技術開発ニュース No.168

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特
集
+ 第 3 図に示すのは、管理表の情報と実際の作業の比較
である。現場の管理表では部品の受入れという単一作業に
まとめられていた。これに対して実際の現場では、荷下ろ
しやピッキングに伴う準備・後段取りなど複数の作業が存
在する。これらは付随作業として捉えられていたため、管
理表からは抜け落ちており、第三者による客観的な視点で
の現場調査の必要性が明確になった。本研究ではさらに、
調査で得た情報を基に、次項の業務分析を行った。
3 - 2 業務分析
業務分析では、業務のムリ・ムダやボトルネックを抽出
する視点が必要であるため、現場調査で得られた「暗黙
知」も含めた情報を基に工程を細分化し、実態を正確に表
第 5 図 検証で作成した 3 次元シミュレーション
3 - 3 シミュレーションによる実装に向けた事前検証
明確になった課題点に対する改善効果の事前検証には 3
現した作業フロー図を書き起こす。本研究では、プロセス
次元シミュレーションが有効である。設備や人、生産ライ
分析手法として PReP モデル法(Products Relationship
ン間の相互作用を再現でき、さらには視覚的に確認できる
Process)を用いて、この作業フロー図を分析した。
ことで、改善可否の判断がしやすくなる。
PReP 法とは、作業の最終目的を明確にし、その目的に
第 5 図に示すのは、現在検証中の企業の既存工場の一部
対する成果物(製品や部品など)を特定することで、その
を 3 次元モデル化した様子である。業務分析の結果を反映
成果物から遡って、適切な工程の流れになっているかを分
することで、実在する現在の工場の稼働状態の再現が可能
析する手法である。今回具体的には、
「業務構造分析」と
となった。また、抽出した改善点を反映したシミュレー
して各成果物ごとに作業フローを分解するとともに、「作
ションにより、改善前後の結果を比較してその効果を評価
業工数分析」として、実際の作業を細分化して工数を定量
できるため、生産性向上等の検討に役立てることができる
化した。その後に第 4 図に示すリスクパターンの例などと
ようになった。
照らし合わせることで、ボトルネックとなる改善重点工程
の見える化が可能となった。
3 - 4 自動化・高機能化技術の検討・開発
業務分析やシミュレーションは作業量が多く、また管理
一般的な行程フローのスケール
一般的な行程フロ
表や作業フローが不十分なケースもあるため、将来的に
(例)部品受入れ
は、業務分析手法や業務パターンを標準化手法として整理
部品受入れ
1.外観
2.部番/品名/数量
(例)部品受入れ
ローのスケール
業務分析を目的とした工程フローのスケール
カギの保管場所が
現場から遠い
フォークリフトのカギを取りに行く
フォークリフト駐車場に向かう
入荷バースに向かう
運転前点検を行う
フォークリフトのカギを返却しに行く
確認しやすい
部品の積み方の検討
バーコード管理
部番/品名の確認
確認ポイントの
標準化
外観の確認
数量の確認
置き場レイアウトの
見直し
フォークリフト駐車場に向かう
記録
また生産設備の 3 次元図面の不足があるため、3D シミュ
NaRF 技術や LiDAR 測定により取得した点群データの利用
など 3 次元化技術の活用も行っていく。
部品置き場へ搬送
タブレットと在庫管理
システムとを連携
し、AI 等を活用して自動化・省力化する技術の開発を行う。
レーションに必要なパーツを複数の写真から自動作成する
積み下ろし
場内ルートの
検証
カギの保管場所が
現場から遠い
再び部品置き場に向かう
トラック入出荷の
タイムチャート見直し、
効率化
場内ルートの
検証
別スタッフが
代行
現場から遠い
パソコンのある場所に向かう
在庫管理システムに入力
第 3 図 管理表の情報粒度と暗黙知の実態の例
4
今後の展望
現場調査や業務分析といったアナログ手法と 3 次元デー
#
1
リスクポイント
同期関係
2
ステークホルダ間で
成果物授受
3
作業から多くの
成果物を生成
4
作業に多くの
成果物を要する
5
成果物が多くの
作業のインプット
となる
表示例
成果物
問題点の抽出観点
成果物
成果物
ステークホルダ間でやり取りをするため
不確実な伝達やセキュリティリスクが発生しやすい
作業
成果物
作業
擦り合わせながら成果物を作成するため、
情報ロスや手違いが発生しやすい
成果物
成果物
作業の負荷が高くなるため、
業務上のボトルネックにになる可能性が高い
成果物
成果物
作業
成果物
作業
成果物
作業
作業
業務上のボトルネックになる可能性が高い
多くの作業で活用されるため
情報の正確性や高いセキュリティ性が求められる
第 4 図 業務分析における特徴的な業務パターンの例
タを活用したデジタル技術を組み合わせて事前検証をする
プロセスの開発に取り組み、効果検証を実施中である。今
後はデータが集まる仕組みとしてデータ標準化を行うこと
が必要であり、集約・整理・検索・解析・共有機能の開発
も行う。
またこのプロセスは製造業以外にも適用可能であるた
め、電気事業における業務の効率化や 3 次元データで先行
する建設業などの他ドメインにも展開していきたい。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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