技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
が期待できる。さらに、設計段階での立体的な離隔距離と
のように、MMS 以外の可搬型 LiDAR や画像取得を主とす
配置の明確化により、2 次元図面では表現しにくい配電線
るドライブレコーダなど、複数の装置を使用して設備・周
の他物横断や接近時の離隔の確認が視覚的に可能となる。
辺環境情報の更新・補完を行う技術が必要となると考えら
ただし、この適用概念は 3D モデルの作成を設計段階で
れる。
行い、その後はモデル自体の更新はせず、属性情報の追
加のみを行う前提での机上検討モデルである。実際の業務
では、検査工程等で 3D モデルの変更が必要となる場合が
(2)BIM/CIM モデル作成と更新の課題
3D モデルの作成・更新方法案は第 4 図に示す。電柱や変
あるため、対象とするレベルについては別途検討が必要と
圧器などの配電設備の 3D モデルを事前に作成し、ダイア
なる。
ログボックスなどを用いて支持物等の属性情報を指定し、
また、BIM/CIM 導入を実現するためには、次章で述べる
BIM/CIM モデルの作成・更新を行う。これを配電業務の
3D データの取得方法や更新方法についての検討が求めら
ユースケースへの適用案として検討していた。
れる。
今回は標準的な装柱(支持物への電線・機器の設置)に
適した粒度の 3D モデルを提案している。しかし、複雑な
BIM/CIM 活用データ取得と更新の技術
課題
4
(1)設備や周辺環境の情報取得と更新の課題
装柱には、電線と機器の接続表現などの課題が存在するた
め、ニーズに応じた 3D モデルの粒度に関する整理が必要
となる。
また、既設設備については、現場調査のうえ、3D モデ
BIM/CIM の導入には、設備や周辺環境の情報取得が必要
ルの作成が必要である。よって、現場調査結果から 3D モ
となる。本研究では、その情報取得の一環として 3D 点群
デルの自動作成が一定程度求められる。例として、前述の
データの取得を検討し、その取得機器の例を第 1 表に示
3D 点群データから 3D モデルへの自動変換が期待されてい
した。
るが、技術的に難易度が高い。
主な取得手段としては、レーザスキャナを使用したモー
ビルマッピングシステム(MMS)による 3D 点群データ
の面的取得が有効とされる。しかし、車両が進入不可能な
場所やレーザが到達しない領域など、情報取得が困難な箇
所が存在する。さらに、データ鮮度を維持するために定期
的なデータ取得が必要となる。そのため、第 3 図に示す例
第 1 表 設備や周辺環境の情報の取得機器の例
3D
•
(MMS)
•
LiDAR
MMS
LiDAR
•
(LiDAR
iPhone
第 4 図 3D モデルの作成・更新方法案
)
•
(
)
×
5
•
将来の展望
本研究では、建設業界の BIM/CIM 導入事例を参考に、
MMS
MMS
LiDAR
3D
3D
LiDAR
3D
電力業務の配電業務(建設工事)における BIM/CIM の導
入に必要な 3D データの取得・更新の技術課題を整理し
た。特に、3 次元点群データから配電設備を自動抽出し、
3D モデルに変換する技術開発が重要である。これらの課
題を克服し、適切なデータ取得と更新を実現することで、
MMS
BIM/CIM の導入による電力設備業務の効率化と高度化が期
待される。
3D
3
D
/
第 3 図 複数機器で構成される情報設備更新(案)
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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