技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
AI 総合活用システムの開発
Development of AI Total Utilization System
~過去に開発した AI リソースの共有と利活用に関する取り組み~
近年、様々な分野で AI が使われるようになり、それぞれの部門・部署で多種多様な活
用を検討してきた。しかし、AI は作成しただけでは使用できず、試行するだけでもプロ
グラムやシステムが必要となり、検証の結果、そのまま使われなくなるケースが多々ある。
そこで、作成した AI をいつでも使える状態で記録することで、検証した結果を有効利
用し、手軽に社用パソコンやスマホで試せるシステムを構築した。
執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
岡本 雄司
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背景
セキュリティと可用性
これまで、様々な AI 開発における取り組みを行ってきた
データを取り扱う場合、セキュリティやデータ管理の観点
用のための開発や普及活動を行う必要がある。AI を活用し
にWebアプリケーションを持つことは非効率で現実的ではな
が、実際に現場で活用するためには、AI を開発した後も活
たシステム開発では、基本的に AI に入力するデータが必要
である場合が多く、データ管理やセキュリティを考慮した
開発を行う必要がある。そのため、開発してから現場で活
用するまで多くの時間がかかってしまい、現場導入のタイ
ミングを逃してしまうケースが存在した。
また、過去の AI の取り組みについて使える形で残ってい
ないため、流用することができず、AI の活用のためのシス
テム開発も一から行う必要があった。
そこで、本研究では過去に検証・開発を行った AI をいつ
でも使える形で記録し、共有・有効利用するための仕組み
を提案し、社用パソコンやスマホから利用できるシステム
の開発を行った。
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AIを使える形で記録するための仕組み
から会社や組織ごとに分ける必要がある。一方で、組織ごと
い。そこで、Azure にアクセスするためのユーザ認証に加え、
ユーザグループごとにデータを共有しつつ、同様のWebアプ
リケーションを利用できる認証の仕組みを提案した。この手
法を利用すれば各ユーザは同じ画面で同様の操作を行ってい
るように見えるが、自分の権限のあるデータストレージのみア
クセス可能となる。さらに、
いずれのデータストレージに
もアクセス権限がないユーザ
はシステム自体にアクセスで
きず、 ユーザ 認 証 機 能とな
る。これにより組織レベルの
データ管理を可能とした。
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第 2 図 ユーザ認証および
データアクセスの仕組み
試験運用
AI の取り組みを活用できる形で残すためには、複数の AI
試験運用に伴い、より厳密な 3 社間のデータ管理を行う
を管理・制約する機能、それらをまとめる UI 機能が必要で
分割した。これに加え、ユーザグループを組織単位にするこ
を記録・実行する機能、ユーザ(グループ)ごとにデータ
ある。AI の活用はスケール変更可能な AI サーバで構築し、
Web アプリケーションと AI サーバは独立させる。また、
データストレージについても同様に独立させ、ユーザが
データや AI サーバを直接操作できないように構成した。こ
れにより、セキュリティを保ちつつ AI サーバやデータスト
レージの拡張性を確保することができる。
AI は登録するごとに一
覧に並び、利用可能にな
る。AI の利用結果は汎用
出力画面をカスタマイズ
数の部署で試行できるかを評価
するため、実際の部署やグルー
プ単位での運用を試験した。
第 3 図にシステムの AI 選択画
面を示す。
第 3 図 システム画面例
まとめ
AI を使用できる形で記録し、それをユーザが手軽に使用で
みカスタマイズすればよい
おくことができる。
た、本試験運用では、AIを記録できるか、記録した AIを複
試験運用を行った結果、本システムを通し、取り組んだ
したい場合は出力画面の
用できる形で記録にして
とで、組織レベルでデータが管理できることを確認した。ま
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的な出力画面を利用し、
ため、登録しておけば使
ため、環境をより高レベルであるサブスクリプションレベルで
第 1 図 システム構成
きることが確認できた。今後も研究所を始めとした様々な
AI の取り組みを記録していくことで、取り組んだ AI を資産
化し、DX の推進に繋げていく。
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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