技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
画像 AIによるコンプレッサ設備の運用最適への適用
Application of Image Classification AI to Optimal Operation of Compressors
膨大な設備稼働情報の時系列データに基づく運用良否判定の自動化を目指して
工場のコンプレッサ設備を効率よく運用するための設定チューニングには膨大な時系列
データ分析が求められる。本研究では画像 AI を用いて膨大なデータから稼働状態の判別
を行うとともに、正規表現を活用して設備全体での運用の良否を自動で判定する手法を見
出した。
執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
中村 剛
1
背景と目的
像 AI による判別では 1 秒単位の時系列情報の粒度を損な
わずに学習データを作成するため、消費電力の大きさを色
に変換し、1 秒間 =1 ピクセルとして、15 分間のデータを
コンプレッサ(圧縮空気製造設備)は工場における電
30x30 ピクセルに並べて学習用画像を生成した(第 1 図)。
力消費の約 20% を占める代表的なユーティリティ設備で
学習データは定速機用、インバータ機用にそれぞれクラス
あるが、省エネ・最適運用には操業状態に合わせた細かな
分類し、3 年分のデータから各1万枚の学習データを準備した
チューニングが必要である。長期間の設備計測を可能とす
(第1表)。こうした学習データをもとに Azure AutoMLで最
る近年の IoT・クラウド技術の進化を背景に、中部電力ミ
適と判断されたモデル(MobileNetV2)で学習を実行した。
ライズでも工場のお客さま向けにこうした設備の最適運用
第 1 表 学習画像データの例(定速機用)
サービスを行ってきた。
運用における改善ポイントを見出し最適な設定チューニ
ングを行うには、人手による膨大な稼働状態の時系列デー
タの分析が必要である。分析の省力化・自動化のため、こ
れまで様々な時系列予測モデル手法の検証も行ってきたも
のの、学習期間外の工場の操業形態の変化に予測を適用
し、運転良否を判断させることが困難であった。
今回、時系列データを画像に変換し、画像 AI を用いるこ
とにより、人間の判断に近い説明可能なプロセスで、操業
変化にも追従可能な判断処理を実現した。
2
時系列データからの学習・
推論用画像データ生成
3
画像 AIを用いた
コンプレッサ稼働状態の判別
各号機の 1 秒単位の時系列データから 1 分ごとに 15 分間
隔の画像を 1 枚ずつ作成し推論を実行し稼働状態の判定結
果に枠色を付与するとともに、判断結果をラベル付け(状
態継続時間により大・小文字で区別)を行った(第 2 表)。
第 2 表 推論結果のラベル付け(定速機)
第 1 図 時系列データの画像変換
通常、人間系で設備の稼働状況を把握する際には消費電
力の時系列データ(折れ線グラフ)を用いるが、今回の画
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
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