社員インタビュー
Interview

INTERVIEW

フレイル検知から広がる未来 DXの根底は、人と人の繋がり

INTERVIEW

【写真左】

中部電力株式会社 事業創造本部
山本 卓明

【写真左】

中部電力株式会社 事業創造本部
傳田 純也

電力スマートメーターを活用して、
地域の課題を解決する

高齢者の生活を支える〈eフレイルナビ〉は、電力からほど遠い分野になぜ進出したのでしょうか。

山本<eフレイルナビ>とは、一人暮らし高齢者世帯の電気の使い方からフレイル状態を検知して、自治体の専門職員にお知らせするサービスです。フレイルとは、加齢に伴い心身が衰えた状態を指し、健康と要介護の中間にある状態です。ここで対策が取れれば、適切な健康状態に回復できるため、今、フレイル対策への関心が高まっています。
元々は、グループと親和性の高い電力データをAIで分析すると電力供給以外では何に活用できるか、というテーマから動き出した本事業。誰に・どのように、収集したデータをご活用いただくことが社会の役に立つかを考えることからはじまりました。グループのさまざまな専門部署と一緒に自治体職員や民生委員、高齢者などへのインタビューを重ね、たどり着いたのが自治体へ向けた独居高齢者のデータ活用でした。

傳田昨今は介護認定を受ける高齢者が増加しており、各自治体で介護分野の人員不足が課題になっています。社会的にフレイルへの関心は高まっていますが、フレイル対策まで手が回りません。私たちはそこに着目しました。各戸に設置済みの電力スマートメーターを活用することで、高齢者も自治体職員も大きな負担なく、新たな繋がりが構築できます。高齢者は適切なタイミングで専門家の支援が受けられる、職員は効率的に支援が必要な人に接触が図れると、評価を得ています。

中部電力グループと地域が共に発展する。その思いで取り組むDX

中部電力グループの強みと、地域の課題が合致した事例だと思います。一方で、生活サービス展開へのグループ内の反応はいかがでしたか。

山本電力事業に携わる中部電力グループは、公益性が非常に強い会社です。「地域の発展を考える」、社員一人ひとりの地域貢献の精神が非常に強いと感じます。中でも、私たちが所属する事業創造本部は、新しい分野にチャレンジし、電力事業以外の新事業を社会に送り出すことが使命です。既成概念を取り払い、サービス内容からその提供先まで自由度高く「社会に役立つこと」を考える環境が整っています。
今回、自治体に向けたサービスを開発する中で、当社グループと地域の暮らしを支える自治体は親和性が高いと改めて感じました。地域に役立ちたい・活性化したい、その想いの下に新たな協創関係が築けると可能性を感じています。

傳田<eフレイルナビ>の営業として各自治体を訪問し、サービスの説明も担当しています。中部電力グループの旧来の電力供給エリアの自治体数は220。さらに電力供給エリア外の自治体にも<eフレイルナビ>提供を拡大し、現在はおよそ300の自治体と接点があります。自治体担当者には、地域活性化へ共感の声をいただいており、真に地域に役立つやりがいを感じます。

山本中部電力グループは全社をあげてDXを進めています。データの有意義な活用法についても、多くの従業員が同じ志を持ち、事業開発に取り組んでいます。
<eフレイルナビ>の今後の展開に向けても、DX戦略推進室をはじめ、システム開発部門など部署の垣根を越えて相談をすることで、改善点や新しい視点などポジティブな反応が多く返ってきました。グループ全体が連携することで、社会をよくするための新たな力が生まれたと感じています。
事業立ち上げから3年の間には、社内のデジタル意識も大きく変化。グループ内の連携も取りやすくなりました。

<eフレイルナビ>には、まだまだ未来がある

開発からはじまり、いよいよ実用化。<eフレイルナビ>の可能性はどれほどでしょうか。

山本自治体を回る中で、高齢者が介護職員と接するまでの難しさを感じました。介護分野は申請主義の原則に基づいており、利用者は自分から窓口で変化を伝えなくてはなりません。
私は、中部電力グループのさまざまな分野でデータ活用を進める中で、これまでの常識やルールも、合理的な理由があれば「変革できる」ものだと学びました。<eフレイルナビ>は、まさに介護の現場でルールを変えるきっかけになるものです。定期的な全戸訪問をおこなわなくても個人の状態が察知できる。それがあたりまえの日常への一歩になると、私たちは確信しています。

傳田システムの構築から運用までに、多くの自治体職員や高齢者の声を聞きました。その中で、私たちの想定とは違う暮らしがあることに気づきました。地域による電力利用の差、さらには住まいの築年数によっても電力事情が変わります。フレイルを検知するAIの精度はもちろん、システムのカスタマイズ性についても、実際の利用者に寄り添って考える必要を感じました。
DXとは、当然デジタル技術の活用が必須であり、先を行くテクノロジーという煌びやかな印象もあります。でもその根底にあるのは人と人との繋がりなのです。

山本中部電力グループの定款には、「コミュニティサポートインフラ事業」という一文があります。<eフレイルナビ>はまさにここに位置する事業です。私は、コミュニティとは、互いに相手に関心を持ち接する輪(人と人との関係性)だと考えています。この関心は、低すぎても高すぎてもいけない。それとなく関わりがあることだと感じています。自分の日常を維持しながら、変化があれば誰かに気づいてもらえる。現代にフィットする適した距離感だと思います。デジタルはあくまでもツールの一つです。人の暮らしにどんな変化をもたらすか。きっかけは「人」です。その視点は忘れてはいけません。

これからも健康分野への貢献を進めて行く

電力データから健康を支える。次はどのような一手を考えていますか。

山本<eフレイルナビ>の開発で、介護・医療分野にはまだまだデータが活用できると分かってきました。<eフレイルナビ>は高齢者の中でも一人暮らしを対象としていますが、実際対象となる方は高齢者人口の1割程度にしか過ぎません。今後は一人暮らしに限定せず、健康な高齢者同士の繋がりを構築するサービスまで展開できればと考えています。

傳田<eフレイルナビ>は検知に特化したサービスです。導入への先行投資が少なく、一度導入すれば使い続けやすい利点がある一方、検知後は人の介入が必要です。自治体職員のリソース不足を肌で感じたからこそ、その課題をどう解決していけるかが次の役目だと感じています。
電力データを使う点で考えると<eフレイルナビ>もインフラの一つです。電力があたりまえに使われるように、数年後にはフレイルを検知することが当然の社会になって欲しいと思います。中部電力グループのDXは人のためにある。その視点を忘れずに取り組んでいきたいです。

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