技術開発ニュース No.168

- ページ: 98
-
研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
ドローン ×AI による鉄塔の錆判定技術
Rust Detection on Iron Towers Using UAVs and AI
ドローンによる鉄塔撮影画像から錆検出 & 進行度判定
執筆者
当社グループの送電鉄塔点検では、高所作業による目視確認から、ドローンの自動飛
行・撮影で取得した画像判定への置き換えが進んでいる。一方で大量の画像を確認する
手間が発生している課題に対して、点検者のサポートを行う様々な AI 技術の研究開発を
行っている。本稿ではその中でも錆検出と錆の進行度判定を行う技術について紹介する。
1
はじめに
検出前
先端技術研究所
情報技術グループ
追良瀬 利也
検出後
従来の送電鉄塔の点検業務では、鉄塔上での感電、高所
からの墜落といった災害リスクや、少子高齢化による点
検作業員確保が課題となっている。そこで、数年前よりド
ローンの自動飛行技術の研究開発を進め、簡単な操作で鉄
塔を自動撮影するドローンの自動飛行システム(1) を開発
第 1 図 錆検出結果イメージと進行度別割合表示例
してきた。当該システムの導入により、簡単な操作で高精
細な鉄塔の画像を取得し、鉄塔に昇らずとも画像を確認す
ることで外観点検の実施が可能となってきている。
一方で、自動撮影された鉄塔の画像は鉄塔 1 基あたり
3
鉄塔錆検出 AI の詳細
100 枚近い数となり、一枚一枚細部を確認する作業は、点
本項では、自動撮影された実際の鉄塔画像の例を用い
検者への一定の負担となっている。そこで、ドローンが取
て、鉄塔錆検出 AI の各ステップ詳細を説明していく。今回
得した画像に対し、AI 技術を活用した異常検出など点検者
説明に用いる鉄塔画像例を第 2 図に示す。
のサポートが実現出来れば、画像の確認時間の削減や見逃
し防止が図れ、一層の効率化が期待出来る。
こうした背景により様々な AI 技術の研究開発を進めてい
る。本稿では、その中でも鉄塔の錆判定を行う AI 技術につ
いて紹介していく。
2
鉄塔錆検出 AI の概要
今回紹介する鉄塔錆検出 AI は、前述のドローン自動撮影
による写真データをもとに、鉄塔の錆領域の検出から錆の
進行度合いの判定までを行うものである。点検者に発錆箇
所の視認性を高めるよう、錆の進行度に応じて、色別に表
示出来るようになっている。また錆の進行度別に割合表示
も可能であり、これらの結果から、鉄塔の錆判定のサポー
トや鉄塔の塗装計画策定に活用できる(第 1 図)。
鉄塔錆検出 AI は、大きく分けて以下に示す 3 つの処理で
成り立っている。
第 2 図 自動撮影による鉄塔画像例
(1) 鉄塔部材の抽出
最初の処理では、第 2 図のような鉄塔画像に対して、
ピクセル単位で背景を切抜く AI 技術を用いて、鉄塔の部
① 鉄塔部材の抽出
材(鉄骨部分)のみを抽出する処理を行っている。この
③ 錆進行度の判定
出することを予防する他、鉄塔の錆領域が全体の何割を
② 錆領域の抽出
それぞれの処理の詳細について、3 章にて説明する。
処理は、後に続く錆領域抽出の AI 処理で背景などを誤検
占めているか計算を行うための元データとして使うため
に行う。当該処理によって今回の画像例を対象に鉄塔部
材抽出を行った画像を第 3 図に示す。背景である田畑や
側溝などが除去されている様子が確認できる。
97
技術開発ニュース 2024.03/No.168
- ▲TOP