技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
人流データ等を利用した空調換気制御システムの開発
商業施設の既存の安全カメラを利用して、フロア人数を把握・予測することで適正な換
気量に制御する空調制御システムを試作し実証試験を行った。換気量を低減した結果、夏
期の店内の温度・湿度を低下させることができ、制御対象の空調制御システムの省エネに
加えて、冷蔵ショーケース室外機の消費電力削減にもつながった。本研究の分析について
は愛知工業大学との共同研究にて実施した。
先端技術応用研究所
EaaS グループ
藤田 美和子
先端技術ソリューショングループ
中山 浩
Development of air conditioning and ventilation control system using data on the flow of people, etc.
執筆者
1
背景と目的
室内機
換気給気口
O11
商業施設ではエネルギー費用の削減や地球環境保全のた
O21
O22
O23
O24
O12
めの省エネルギーが求められている。また、空調負荷に大
O13
きな影響を与える換気量については、コロナ禍において増
大したが、現在では省エネを図るために必要十分な換気量
O14
に抑制するニーズが高くなっている。換気量制御には、給
排気ファンの還気の CO2 センサによる制御が一般的である
1階
が、還気位置は店舗の隅に偏っていることが多く、必ずし
第 1 図 各階空調・換気設備平面図
も店舗の代表 CO2 濃度ではない。そこで、本研究では、店
舗内の安全カメラによって把握された人流データを利用・
予測し、必要換気量を計算して換気量制御を行った。ま
た、室内負荷を処理する個別分散空調については、天気予
報と連動させた省エネ運用を行った。
2
対象建物と設備概要
2.1 対象建物概要
2階
第 1 表 空調設備能力
記号
階数
2
O21,23,24
2
2
2
O22
2
2
型式
マルチエアコン
マルチエアコン
マルチエアコン
マルチエアコン
マルチエアコン
マルチエアコン
室外機
室内機
室外機
室内機
室内機
室内機
冷房能力 暖房能力
台数
100.0kW 112.0kW 1 台 ×3 系統
16.0kW
18.0kW 6 台 ×3 系統
122.0kW 140.0kW
1台
16.0kW
18.0kW
6台
14.0kW
16.0kW
1台
11.2kW
12.5kW
1台
第 2 表 外調機仕様
型式
空冷ヒートポンプ式
冷房能力
立形ルーフトップ外調機
94.5kW
暖房能力
加湿量
飯田」である。地上 2階建てであり、敷地面積は13,925㎡、
番号
日付
設定
延べ床面積は9,550㎡、売場面積は6,300㎡、建築面積は
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
2022/8/25
2022/9/21
2023/8/28
2023/9/4
2023/9/3
2023/9/20
2023/9/30
冷却 100%風量運転
冷却 100%風量運転 ( 昼 3h 停止 )
送風 100%風量運転
平常日 ( 平日 ) 制御
平常日 ( 休日 ) 制御
特売日 ( 平日 ) 制御
特売日 ( 休日 ) 制御
2.2 対象建物設備概要
第 1 図に室内機、換気給気口の配置と室外機の対応エ
リアを示す。第 1 図に対応する 2 階の空調設備能力を第 1
表、外調機仕様を第 2 表に示す。対象建物はビルマルチエ
アコンで空調しており、系統数は 1 階、2 階ともに 4 系統
台数
2台
第 3 表 外調機設定別比較項目
対象建物は、愛知県名古屋市北区に建設された「そよら上
5,678㎡である。飲食店や診療所等も入居している。
外気量
78.1kW 41.9Kg/h 13,200CMH
日積算消費電力量
(kWh)
287
94
112
17
20
18
25
3.2 ビルマルチエアコンの制御内容
日別最高外気温をパラメータに、各室外機毎の電流値と
である。換気は、1 階は外調機からの給気と生外気の給気
定格電流から計算した負荷率を1時間毎に散布図、回帰式を
があり、2 階は生外気のみである。
作成し、傾向を確認した。最高外気温が高くなるにつれ負荷
率が上昇する傾向が見られたため、回帰式を使用し、最高外
3
夏期試験の内容と結果
3.1 外調機の制御内容
休日とお客様感謝デーに人流が特に多く、他の特売日
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気温に対する負荷率を算出した。その負荷率 ×0.6 から算出
した値が 40%未満であれば 40%制限、40%以上70%未
満であれば 70%制限、70%以上は100%制限とした。
3.3 外調機制御結果
4 つの制御 ptn を実行した場合の消費電力削減効果を検
は平常日と比べて顕著な変化はないため、傾向が異なる 4
討する。第 3 表に外調機設定別比較項目を示す。①~③は
ケース ( 以降、case) の時間別人流変化により外調機の制
制御前、④~⑦は制御後である。また①と②は、2022 年
御パターン ( 以降、ptn) を決定した。
の平常日 ( 平日)である。第 2 図の左、右に制御前、制御
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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