プレスリリース

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次世代超電導コイル開発に成功-世界最高強度の電磁力に耐えるコイルの実現-

2012年05月14日
中部電力株式会社

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超電導技術は、電気抵抗を発生させることがなく、損失なしで大容量の電流や強磁場を取り扱うことができるため、電力分野において大変魅力的な技術です。当社は現在、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「イットリウム系超電導電力機器技術開発」のうち、電気をコイルに貯蔵する超電導電力貯蔵装置(SMES)の開発(注1)を受託し、次世代超電導コイルの開発を進めております。

本開発では、超電導線材にイットリウム系化合物(注2)を用いることで、従来の金属系超電導SMESより、コンパクトでエネルギー容量が大きく、低コストな装置の開発を目指しております。

イットリウム系の超電導線材は金属系超電導線材に比較して機械強度が強いことから、強磁場を必要とするSMESや医療機器、輸送機器などのマグネットへの実用化が期待されており、国内外で実用化に向けた開発が積極的に行われています。

超電導では、大電流により、強い磁場を発生させることができますが、超電導線材を伸ばそうとする強い電磁力が働きます。これまでの超電導コイルは、線材が電磁力を支える構造をとっていたため、超電導線材の強度による限界があり、より強い電磁力への耐性を持つコイルの開発が望まれておりました。

当社は、このたび、超電導線材に作用する電磁力をコイルの面で支える画期的な方法(特許出願済み)を東北大学金属材料研究所強磁場センターと共同開発し、さらに液状樹脂を用いた絶縁被覆技術と組み合わせることによって、従来のイットリウム系超電導コイルの2倍、金属系超電導コイルの6倍という、世界最高強度の電磁力に耐えるコイルの開発に成功しました。

例えば、SMESではこの技術により、同じ大きさのイットリウム系超電導コイルで10倍のエネルギーが貯蔵でき、また、SMESだけでなく強い磁場を利用する全分野の超電導マグネットへ適用可能です。

本開発の特徴

1 超電導線材に作用する電磁力をコイルの面で支える高強度コイル構造

金属系超電導コイルの電磁力に対する耐力は300~400 MPa(注3)程度でした。また、イットリウム系超電導コイルでは、超電導線材の強度の限界である1,000 MPaが最大となります。

今回の新構造コイルは2,000 MPa級の電磁力に耐えることが可能で、本開発のコイルは世界最高強度の超電導コイルです。コイルの大型化による強い電磁力に効果を発揮し、コイルのエネルギー容量をコンパクトサイズで可能にします。

2 液状樹脂による超電導線材の絶縁被覆技術の開発

超電導コイルの電気絶縁技術は、従来、樹脂テープを超電導線材に巻く手法が採られておりました。しかし、樹脂テープの切れや偏りによって、絶縁性能の低下やコイルの寸法精度の悪化を生じることがありました。

今回、超電導特性を低下させないような温度で硬化が可能な液状樹脂を世界で初めて超電導線材被覆に適用し、曲げに強いフレキシブルな絶縁被覆を形成することに成功しました。これによって絶縁性の確保と加工性の向上を両立いたしました。

本開発は5月14日から18日まで福岡で開催される低温分野の国際会議「24th International Cryogenic Engineering Conference and International Cryogenics Materials Conference 2012」で発表いたします。

(注1)経済産業省資源エネルギー庁の国家プロジェクトで、超電導電力貯蔵装置(SMES)を、古河電気工業株式会社、東北大学、早稲田大学、京都大学と共同開発。電気抵抗がゼロとなる超電導状態のリング(超電導コイル)に電流を流しても抵抗がないため、電流が減衰せず、電気エネルギーを磁気エネルギーとして貯蔵することができます。この原理を利用した電力貯蔵システムがSMESで、大電力を瞬時に出力できる、電力の出入速度が速い、エネルギー貯蔵効率が高いという特長があります。

(注2)イットリウム系化合物を用いた超電導線材は、イットリウム(Y)・バリウム(Ba)・銅(Cu)・酸素(O)からなり、金属基板上に複数の薄膜を形成して構成されるテープ形状の超電導線材です。

イットリウム系化合物を用いた超電導線材

(注3)100 MPaは、直径1mmの糸で8 kgの重さのものを吊ったときに糸に加わる力

別紙

以上

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