浜岡原子力発電所では、東日本大震災で発生した津波の知見をもとに、発電所敷地前面に沿って総延長約1.6km、高さ海抜22mの防波壁を設置しています。
津波から発電所を守るには、高さだけではなく、津波の大きな力を受け止める強さが必要です。そこで考えたのが、地中にあるかたい岩盤と防波壁を一体化させることでした。
深さ10mから30m掘り下げ鉄筋コンクリートづくりの壁状の基礎を岩盤に埋め込みます。
この基礎となる連続地中壁の工法は、東京スカイツリーでも採用されており、鉄筋かごにはJIS規格で最大サイズの直径51mmの鉄筋を使用しています。
厚さ2mの鉄筋コンクリート造りの床版と鋼板の箱を組み合わせたたて壁でできています。
この防波壁は鋼鉄を多用することにより、鉄の粘り強さを発揮して地震や津波に耐える構造となっています。L型の形状にすることにより、津波の力に対してふんばりがきき倒れにくいものとなります。
最も津波の力がかかる基礎と地上の壁部分のジョイント部については基礎の鉄筋の周りを取り囲むように壁部の鋼材を配置し、コンクリートで一体化させた構造でつなぎ合わせています。壁にかかる力を基礎と岩盤が一体となって受け止めることにより、強度と安定性に優れた設計となっています。
たて壁は鋼板の箱を組み合わせています。
鋼板には変形した場合でも曲がりながら持ちこたえ、粘り強いという特徴があります。
壁の上部には、鋼鉄構造で4mのかさ上げを実施し津波の波力に対して十分耐える強度を確保しています。
壁の面積増加にともなって壁面全体が受ける波力が増加するので、壁の下部を補強しています。
また、防波壁を越えた津波が敷地側に流れ落ちたとしても、岩盤まで根入れした基礎があることから、持ちこたえることができます。
このように防波壁は、かたい岩盤と一体となって津波の大きな力を受け止める強さと、ブロック構造によって地震の揺れを吸収できる構造となっています。