技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
AIを活用した『歩きスマホ検知装置』の内製構築
In-house Construction of“Walking Smartphone Detection Device”Using AI
AI があなたの歩きスマホを注意
中部電力 HD における『歩きスマホゼロ活動』推進を支援するため、歩きスマホをして
いる人を見つけ本人に注意喚起する、AI を活用した『歩きスマホ検知装置』を内製構築
した。内製化により、早期導入、低コスト導入、検知と注意喚起のレベルのバランスを調
整することができた。
執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
加藤 直樹・岡本 雄司
1
はじめに
中部電力 HD では、転落・墜落、転倒・激突等の災害の
未然防止のために、『歩きスマホゼロ活動』を実施してい
る。歩きスマホをしている人がいれば注意喚起をしたい
個人情報保護へ配慮し、インターネット・クラウドへは
接続せず、装置内部で処理が完結するシステム構成とした。
2
早期導入
が、人による監視や声掛けには限界がある。一方で、先
装置の構築にあたり、先端技術応用研究所が保有する
端技術応用研究所では、AI、画像処理、エッジデバイス、
『汎用 AI 活用フレームワーク』を適用することで、AI 処理・
カメラ等の AI・ICT の技術・知見を有している。そこで、
音声出力等のためのプログラム開発時間を大幅に削減する
AI が歩きスマホの状態を検知し、合成音声により本人へ注
ことができた。このフレームワークは、様々な AI を載せ替
意喚起する、『歩きスマホ検知装置』を構築することにし
えて動作させ、結果を音声やメールで通知する、枠組みの
た。そのイメージを第 1 図に示す。
役割をするプログラムである。その結果、研究の依頼から
テスト設置まで、約 2 ヶ月で実装することができた。
また、装置には特殊な資機材は使用せず、市販品を組み
合わせて構築したため、通常の物品購入に必要な期間のみ
で用意することができた。
3
低コスト導入
上述のとおり、装置は市販品を組合せて構築することと
第 1 図 『歩きスマホ検知装置』のイメージ
したため、材料費(最新バージョンの装置で約 15 万円)
と社内リソースで実装できた。AI およびシステムのプログ
主管部署である安全推進グループへのニーズの聞き取
ラムは、オープンソースを活用した自社開発である。
りにより、装置導入における課題が、早期導入(スピー
また、必要な計算能力等の条件とコストとのバランスを
ド)、低コスト導入(コスト)、検知と注意喚起のレベル
考慮しながら機器を選定した。例えば、構成部品の一つで
(技術)であることが分かった。それらのバランスを調整
あるエッジデバイスの選定では、はじめは安価なことを優
するため、既存の技術・知見を活用しつつ、内製化による
先したが、OS やプログラムのバージョンが古い、2 章で
構築をすることとした。構築した『歩きスマホ検知装置』
述べたフレームワークに対応しない等の数々の試行錯誤が
を第 2 図に示す。
あった。
4
検知と注意喚起のレベル
(1)検知技術
歩きスマホをする人物の検知は、既存の物体検出 AI モデ
ル(EfficientDet)を歩きスマホ検知用に学習させて実現
した。AI による検知のイメージを第 3 図に示す。
学習に使用する教師データとして、多数の研究所員を動
第 2 図 『歩きスマホ検知装置』
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
員し、歩きスマホをしている動画を撮影し、これを分割し
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