実用化への大きな課題となっていた。
 この課題を解決するため、当社では、結晶成長領域を複数化し、1段当りの線材合成速度を上げる多段合成技術を確立した。これは、図のように結晶成長領域を基材移動方向に対して複数段設置することにより、結晶成長の領域を拡張し、そこを通過させる基材の移動速度を上げることで高速成膜を可能とする技術である。

多段合成手法の概念(イメージ図)



<小型高磁場マグネットの概要>

 今回開発したマグネットはパンケーキ型と呼ばれるマグネットを6個積層したもので、諸元を表に示す。イットリウム系線材が曲げに強いという特徴を活かし、内径が36mmという小口径のマグネットを実現している。本マグネットの性能を検証するため、65Kの過冷却液体窒素中でマグネットの励磁試験を実施し、イットリウム系超電導マグネットとしては、世界最大級となる最高磁場0.65T[テスラ]を発生させることに成功した。


イットリウム系マグネット諸元


テープ総長 81m
10mm
厚さ 0.12mm
マグネット形状 パンケーキ型
マグネット数 6個積層
ターン総数 520
内径 φ36mm
外径 φ64mm
高さ 77mm

小型高磁場マグネットの外観



以上