スウェーデン・カロリンスカ研究所による疫学研究(1992年)
1992年、スウェーデンのカロリンスカ研究所のファイヒティング博士とアールボム博士の疫学研究により、送電線から発生する磁界と小児白血病の発生との間に弱い関連性が見られるとの発表があり、この研究はマスコミでも紹介され、大きな話題となりました。
小児白血病と計算による磁界の推定値の間に弱い関連性が見られましたが、実際の磁界測定値との関連性は認められませんでした。また、脳腫瘍、成人のがんについては磁界との関連は認められませんでした。
米国ガン研究所による疫学研究(1997年)
1997年、米国ガン研究所(NCI: National Cancer Institute)が発表した疫学研究では、「磁界が小児白血病のリスクを増加させるとの証拠はほとんど導かれない」と結論づけています。
カナダにおける2つの疫学研究(1999年)
1999年には、カナダにておこなわれてきた2つの疫学研究が相次いで報告されました。
4月に発表されたブリティッシュコロンビア州ガン機関のマックブライド博士ほかによる研究では、「今回の調査結果は、商用周波数電磁界の曝露と小児白血病と関連性の裏付けにはほとんどならない。」としています。
一方、6月に発表されたトロント大学のグリーン博士ほかによる研究では、「磁界測定値と小児白血病の間に関連性が示唆された。」との結果が報告され、日本の一部の新聞でも報道されましたが、研究者自身が、「この研究は、磁界がガンの原因になることを立証していない。」(プレスリリースより)としています。
英国における疫学研究(1999年)
1999年12月、英国において、症例数が2,000を越えるこれまでにない大規模な疫学研究の結果が公表され、「電力供給に関連する磁界が、小児白血病、中枢神経系のがん、その他の小児がんのリスクを増加させるという証拠は得られなかった。」と結論づけられました。この研究は、喫煙と肺がんの関係を指摘したことで知られる世界的にも著名な疫学者リチャード・ドール博士を中心とした研究グループによりおこなわれました。
スウェーデンにおけるプール解析(2000年)
2000年9月、カロリンスカ研究所(スウェーデン)のアールボム博士ほかにより、過去の9つの疫学調査をまとめてプール解析した結果が報告されました。
研究者は、「0.4μT(4mG)以上の対象者は非常にわずかな割合(全体の0.8%)であり、リスクが上昇する理由は不明であるが、選択バイアスがある程度関係していたかもしれない。」と述べながら、「0.4μT(4mG)以上の曝露を受けている子どもは、白血病の相対危険比が2.00(95%信頼区間:1.27~3.13)である。」と報告しています。
プール解析に対する国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の見解
ICNIRPの疫学分科会は「EMFと健康に関する疫学文献評論(2001年)」の中でプール解析(2000年、スウェーデン)の結果について、「既知のメカニズムがなく、再現性のある実験的根拠がないため解釈は困難であり、更なる研究が必要である。」と報告しています。
なお、本疫学分科会には、ICNIRPの委員(当時)であり、プール解析を実施したアールボム博士自身も参加しています。
日本における疫学研究(国立環境研究所:2003年)
1999年度~2001年度の間、日本の国立環境研究所を中心に「生活環境中電磁界における小児の健康リスク評価に関する研究」がおこなわれました。
報告書では、「子ども部屋の平均磁界レベルが0.4μT(4mG)以上のみで小児白血病のリスクが有意に上昇するパターンを示す」とされており、この研究もマスコミなどで紹介され、大きな話題となりました。
この研究は、文部科学省科学技術振興調整費により実施されたものですが、2003年1月28日に文部科学省が公表した文部科学省科学技術・学術審議会の評価結果では、「本研究結果により健康リスクの評価をおこなうのは不適切である」などとされています。
また、2007年6月に世界保健機関(WHO)から公表されたWHOの見解(ファクトシートNo. 322)では、この研究結果も含めた総合的な見解として「全体として、小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません」とされています。