技術開発ニュース No.168

- ページ: 8
-
特 集
Special Edition
デジタルによるものづくり
共創プラットフォームの構築と活用
アナログ手法とデジタル技術を組み合わせた工程改善検討の取り組み
1
執筆者
先端技術応用研究所
プロジェクト推進 G
開始し(第 1 図)、2025 年度からのサービス化を目指して
はじめに
いる。
本プラットフォームでは、日本の製造業全体の底上げを
欧 州 を は じ め と す る 製 造 主 要 先 進 国 に お い て は、
目指し、フロントローディングに資する個社最適化と全体
「Industry 4.0」に代表されるデジタル技術を活用した自
最適化のソリューションサービスを中核として取り組みを
動化・効率化の動きが活発になっている。その目的は、
進めている。
人間の想像力や感性を最大限に生かした価値創造を追求
ものづくり白書や政策投資銀行の調査によると、IT 投
し、効率化により価値の高い時間(欧州では特に家族や趣
資総額自体は、堅調に増加している一方で、特に中小企業
味の時間)を創出することであり、CPS(cyber physical
においては、電子化やシステム化という手段が目的化し、
system)や IoT、クラウドコンピューティングという先端
本質的な業務の変革や効率化に至っていないことが指摘さ
技術を活用した産業改革に乗り出している。また、自動車
れている。そのことから、的を射た改善を進めることがで
産業界を中心とした Catena-X などのデータ連携を目指し
きれば、改善によって創出された人やお金を、次の改善に
たデータ標準化・共有化の波も押し寄せている。
投資することができ、このサイクルを回すことがデジタル
日本においても、「Smart Factory」の実現に向けた構
化・効率化への唯一の近道であると考える。
想策定やデータの取得・共有化の取り組みが大手企業を中
そこで当社では、デジタル技術を用いたフロントロー
心として急速に普及してきている。しかし、製造プロセス
ディングにより生産工程改善を図るにあたり、的を射た改
全体の最適化には至っておらず、日本全体を見てもデジタ
善点を導出するためには、第三者目線による全業務の洗い
ル技術を活用するための費用やデジタル人材の不足という
出し・整理・分析(以下、業務分析)が重要であると捉
足元の問題と、そもそも進め方に関するノウハウの不足と
え、業務分析の検証から開始した。
いう根本的な問題の両面から解決する必要がある。
2
プラットフォーム構想と改善のサイクル
研究内容
本研究では、業務分析の準備としての①現場調査、その
上記の課題に対して、効率的なものづくりを実現する
情報を活用した②業務分析といったアナログ手法を経て、
キーワードはフロントローディングであると考える。つま
③シミュレーションによる実装に向けた事前検証、および
り、事前検討に重点を置き、先端技術やデータを活用して
これら一連の業務について④自動化・高機能化技術の検討
その検討精度を高めることにより、手戻りを抑制し、人も
を行った。
お金も投資余力を創出するのである。
そこで、製造業の集積地である中部地域の電力基盤を担
う当社は、製造業に支えられている側面があることから、
3 - 1 現場調査
日本の製造業の強みであ
製造業の成長基盤として、デジタル技術を活用でき、デー
る現場の摺り合わせは、作
タが集まり、データが行き交うプラットフォームの構築を
業フローや管理表には記載
【プラットフォーム】
【サービス提供者】
【サービス利活用者】
中部電力
【個別最適化】
【全体最適化】
経営コンサルティング
個社能力の可視化
サプライチェーン再構築
個社能力の向上
企業間連携の促進
メガサプライヤー
3Dシミュレーション
SCビジネスマッチング
中小・中堅企業
CAE解析ソリューション
企業間DR
業務改善コンサルティング
3Dシミュレーション制作
3Dデータ高精細化
CAE解析コンサルティング
ラインビルダー・SIer
システムインフラ提供
ソリューションマッチング
製造メーカー
ゼネコン・サブコン
自治体
データ統合・標準化
Knowledge DB
個社別生産能力データ
データ統合・コラボレーション環境
(Omnivers)
個社別設計能力データ
【共通機能】
技術開発ニュース 2024.03/No.168
されていない「暗黙知」で
あり、作業を分析する上で
は大きな足枷となる。この
「暗黙知」を目に見える「形
式知」に変換することが業
金融機関
務分析の第一歩であるた
個人
め、 現 場 に 張 り 付 き、 す べ
3D活用インフラ環境
(ハイエンドGPU搭載VDI)
第 1 図 プラットフォームの全体像
(デジタルインフラを具備、パートナーと共創)
7
3
ての作業を把握する調査を
行った(第 2 図)。
第 2 図 現場調査の様子
- ▲TOP