これまでにおこなわれた疫学研究で、電磁界(電磁波)と小児がんや成人のがんなどについて研究されてきました。その結果、小児白血病については一部の疫学研究で電磁界(電磁波)への長期的な曝露との間に弱い関連があることが示唆されています(注1)。

ここでは、電磁界(電磁波)への長期的曝露と小児白血病リスクとの関係を研究した疫学研究をいくつか紹介します(注2)。

(注1)小児白血病は非常に希な病気(日本で小児白血病に罹るのは、10万人あたり毎年3人程度)なこともあり、ここで示唆されている関連は、調査対象者の偏り(選択バイアス)、電磁界(電磁波)以外の因子(交絡因子)および偶然の組み合わせで説明される可能性があり、疫学研究の結果だけで電磁界(電磁波)が小児白血病の原因であるとは断定できません。

(注2)2007年6月に公表された世界保健機関(WHO)の見解(ファクトシートNo.322)では、これらの研究結果も含めた総合的な見解として「全体として、小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません」と述べています。

スウェーデン・カロリンスカ研究所による疫学研究(1992年)

1992年、スウェーデンのカロリンスカ研究所のファイヒティング博士とアールボム博士の疫学研究により、送電線から発生する磁界と小児白血病の発生との間に弱い関連性が見られるとの発表がありました。この研究はマスコミでも紹介され、大きな話題となりました。

米国ガン研究所による疫学研究(1997年)

1997年、米国ガン研究所(NCI: National Cancer Institute)が発表した疫学研究では、「磁界が小児白血病のリスクを増加させるとの証拠はほとんど導かれない」と結論づけています。

カナダにおける2つの疫学研究(1999年)

1999年には、カナダにておこなわれてきた2つの疫学研究が相次いで報告されました。
4月に発表されたブリティッシュコロンビア州ガン機関のマックブライド博士ほかによる研究では、「今回の調査結果は、商用周波数電磁界の曝露と小児白血病と関連性の裏付けにはほとんどならない。」としています。
一方、6月に発表されたトロント大学のグリーン博士ほかによる研究では、「磁界測定値と小児白血病の間に関連性が示唆された。」との結果が報告され、日本の一部の新聞でも報道されましたが、研究者自身が、「この研究は、磁界がガンの原因になることを立証していない。」(プレスリリースより)と述べています。

英国における疫学研究(1999年)

1999年12月、英国において、リチャード・ドール博士を中心とした研究グループによりおこなわれた症例数が2,000を越えるこれまでにない大規模な疫学研究の結果が公表され、「電力供給に関連する磁界が、小児白血病、中枢神経系のがん、その他の小児がんのリスクを増加させるという証拠は得られなかった。」と結論づけられました。

スウェーデンにおけるプール解析(2000年)

2000年9月、スウェーデンのカロリンスカ研究所のアールボム博士他により、過去の9つの疫学調査をまとめたプール解析がおこなわれ、「0.4μT(4mG)以上の場合、磁界曝露と小児白血病との間に、弱いながらも統計的に意味のある関連性が見られた」と報告されました。

日本における疫学研究(国立環境研究所:2003年)

1999年度~2001年度の間、日本の国立環境研究所を中心に「生活環境中電磁界における小児の健康リスク評価に関する研究」がおこなわれ、「子ども部屋の平均磁界レベルが0.4μT(4mG)以上のみで小児白血病のリスクが有意に上昇するパターンを示す」と報告されました。この研究はマスコミで紹介され、大きな話題となりました。

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