技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
AI による広域 3D 映像生成および活用技術
AI-based Wide-Area 3D Imaging Generation and Utilization Technology
~低コストで高クオリティな 3D 映像作成と活用~
AI を活用した新たな 3D 映像生成技術である「3D Gaussian Splatting」について、
広域エリアでの利用を想定した検証を行った。加えて、作成した 3 次元映像をデジタルツ
インで活用できるか試行し、有効性の評価および実用可能性を検証した。
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背景
近年、デジタルツインやメタバースといった次世代技術
の登場もあり、3D テクノロジーの注目が高くなってきて
いる。しかし、こうした技術を業務で活用するためには、
リアルで鮮明な 3D 映像が必要であり、その作成の難しさ
から、指標にはなるが現実の代替として活用するためには
膨大なコストが必要であった。
こうした問題の中、専用機器を使わない 3D 生成手法と
してフォトグラメトリと呼ばれる技術が存在する。この手法
は、一般のカメラ写真や動画から3D 映像を作成するため、
LiDARのような専用機器を使用せず作成が可能でコストを抑
えることができる。しかし、生成処理に多くの時間を要する
ため、広域のエリアを3D 化することは現実的ではなかった。
そんな中、ここ数年急激に発展している AI 技術を活用
したフォトグラメトリが登場し、NeRF や 3D Gaussian
Splatting といった新たな 3D 映像手
法が毎年のように発表されている。
これらの手法はこれまでフォトグラ
メトリでは難しかった高画質で細か
い描画が可能となっており、3D 点
群 や メ ッ シ ュ 構 造 に 比 べ、 風 景 や
自 然 現 象 の 描 画 に 優 れ て い る。 ま
た、3D Gaussian Splatting では、 第 1 図 3D Gaussian
3D 生成および 3D の描画処理にかか
Splatting の実行例
る時間を大幅に短縮でき、これまで
は困難であった鮮明かつ広域での活用が可能となった。
本研究では、この新たな AI を活用した 3D 映像技術であ
る 3D Gaussian Splatting について、実務レベルでの実用
が可能か検討評価し、簡潔で高精度な 3D 映像作成および
その活用について手法の確立を目指す。
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3D Gaussian Splatting
3D Gaussian Splatting は、2023 年 8 月に発表された
※1
複 数 の 写 真 か ら 3D 映 像
を生成する技術である。
当手法は、三角形や点群
で は な く、3 次 元 の ガ ウ ス
分 布 に よ り 3D が 表 現 さ れ
る。ガウス分布は中心から
離れるほど透明になるた
第 2 図 生成の流れ
め、高密度にすれば細かい
形状まで表現できる。また、ガウス分布による表現は見る
角度により色が変化するといった光の反射を近似できるた
め、よりリアルな色彩についても表現できる。
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
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執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
岡本 雄司
広域 3D 映像生成とデジタルツイン活用
における検討評価
今回、この 3D Gaussian Splatting を用いて、東京ドー
ム約 1.5 個分の広さのある中部電力技術開発本部の敷地
内を 3D 映像で再現する検証を行った。使用する写真はド
ローンによって撮影したものを用いる。空撮エリアおよび
3D 生成結果を第 3,4 図に示す。
第 3 図 本検証のドローン空撮エリア(左)と 3D 作成結果(右)
第 4 図 敷地内における 3D 作成結果例(高画質版)
撮影した写真の位置や枚数により精度を調整でき、高画
質にすれば地面や壁の傷やひびも認識できることが分かった。
加えて、生成した 3D 映像を活用できるか検証するため、
リアルタイムで取得している電力データと連携したデジタル
ツイン適用の検証を行った。試行した例を第 5 図に示す。
第 5 図 デジタルツインに適用した例
生成した 3D の描画は GPU 搭載の PC が必要であるが、
3D 映像を 3D オブジェクトやデータと共存させることがで
き、ドローンのように飛行したり、地上を歩いたりできる
ことを確認した。
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まとめ
本研究では、3D Gaussian Splatting について、生成か
ら活用までのベース評価を行い、本手法が実用に耐えうるも
のであることを確認した。今後、本手法の巡視や点検等の業
務利用を想定し、自動化や簡潔化といった改良を行っていく。
※ 1 3D Gaussian Splatting
for Real-Time Radiance Field Rendering (SIGGRAPH 2023)
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