サステナブル事例
Sustainable Case study

SUSTAINABLE

Vol 03
増える再エネに対応
AIが電圧をコントロール

【事例】
オンライン系統安定化システム(長野方面ISCシステム)

いつも変わらない
電力を届け続けること。
それが、電力会社の一番の使命。

太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が推進される一方、再生可能エネルギーは日照条件・風量など自然環境で発電量が左右されるという問題が切り離せません。安定した電力供給が使命となるインフラ事業において、予測外の発電量の増減は適正な電圧範囲を逸脱する原因の一つです。それによって、調相設備や変圧器タップなどの電圧調整機器の動作回数を大幅に増加させることも判明しています。

中部電力グループ管内の中でも長野方面の電力ネットワークは、株式会社JERA 上越火力発電所の大電力を長距離にわたって送電しており、元来、過渡安定問題や電圧変動問題など複合的な問題が発生しやすい系統です。電力ネットワークを安定運用するため、これまで中部電力グループはオンライン系統安定化システムの一つである長野方面ISCシステムを活用してきました。本システムでは、夏季重負荷時など最も厳しい状況下を想定し、技術者の手で電圧運用の整定値を算出することで、安定した電力供給を支えてきました。
しかし、昨今の再生可能エネルギーの増加により、従来以上の電圧変動が懸念されています。想定される運用状況も膨大となり、従来の方法では適正な整定値の算出が容易ではなくなることから、早急な対応が求められていました。

世界初、AIを
電力の安定供給に活用。

中部電力グループでは、そうした新たな課題に立ち向かうため、AIを活用した電圧制御手法を開発し、長野方面ISCシステムにAI機能を搭載しました。
新システムでは、予め各種運用条件を満たした適切な電圧調整機器の状態をオフラインでAIに学習させ、オンライン制御時に学習済みAIモデルが出力した結果に基づき制御対象を決定します。AI方式により、さまざまなオンライン系統状態に対して最適な制御内容を瞬時に演算することで、機器動作回数の低減が可能となりました。
技術者の手による整定算出では、夏季重負荷時など最も厳しい状況下を想定しており、電圧調整機器の不要な動作回数を重ねる一因となります。各機器は予防保全として動作回数に応じて点検・部品交換を実施しているため、AI活用によって機器の維持や取替コストの削減が可能となりました。

電圧制御にAIを用いるのは、世界的に見ても中部電力グループだけの革新的かつ先駆的な取り組みです。電気学会 第79回電気学術振興賞においても、進歩賞を受賞しています。
今後はAIモデルを高度化し、さらに理想的な電圧制御を実現するほか、AI学習まで自動化することで人の手が完全に不要なシステムも視野に開発を続けています。
また、他のシステムへの導入も検討を進め、将来的な労働人口減少社会かつ再生可能エネルギーを用いた発電が増加する社会においても、トラブルのない安定した電力供給の実現を目指していきます。DXを通じて、脱炭素社会・GXも実現していく。中部電力グループの未来に向けた一歩です。

ページの上部へ