技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
解像度 640×320
解像度 1920×1080
第 2 図 配管継手の漏油の検出例
第 3 図 送電線の溶痕の検出例
(2)送電線の落雷による溶痕の検出
学 習データとして、 ドローンで撮 影した 送 電 線の動 画
(MP4 HD)を 0.5 秒間隔でキャプチャした画 像を利用し
た。また、映像の解像度の影響を調べるため、640×320と
1920×1080 の解像度で 2 パターンの検証を行った。計算量
の観点から、両パターンでメモリバンクのサイズが同等にな
るようにデータサンプリングを行い、最終的に640×320 の
設定では 220 枚、1920×1080 の設定では 20 枚の正常画像
解像度 640×320
第 4 図 異常スコア(背景あり)赤が正解フレーム
を学習データとして用いた。評価データとして、ドローンで撮
影した別の送電線の動画( 約 6 分 )に画像加工によって径間
に 3 箇所の異常( 溶痕 )を付加した模擬データを用いた。こ
のうち正常データは 658 枚、異常データは15 枚であった。
ドローンで撮影された映像は、背景が動的に変化するた
め検出性能に影響を与える可能性がある。このため、入力
画像に対しニューラルネットワークに基づく深度推定 [2]
を行い、閾値によるマスク処理によって背景を除去する処
理を行った。
検出結果の例を第 3 図に示す。同図から、深度推定によ
解像度 640×320 解像度 1920×1080
第 5 図 異常スコア(背景無し)赤が正解フレーム
る背景除去により、正確に送電線のみが抽出され、異常検
出モデルにより正確に異常箇所が可視化されていること
が確認できる。異常検出の AUROC は解像度 640×320 で
99.8、1920×1080 で 100 となり、頑健な異常検出が可
5
まとめ
能なことがわかった。解像度 1920×1080 の場合はわずか
本研究では、教師無し学習を用いた送変電設備の異常検
20 枚という学習データで完璧に検出ができている。
出技術の検討を行った。その結果、変電設備の漏油および
評価データにおける異常スコアの時系列遷移を第 4 図
送電線の溶痕の検出について提案手法の有効性が確認され
(背景あり)、および第 5 図(背景無し)に示す。縦軸が異
た。今後の展開であるが、生成モデルによるアルゴリズム
常スコア、横軸がフレーム番号、赤線が正解フレームであ
を検討すると共に、より広範な設備について検証を進めて
る。これらを比較すると、背景ありの場合には正常時のス
いく予定である。
コアが安定せず、また正常と異常のスコア差が小さくなっ
ていることが確認できる。よって、深度推定による背景除
去を行うことにより、正常と異常の識別が容易になること
がわかる。
ここで、第 5 図の横軸 ID 270 付近に着目すると、異常
スコアが突発的に上昇している。これは、ドローン撮影時
参考文献
1. K. Roth et al., “Towards total recall in industrial anomaly detection”, IEEE
CVPR (2022).
2. R.Ranftl et al., “Towards robust monocular depth estimation: Mixing
datasets for zero-shot cross-dataset transfer”, IEEE Trans. PAMI
(2020).
のピントが外れ、深度推定による背景除去が不正確となっ
たことに起因する。これより深度推定の精度は検出性能に
大きく影響するものと考えられる。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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