プレスリリース バックナンバー(2006年)

室温磁気冷凍システムの開発について ~世界最高性能の達成で実用化に大きく前進~

平成18年11月7日
中部電力株式会社
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

 中部電力株式会社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託して進めている地球温暖化防止新技術開発プログラムの国家プロジェクト「ノンフロン型省エネ冷凍空調システム開発」の一環として、永久磁石を回転させて温度を下げる磁気冷凍システムの開発を行っており、このたび世界最高性能を達成しました。

 平成12年に、世界で初めて磁界変化を利用した冷凍システムの開発に成功して以来、研究開発に取り組んでおり、今回の開発により空調機や冷蔵庫に利用できるレベルに達し、磁気冷凍技術の実用化に大きく前進しました。

 磁気冷凍とは、フロンや代替フロンなどの気体を圧縮・膨張させる従来の方法とは異なり、磁性体※に磁界を与えると発熱し、磁界を取り去るとその温度が下がる現象を利用したものです。

※磁場をかける(磁石を近づける)と磁気を示す(磁石のようになる)物質

 平成12年度には、超電導マグネットによる強力な磁界を用い室温(20度付近)から0度程度まで冷凍できる磁気冷凍システムを世界で初めて開発し、 続いて平成15年度には、永久磁石の弱い磁場でも、磁石を回転駆動させることで-1度まで冷やすことができるシステムの開発に成功しています。

 今回開発した磁気冷凍システムは、次のような特長があります。


・世界最高の冷凍能力を達成

 永久磁石の配置の最適化、熱交換機構の構造改善、熱侵入量の低減により、540Wの冷凍性能を達成。(平成15年度に開発したシステム(60W)に比べ、冷凍能力約10倍向上)

・世界最高の運転成績係数の達成

運転成績係数(COP)※※:1.8の実現。(平成15年度開発システム:0.1)

※※ 冷凍能力/消費電力。 この値が大きいほど省エネとなる。

 なお、この冷凍機開発は、国立大学法人東京工業大学大学院総合理工学研究科、北海道大学大学院工学研究科、九州大学大学院理学研究院物理学部門との共同で産官学が連携して行っているものです。

 今回開発した磁気冷凍システムは、産業用冷凍庫やエアコン等に活用できるモデル機であり、早期実用化に向けた取り組みを進めてまいります。

以上

<別紙>

1.開発の背景

 地球温暖化を防止するため、従来のフロンや代替フロンガスを利用した気体冷凍機に変わる冷凍機の開発が期待されています。また、エアコンや冷蔵庫といった冷凍機を用いた電気機器は、使用時間が長いため省エネルギー型の機器開発が進められています。
 ところで、ある種の磁性体(以下磁気作業物質という)に磁界の変化を与えると、その温度が変化する現象(磁気熱量効果)が知られています。この現象を利用した磁気冷凍技術は、環境にやさしく高効率で省エネが期待できる技術であり、当社はその実用化に向けた開発を進めています。今回、エアコンや冷蔵庫に利用できるレベルの世界最高の冷凍能力を有した磁気冷凍システムの開発に成功しました。



2.磁気冷凍について

 磁気冷凍は、磁気作業物質に磁界をかけていくとその磁気作業物質が発熱し、磁界を取り去るとその温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用するものです。気体冷凍と比べ


  • ・理論効率に近い運転の実現が期待でき省エネ効果がある
  • ・フロンや代替フロンを用いないため環境にやさしい
  • ・コンプレッサーを用いないため静かで振動も少ない

という特徴があります。



3.開発した装置の概要

 磁気冷凍機の冷凍能力を向上させるためには、


  • ・大きな磁界変化を与えること
  • ・熱交換効率を向上させること
  • ・熱侵入量を低減すること

が有効です。
 今回開発した装置は、永久磁石のもつ磁界を最大限に活用できるように、その形状と配置を工夫する(磁石をV字型に配置することで磁界の反発力を高める)ことで大きな磁界変化(1.1テスラ)を可能としました。

 また、熱交換器の構造を最適化し(水の流れる管の長さを短くし)、熱交換流体の流速を従来の3倍以上に高めることで冷凍能力を高めました。
 加えて、永久磁石が回転することで磁界の変化を磁気作業物質に与えますが、その際にシステム外筒部(鉄ヨーク)に発生する渦電流による発熱を、磁気回路の構造の最適化(外筒部を輪切りにして絶縁体を挟み込むこと)により低減し、熱侵入量を抑えることに成功しました。

 これらの改良により、平成15年度に達成した冷凍能力60Wのおよそ10倍となる540Wの世界最高性能を達成しました。

 また、消費電力をおさえ、効率の高いシステムとするためには、


  • ・永久磁石を駆動するモータや熱交換媒体を循環させるポンプの動力を低減させること

が必要です。

 今回開発した装置は、効率よく熱交換するために循環する熱交換媒体(水)の流し方を工夫し(配管を太くし)、圧力損失を下げることで水ポンプの動力を抑えました。
 さらに、永久磁石の回転による磁気抵抗力の軽減を図ることで、モータの動力も低減しました。

 これらにより、磁気冷凍システムとして世界最高となる成績係数(COP)1.8を達成しました。



4.今後の進め方

 今後は、磁気冷凍技術を用いたエアコンや冷蔵庫などの早期実用化をめざし、高い磁気熱量効果を持つ材料の安定製造技術の開発や、さらにコンパクトでより高効率な装置の開発を進めてまいります。



以上



(参考)


磁気冷凍システム構成と動作フロー


室温磁気冷凍システムの外観


室温磁気冷凍システムの緒元比較


  開発システム 従来システム
磁界発生源 ネオジウム系永久磁石 ネオジウム系永久磁石
磁界の強さ 1.1テスラ 0.77 テスラ
磁気作業物質 ガドリニウム ガドリニウム系合金
熱交換媒体 水+アルコール 水+アルコール
運転周期 2.4秒 2.4 秒
冷凍能力 540W 60W
成績係数 1.8 0.1
本体部寸法 H410mm x W400mm x D390mm H270mm x W270mm x D430mm

以上