社員インタビュー
Interview

INTERVIEW

DX推進が解決した
水力発電のもう一つの課題

INTERVIEW

【写真左】

中部電力株式会社
再生可能エネルギーカンパニー
水力事業部
三澤 健太

【写真左】

中部電力株式会社 経営戦略本部
DX戦略推進室
竹迫 ななみ

運用技術の継承と業務の効率化を
AIでサポート

まずはお二人の普段の業務についてお聞かせください。

竹迫DX戦略推進室に在籍し、中部電力グループ全体でDXを盛り上げていくのが私たちの使命でもあります。私はその中でも、主に再生可能エネルギーカンパニーと伴走したDXの推進に尽力しております。再生可能エネルギーカンパニーの課題を吸い上げ、どう解決していくかを、システム開発にも加わるなど協力して取り組んでいます。当室には社内外からDXに関する最新の情報が入ってくるので、好事例があればすぐに共有し、再生可能エネルギーカンパニーの業務の高度・効率化を日々検討しております。

三澤私は再生可能エネルギーカンパニーで、現場の水力発電計画策定業務においてAIの活用を提案する、まさに掲載事例のプロジェクトに携わっています。配属前まで発電計画策定業務に携わったことがなく、現場で飛び交う言葉が何を意味するのか、そこからのスタートでした。以前は電力取引をおこなう部署に在籍していましたので、その経験を活かし、電力市場や売電に関するノウハウのAI活用や部署内教育などにも注力しております。

今回の、AIを活用した水力発電計画の策定支援システム開発において、そもそも何が課題でしたか?

三澤再生可能エネルギーカンパニーでは脱炭素社会の実現に向けて、新規電源の開発だけでなく既設電源の増電にも取り組んでおり、水力発電を最適に運用することで発電量を最大化することを目指しています。しかし、この発電計画は、従来、運用者が翌日の降雨予報からダムへの水の流入量を経験則で予想し、水系で複数ある発電所ごとの運用ルールをすべて考慮して策定しており、こうした熟練の運用者の技術継承、そして計画策定のための業務を効率化することが課題でした。

竹迫中部電力としては水系運用を明治期からおこなっており、その知識やノウハウは長年にわたって培ってきました。私自身、もともと再生可能エネルギーカンパニーの所属で、現場で発電計画の策定に携わっていました。計画の立て方について重視するポイントが人によって違うということに驚きつつも、そこに職人の技のようなものを感じていました。どの計画策定方法も視点を変えれば適切となるものの、誰の下に付くか、誰に教わるかで得られるノウハウは変わってきます。そうしたそれぞれのやり方がAIで一つにまとまることで業務が効率化できるだけでなく、策定技術の継承にも役立つということが価値のあることだと思います。

用語理解を統一し、ルールを明文化する。DX化で見えた、新たな課題

では、このプロジェクトを進めていく中で苦労されたことはありますか?

三澤中部電力とTSUNAGU Community Analytics(以下、TCA)とで連携しAIを開発していますが、そのTCAへグループ内インターンシップというカタチで延べ2ヶ月ほど参加、本プロジェクトの開発側として従事しました。自身のDX推進力を身に付けるだけでなく、当社のニーズを満たすためにどのような提案ができるか、AIモデルを作成する側から業務に携わることで、開発側と現場側の潤滑油になれたらと、そんな意識で取り組んでいました。ただ、開発側と現場側、双方がそれぞれの分野の専門用語を無意識に使っており、認識もバラバラ。そのすり合わせには苦労しました。

竹迫聞き慣れないIT用語もなんとなくの理解で会議が進んでいくようなこともありましたね。もちろん聞けない、聞きにくい雰囲気は全くありませんでしたが、再生可能エネルギーカンパニー、DX戦略推進室、TCA、現場の方々と全員が同じ理解をしているか、足りないと感じれば、会議の後でフォローをしたり、認識合わせのための再打合せをおこなったりもしましたね。

三澤用語だけだとなんとなくの理解で、お互い進めていって、計算結果を見るとなんか違う。あ、やっぱりここの理解が違ったね、という手戻りを何度も経験しました。検討内容からシステム化へ落とし込む際の現場のニーズや業務フローに沿ったものづくりを提案するということが難しかったです。そのあたりを最初に整理できれば良かったなと今にして思います。

ご自身が得た気付きや変化、周囲の変化などは?

竹迫現場にいたときは、この業務もこうすればもっと簡単にできそうなのに、と思いつつも手段がわからず何もできませんでした。ですが、DX戦略推進室に来てからいろいろな最先端のデジタル技術情報だったり、改善事例だったり、周りの情報に触れられるようになったので、どのような課題に対してどのような技術が使えるのか、業務を改善するときにはどのようなアクションがいいのか、ということがわかるようになってきました。情報交換も日々おこなわれており、そうして得た知識を積み重ねていって、中部電力グループ全体の業務に活用できるようになれればなと思っています。

三澤先ほどの用語の理解の違いにも近いですが、AIにする上で制約やルールを体系的に整理するところから始まりました。ただ、現場にマニュアルはあっても整理されたものではなく、バラバラにルールがあったりしました。それが、TCAの皆さんがイチから学んでくださったことで、「これも実は制約では?」といった気付きもあり、業務整理や明文化できたことは大きな収穫だったと感じています。

竹迫DXってデジタルを使うことを目的とするのではなく、課題を解決するための手段としてあると思っています。今回のような、水力発電運用のノウハウの共有化が、今まで口伝えや感覚、経験でやっていたことが、ちゃんと言葉になって定義されるようになったことは、AIを導入するプロセスでのいい副産物だったなと感じています。

水力発電AIの高度化と他水系への展開で、さらなる増電増収へ

いま担当しているプロジェクトや業務を、今後どのように発展させたいとお考えですか?

三澤TCAへのインターンシップ参加も含め、いろいろな目線で取り組めて、それぞれの立場の方の意見や考えを知ることができたので、視野が広がったと実感しています。また、課題解決に対する動きも速くなって、やりがいを感じていました。その中で、水力発電AIの開発に関しては、飛騨川水系を対象として特許を出願しましたが、他にも飯田の天竜川、静岡の大井川水系でも同様の検討に取り組んでいます。そこでの取り組みも、飛騨川レベルにまで進めたいです。また飛騨川においては、一週間~二週間といったような長いスパンの予測にも取り組んでいきたいです。ダムの大きさも様々で、非常に大きな貯水容量を持った貯水池式のダムになると、単日の運用よりも年間通して水位をどうするといった長期的な運用計画になります。週単位の予測が可能になると、発電・売電するタイミング、つまり時期・時間なども高い精度で検討でき、増電・増収に貢献できると考えています。

竹迫水力発電AIには、現場にいた時から業務検証をするという立場で携わってきました。DX戦略推進室に異動となり、DXを推進する立場に変わりましたが、イチからシステムを作り上げるプロジェクトに携われていることに喜びを感じています。今後、DXをより一層進めていくためにもまずは課題を見つける意識を持つことが大切だと思います。当たり前にやってきたから、慣習だからではなく、こんな風にできないかなとご自身の視点を持っていただけたら、そこがDXの始まりかも知れません。先入観を持たず、課題だなと思うことに向き合ってみる。私たちの部署にはその解決のためのヒントが集まってきますので、今回のような事例を全社に展開することで中部電力全体のDXを推進していけたらと考えています。

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