技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
第 3 図 鉄塔部材抽出結果
第 5 図 錆進行度判定結果
(2) 錆領域の抽出
この処理では、(1) 項の処理で得られた鉄塔部材のみ
の画像を用いて、大量の錆びた鉄塔画像をもとに学習さ
れた AI により錆領域の抽出を行う。当処理も鉄塔部材抽
出と同様、画像のピクセル単位で AI が錆領域と判断した
箇所を抽出できる。当該処理によって錆領域が抽出され
た画像を第 4 図に示す。鉄塔の中央左部を中心に、鉄塔
の錆びた箇所のみが抽出されている様子が確認できる。
第 6 図 処理結果を重ね合わせた例
4
おわりに
本稿では送電鉄塔の点検方法の変化を背景に、点検者の
サポートとして開発している AI 技術の一例である鉄塔錆検
出 AI について紹介した。本技術の今後の展開としては、
先行して導入されているドローンの自動飛行システムとの
第 4 図 錆領域抽出結果
(3) 錆進行度の判定
連携が挙げられる。自動撮影された鉄塔画像をシステムに
アップロードすると、AI 技術によって自動的に錆判定が行
われるようにする予定である。また、この錆検出 AI 技術を
最後に、錆抽出が行われた (2) 項の処理結果の画像をも
電柱や変電所設備など、送電鉄塔以外の設備へ応用してい
とに、錆の進行度を判定する。判定は主に画像の色味情報
くことも考えられる。さらに、錆以外の送電鉄塔の点検項
をもとに行われ、これまでの処理と同様、ピクセル単位で
目についても AI 技術で点検者のサポートが可能となるよ
錆箇所の錆進行度を 4 つに分割する。当該処理によって錆
う、引き続き研究開発を進めていく。
進行度判定が行われた画像を第 5 図に示す。錆抽出部分を
対象に、錆が進行している箇所(黒色に近い茶色の箇所)
は赤色に、錆があまり進行していない箇所(白~薄い茶色
の箇所)は黄色に近い色にそれぞれ判定されていることが
確認できる。当該処理結果をもとに、元の鉄塔画像と処理
結果を重ね合わせることによる点検者への視覚的な補助
5
参考文献
(1)“ ドローンを用いた設備点検サービス ”, サービス・ソリューション | 中部電
力 パ ワ ー グ リ ッ ド , https://powergrid.chuden.co.jp/se-rvice_solution/
dronetenken/, ( 参照 2024-01-15)
や、錆領域の割合計算を行う。鉄塔部材抽出後の画像に重
ね合わせた例を第 6 図に示す。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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