新旧の物件が入り乱れ、需給バランスに余剰感も見られるようになってきた賃貸住宅市場。今まさに、賃貸経営にとって変革のときだといえます。新たな市場ニーズの開拓を目指し、住宅メーカーからは「エコ賃貸住宅」など、今までにないタイプの賃貸住宅も次々に登場しています。
そこで、“これからの賃貸経営で重要なポイントとは何か”というテーマに関し、入居者ニーズや賃貸市場の動向にくわしい「日管協総合研究所(財団法人 日本賃貸住宅管理協会内)」研究所員の長井和夫氏にお話をうかがいました。

財団法人 日本賃貸住宅管理協会

賃貸住宅の社会的重要性を認識し、その運営・管理の適正化・高度化と従事者の資質強化を推進することにより、賃貸住宅市場の整備を図り、住環境の向上を通じて、社会に貢献することを目的とする公益法人。全国にブロックを持ち、協会に加盟する賃貸管理会社は1094社(2010年1月現在)。その賃貸管理会社の総管理戸数は約300万戸。

財団法人 日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所 研究所員
長井和夫氏

これからの賃貸経営で重要なポイントとは何か

物件自体は昨今どのように変化していますか?

これまで需要の変動が少なく不況に強いと言われてきた賃貸経営ですが、総務省「平成20年住宅・土地統計調査」によると借家ストックの空室率が23%にまで上昇しています。これは約5戸に1戸が空室という状態でして、いわゆる“住宅余り”の現象が起きているといえます。

そのひとつの理由として、老朽化物件の過剰供給が挙げられます。つまり老朽化した物件からユーザがどんどん離れているのであり、その傾向は今後も進むでしょう。

これからの時代、賃貸経営で成功するには「建てる→貸す」という単純な図式では不十分だと思います。入居者の物件に対するニーズを中・長期的な視点でオーナーがしっかりと捉え、長く大切に住んでもらえる物件にしていくことが、より一層大切になると考えられます。

物件自体は昨今どのように変化していますか?

賃貸は今“住宅余り”の時代ですから、新築物件だけでなく中古賃貸住宅においても、高い入居率を維持するためのさまざまな工夫が見られます。しかし、時代のトレンドを反映させた“プラスワンの設備”をいかに取り入れていくかの部分で、オーナーさんによりかなり差が付いている印象を受けます。

賃貸経営で成功しているオーナーさんは、常に4、5年先に入居者が何を求めるだろう、ということに気を配っています。彼らは目先の設備や家賃設定ばかりにとらわれるのではなく、入居者確保・維持のために本当に必要な投資(イニシャル・コスト)は何かを見極めることができる人々です。

例えば、かつては戸建て住宅や分譲マンションに採用されるものと思われていたIHクッキングヒーターやエコキュートを備えた賃貸物件が最近増えてきたのも、省エネや環境性、利便性、ユニバーサルデザインなどの世の流れをオーナーさん達が捉えていたからでしょうね。

「オール電化賃貸住宅」は、どんなオーナー・メリットがありますか?

IHクッキングヒーターは火を使わないから火災のリスクがかなり低くなります。また水蒸気も発生しないから結露が起きにくく、カビなどによる室内の汚れも少ない。つまり、退去時の修繕や定期的な補修などといった物件維持のコストが抑えられるわけです。

お部屋の状態がきれいに長く保たれるということは、イコール『高い資産価値』が維持できる、ということです。

また、エコキュートで毎日の湯沸かしの光熱費なども削減されれば、これは入居者にとってはメリットですよね。入居者が満足すれば、高い入居率や長い入居期間が期待できます。入居者のメリットは、オーナー・メリットでもある訳です。

あと、賃貸経営で忘れてならないのが相続問題。入居者に魅力のない物件は経営効率も悪く、子の世代が相続しても管理が大変です。資産価値が低ければ、処分しようにも、売ることすらままなりませんので。

つまり将来性を考えて資産価値が落ちにくい物件にしておくことが、オーナー・メリットの最大化に繋がります。そういった面では、オール電化賃貸住宅というのは、資産価値維持に一つの手段だと思います。

「オール電化賃貸住宅」でアプローチすべき入居者とは?

賃貸の入居者は、私達が呼ぶところの「積極派」「取り敢えず派」の方たちにオール電化は親和性が高いといえますね。

まず「積極派」。この層は感性のアンテナが鋭く、「デザインがいい」など自分のライフスタイルやこだわりを優先する特性があり、今後もさらに増えると予想されています。

「取り敢えず派」というのは、文字通り「取り敢えず」賃貸住宅に住む人たちです。近年最も増えている層で、長男・長女や一人っ子同士で結婚した30代夫婦や、まだ子どものいないDINKSの20代の若いカップルが該当します。

「将来、親の家を受け継ぐ可能性がある」「この先、家族構成がどうなるか分からない」などの理由で、無理に家を買わない。その代わり、少し家賃が高くても、部屋の造りや設備が充実している物件を好んで借りる傾向がありますね。気に入ればその物件に長く留まるケースが多いようです。

加えて第三に、今後の大きなマーケットとして、高齢者層も大きなターゲットになると思います。あと10年もすると800万人とも言われる団塊の世代が、65歳以上の高齢者となるわけですから。この層はパソコンや携帯電話を無理なく使える世代ですので、操作性にすぐれたオール電化なら違和感無く使いこなせると思いますよ。 火がないという安心感も高齢者にとってとても大きなメリットです。安全性だけでみても、高齢者のオール電化へのニーズは確実に高まるのではないでしょうか。

「オール電化賃貸住宅」の今後についてはどう予測されますか?

オール電化住宅の全国戸数は、戸建てや分譲マンションも含め、登場以来ずっと伸び続けていますよね。 既存の住宅(既築)のリフォーム時のオール電化採用率も、ここ最近上昇傾向にありますし、オール電化住宅は、今後も増えていくものと思われます。

このことは賃貸住宅にも当てはまります。オール電化を身近に感じて育つ世代が増えていくわけですから、そういう暮らしの中で育った子どもが大人になれば住宅を借りる際に「オール電化賃貸住宅」の選択がスタンダードとなることも十分考えられますよね。

まとめ

賃貸市場が飽和状態になりつつある中、何らかの付加価値を加える工夫をしないと、高い入居率を維持することは困難になってきているようです。

そのような中、経営する物件について入居者の心を掴む魅力的な“人気物件” にするには、 中・長期的なユーザーニーズを見据えた資産価値アップの施策が必須といえます。

入居者とオーナー双方のさまざまなメリットを併せ持つ「オール電化住宅」は、賃貸市場で確かな資産運用と安定経営を実現するための大きな“攻めの一手”となるはずです。