技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
れを毎回繰り返すことでユーザとの対話を行う。つまり、
た回答を行っている。また、第 5 図では、第 4 図の会話に
質問と一緒にプロンプトとして生成 AI に与える検索結果
継続して、報告書の内容を問う質問を行い、データソース
の情報の品質が、回答の質と密接に関係することとなる。
の検索を経て生成 AI が回答している。いずれの処理も、会
こうした仕組み上、ユーザとの会話の中で暗黙的に示され
話履歴とユーザからの質問をもとに、生成 AI が回答に必要
る「その研究」や「この報告書」といった文脈依存の情報
な情報を整理し、内部的に処理を分岐した上で回答処理が
については、必要な内容を検索・回答させることが難しい
なされていることが確認できる。
場合がある。また、(1)で追加した表に関する回答用の処
理が加わったことで、ユーザからの質問への回答に、どの
ような情報が必要なのかを一度判断して後続の処理を適切
に選択する必要がある。そこで、この処理に生成 AI を用い
た。処理の概要を第 3 図に示す。質問から回答までの処理
の流れは以下の通りである。
第 4 図 報告書検索システム画面その 1
(社内情報につき部分的に黒塗り処理)
第 3 図 ユーザからの質問に基づき後続処理を選択する仕組みの概要
( ア ) ユーザからの質問
ユーザからのチャット形式の質問を受け付ける。
( イ ) 生成 AI(エージェント)による情報処理
第 5 図 報告書検索システム画面その 2
(社内情報につき部分的に黒塗り処理)
会話の流れと(ア)の質問をもとに、ユーザへの回答に
必要な情報が何なのかを生成 AI に回答させる。
( ウ ) 生成 AI の回答をもとにした処理分岐
(イ)の回答結果をもとに、どの後続の処理が必要か、
処理を分岐する。例えば生成 AI が表データによる回答が
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おわりに
必要と回答したら表探索・回答を行う後続処理を、通常の
本稿では、近年活用が進む RAG がもつ課題や苦手な領
データソースからの検索・回答が必要と回答したら、その
域の一部について、その対策を検討し試作した研究報告書
後続処理を行うように、処理プログラムを分岐する。
検索システムについて紹介した。今回紹介した以外にも、
( エ ) 選択された後続処理に基づく生成 AI 回答
RAG 技術はまだまだ発展途上であり、さらに回答精度を
(ウ)で選択された処理に基づき、情報を得た後生成 AI
による回答生成を行う。
このような処理を内部的に行い、質問 - 回答を繰り返す
ことでユーザからは特に意識することなく、必要な情報を
もとに回答してくれる RAG システムが実現できる。
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研究報告書検索システム画面
本章では実際の報告書検索システムの画面を紹介する。
第 4 図では、ユーザからの質問がリストからの回答を問う
高めるため、検索対象のデータ保持・生成 AI への提供方法
の改善 [1] など様々な研究開発が盛んに行われている。今
後も同技術を中心に最新技術をキャッチアップし検証を進
め、社内情報探索の高度化や生成 AI による更なる業務効率
化に貢献していきたい。
5
参考文献
1. Hu, Y., Lei, Z., Zhang, Z., Pan, B., Ling, C., & Zhao, L. (2024).
GRAG: Graph Retrieval-Augmented Generation. arXiv preprint
arXiv:2405.16506.
ものであることから、2 章で紹介した表探索処理を組合せ
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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