技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
BEV を活用したエネルギーマネジメントシス
テムの試験導入
Start of trial implementation of energy management system using BEV
カ ル チ ュ ア・ コ ン ビ ニ エ ン ス・ ク ラ ブ 株 式 会 社( 以 下、
「CCC」
)が運用する
「Karuizawa Commongrounds」
(2023 年 2 月 開業)にて、カーシェア用 BEV を蓄
電池として活用し、エネルギーマネジメント効果を最大化するとともに、コミュニティ内
で再生可能エネルギーをシェアするための EMS を試験的に導入し評価を開始した。本実
証は当社、中部電力ミライズ(株)
、および(株)デンソーの 3 社によって実施している。
1
実証目的
執筆者
先端技術応用研究所
EaaS グループ
藤田 美和子・遠藤 真紀・村川 敬祥
ら需要予測と PV 発電予測を行い翌日の BEV 充放電のポリ
シーを自動生成する。充放電ポリシーは車両の予約情報
(使用時間や予定走行距離)と合わせて、BEV の EMS に連
2050 年の脱炭素社会の実現を目指して、太陽光発電
携され、BEV の充放電計画を作成する。カーシェアの利便
(PV)を代表とする再生可能エネルギーの導入が拡大して
性を損なわないように、予約時間までに運行に必要な充電
いる。しかし、需要以上の PV があれば、発電抑制をする
率を確保する。中部電力 EMS では、これに加えて、空調
か、安価に逆潮流するしかなく、多くの場合は自家消費の
省エネ制御、逆潮流抑制やデマンド制御を行う。
範囲で PV 容量を決定することが多い。その場合は、全需
要に占める再エネ率は 30% 程度になることが多い。再エネ
率を高めるには、PV をできるだけ多く設置し、蓄電リソー
SH1
スを導入することが必要である。本実証では、未だ高価な
定置式蓄電池の替わりに、V2H 充放電器 2 式と BEV を 2 台
書店
SH2
用いた。災害時に BEV から建物へ放電するだけでなく、
SH3
余剰電力の吸収やデマンド制御を日常的に実施する。BEV
は、コミュニティのシェアカーとして利用されており、さ
SH4
らにコミュニティの環境負荷低減啓蒙の意図から、BEV の
充電は極力再エネを活用することが求められている。蓄電
池としての利用とシェアカーの利便性の両立、PV による
BEV 充電の優先とデマンド抑制の両立、という 2 つの課題
の解決・検証が本実証の目的である。
2
SH5
SH1~5:PV 5.8 kW
書店 :PV 11.6 kW
第 1 図 「Karuizawa Commongrounds」全景と PV 配置
施設概要
軽井沢町は涼しい気候が特徴であるが、年間日照時間
は 2,000 時間ほどあり東京と同程度である。 街区にはテ
ナ ン ト 店 舗 5 軒(SH1 ~ SH5) と 街 区 中 央 の 書 店 が あ
り、それぞれの屋根に PV が設置されており、総発電容量
は 40.6kW である。街区の全景を第 1 図に示す。街区は高
圧一括受電しており、PV は街区内でシェアされている。
V2H 充放電器は街区の端に 2 台設置され、1 台あたり 6kW
の充放電が可能である。蓄電リソースとなる BEV は 2 台配
備され、1 台あたり 70kWh の蓄電容量である。
3
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エネルギーマネジメントシステムの概要
第 2 図 BEV を活用したエネルギーマネジメントシステム
4
今後の予定
現在、EMS を改良しつつ、BEV 充電の再エネ率向上、
余 剰 発 生 回 避、 デ マ ン ド 制 御 に つ い て 実 証 し て い る。
2025 年 3 月まで実証を行い、2025 年 4 月から実運用を開
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の概要を第
始する予定である。今後は脱炭素を実現する本システムを
2 図に示す。中部電力 EMS は、気象情報と過去データか
関係者とともに提案していく。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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