技術開発ニュース No.169

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- 研 究 成 果
拡張した上でモデルを訓練した場合とで比較を行った。
第 2 表 実験結果
学習対象のモデルは EfficientNetV2[3] と呼ばれるモデ
ルを用いており、画像生成時の主要な条件は表 1 に示す
通りである。また、②の比較対象のデータ拡張方法は図
2 の 4 種である。
第 1 表 画像生成時の主要条件
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おわりに
本稿では、限られたデータ環境下での AI 活用を促進する
ための、画像生成 AI を用いた異常画像の生成技術について
第 2 図 比較対象のデータ拡張方法 4 種(左からオリジナル・
ぼかし・上下反転・コントラスト変化・鮮鋭化)
紹介した。実験結果から、データが限られている際の AI の
学習過程において、当該手法が AI の精度向上に寄与するこ
とが確認出来た。この技術は、これまでデータの不足が原
(2) 実験結果
実験結果を表 2 に示す。表の各数字は各条件で学習さ
因で AI の活用が進まなかった領域に対して、AI の開発・テ
ストのためのデータを提供し、AI 技術の活用の幅を広げら
せたモデルの検証データにおける正解率を示している。
れる可能性がある。
表から、無作為抽出された画像枚数が 5, 10, 15 毎の場
今後は実際の電力設備の画像における実験や、画像判別
合提案手法が最も精度が高いことがわかる。また 20, 25
以外の物体検出やセグメンテーションを行う他の AI モデル
枚においては上下左右反転が最も精度が高く、提案手法
にも広く適用出来るよう、手法の改良や、更に効果的な画
は 2 番目に良い精度を示している。いずれの場合も、提
像を生成するための手法開発を予定している。こうした活
案手法は拡張を何も加えない場合に比べて画像判別精度
動を通じ、社内の AI 適用する業務を増やしていき、社内の
が向上しており、特にクラスごとのデータ数が少ない場
DX 化に貢献していきたい。
合において、他のデータ拡張手法に比べ良い結果を示し
ている。また、生成されたサンプルを図 3 に示す。元の
画像の特徴を保ったまま、オリジナル画像では特に異常
のない箇所が病変のように画像が変化していることが確
認できる。
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参考文献
1. Zhang, L., Rao, A., & Agrawala, M. (2023). Adding conditional control
to text-to-image diffusion models. In Proceedings of the IEEE/CVF
International Conference on Computer Vision (pp. 3836-3847).
2. Kaggle. Tomato leaf disease detection, https://www.kaggle.com/
datasets/kaustubhb999/tomatoleaf, 2025-01-07 アクセス .
3. Tan, M., & Le, Q. (2021, July). Efficientnetv2: Smaller models and faster
training. In International conference on machine learning (pp. 1009610106). PMLR.
4. Stability-AI. Stable Diffusion Public Release, https://stability.ai/news/
stable-diffusion-public-release, 2025-01-07 アクセス .
第 3 図 生成画像サンプル(左:オリジナル、右:生成後)
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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