原子力発電所の耐震設計の目的は、大地震に遭遇したとしても、放射線による被害を周囲に与えないようにすることです。
これを達成するため、原子力発電所の各施設を、発電所の安全性確保の観点から重要度ごとに分類し、それぞれの重要度に応じて耐震設計をおこなっています。
その中でも特に、安全上重要な施設については、他の施設よりきびしい耐震設計をおこなっています。
安全上重要な施設の耐震性とは
原子力発電所の安全確保対策の基本は「発電所周辺に影響を及ぼすような事故」を起こさないことです。
このため、原子力発電所は、さまざまな安全装置を備えた重要な施設を設置しています。
万一発電所で異常が発生してもこれらの安全装置が必要に応じて自動的に作動し、「原子炉を止める」「原子炉を冷やす」「放射性物質を閉じこめる」設計となっています。
また安全装置は、その一部が故障しても、要求される機能を発揮するように、複数設けています。
これらの安全上重要な施設については、想定東海地震(マグニチュード8.0)を上回る安政東海地震(マグニチュード8.4)と同規模の地震が繰り返し起こっても耐えられるように、さらに、この地域においてこれを上回る地震(マグニチュード8.5)にもその機能が維持できるよう、耐震設計をおこなっています。
原子炉を止める
原子力発電所では、異常が発生しても事故に拡大しないよう、異常を知らせる監視装置を設け、必要があれば原子炉を自動停止できるようにしています。
浜岡原子力発電所は十分な耐震安全性を有していますが、地震による大きな揺れに対しても、原子炉を自動停止するしくみとなっています。
具体的には、原子炉建屋最下階に設置した地震感知器が、120ガル以上の揺れを感知すると、原子炉を停止させる制御信号を発信します。この信号により水圧式の制御棒駆動機構が速やかに全ての制御棒を挿入し、原子炉を自動的に停止させます。
地震感知器は、揺れを確実に感知できるよう、複数個設置しています。
これら原子炉を止めるための設備は、万一、電源喪失などがあっても確実に動作するよう、フェイルセーフの設計としています。
地震時に制御棒が確実に入るかどうかについては、(財)原子力発電技術機構の多度津工学試験所の大型振動台での実証試験などによって、基準地震動S2を超える揺れに対して、制御棒が設計時間内に入ることを確認しています。
原子炉を冷やす
原子炉は、地震などにより停止した後でも原子燃料から熱が発生するので、原子炉の安全のために、この熱を除去する必要があります。
これらの設備として、余熱除去系、原子炉機器冷却系などを設置しています。原子炉停止後に原子炉内で発生する熱は、余熱除去系、原子炉機器冷却系などによって最終的に海へ逃がしています。
また、これらの設備についても、万一、故障などにより作動しない場合に備え、同じ能力を持ったものを複数設置しています。
放射性物質を閉じ込める
原子炉圧力容器は原子炉格納容器の中に設置されています。万一、原子炉圧力容器から、放射性物質を含んだ蒸気や水が放出されるような場合でも、原子炉格納容器が放射性物質を外部に出さないよう閉じ込めます。
また、異常を知らせる監視装置により、放射性物質の放出を抑えるよう、隔離弁が自動的に閉じます。隔離弁は、万一、1つが作動しない場合に備え、原子炉格納容器の内側と外側に1つずつ設けています。
こうした機能により、仮に放射性物質が原子炉圧力容器から漏えいしても、確実に閉じ込めるしくみになっています。
耐震重要度分類
原子力発電所の施設は、地震が起こった時に発生する可能性のある放射線による影響や原子炉の安全性を確保する機能の観点から、重要度に応じてA、B、Cの各クラスに分類されています。
さらにAクラスの中でも、特に重要な「原子炉を止める」、「原子炉を冷やす」、「放射性物質を閉じこめる」機能を有する施設は、Asクラスに分類されています。安全機能を確保するため、こうした耐震重要度分類に応じた設計用の地震力を用いて耐震設計をおこなっています。
原子炉冷却材圧力バウンダリはAsクラスとして設計しているため、地震によって破損し冷却材が喪失することはありません。このため、非常用炉心冷却系は、原子炉冷却材喪失事故の直後に原子炉を冷やすための重要な施設ですが、Aクラスに分類されます。
また、B、Cクラスに分類されている施設は、放射性物質の内蔵量が少ないため、これらの施設が、万一大地震で破損したとしても、敷地周辺に放射線による大きな影響を及ぼすことはありません。
さらに、下位のクラスに分類される施設が地震によって破損し、上位のクラスに分類されるものに影響を及ぼさないよう設計しているため、B、Cクラスの施設が壊れて、Aクラスの施設を壊すことはありません。
耐震重要度分類
| 重要度分類 | 考慮すべき地震力 | 対象設備 |
|---|---|---|
| As | 基準地震動S2 | 原子炉圧力容器 原子炉格納容器 制御棒駆動機構 余熱除去系 原子炉機器冷却系 隔離弁 など |
| A | 基準地震動S1 一般建築物の3倍の地震力 | 非常用炉心冷却系 非常用ガス処理系 など |
| B | 一般建築物の1.5倍の地震力 | タービン設備 廃棄物処理系 など |
| C | 一般建築物の設計に考慮される地震力 | 発電機 変圧器 源水タンク 循環水系 など |
