技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
変電所制御用蓄電池長寿命化に関する研究
Study on Prolonging Lifespan of Battery for Substation
充放電反応抑制装置の開発
執筆者
エンジニアリングセンター
技術開発グループ
竹中 裕亮
送変電部変電グループ
愛知 慎也
若経年の変電所制御用蓄電池において、電圧・容量低下等障害が断続的に発生してお
り、これらは直流回路への交流重畳による蓄電池電極表面での充放電反応が一因である
と考えられる。そこで本研究では、充放電反応抑制による蓄電池の長寿命化について検
証した。
1
経緯
変電所にある遮断器などの機器およびこれらの制御を行
た直流電流が供給されることで、第 1 図に示すように蓄電
池側で正負交番が発生し、充放電反応が短期間で繰り返さ
れる。この正負交番は全ての変電所で発生しており、交流
重畳深度は設備構成によって異なる。
う盤等の制御回路には直流が使用されており、直流電源で
ある充電装置が制御用蓄電池(CS 形鉛蓄電池)および各
AC
DC
種負荷へ接続した構成となっている。このうち蓄電池は充
電装置から電源供給できない場合のバックアップ用直流
/
電源として接続されている。鉛蓄電池は一般的に期待寿命
14 年と⾔われているもの、若経年の蓄電池で容量低下や電
圧・比重低下といった障害(2016 年 幸田変電所蓄電池
DC
60×3×2 360Hz
(
120Hz)
120Hz
DC
経年 8 年)が断続的に発生しており、遮断器開閉不応動な
Pb
どの原因になっている。2016 年に障害の発生した蓄電池
いることが確認された。この剥離片によって蓄電池内部で
蓄電池の陽極剥離現象は、充電装置から出力される交流重
畳した直流電流によって、蓄電池側で充電/放電サイクル
4H
PbSO4 2e
SO42
2e
PbSO4
2H2O
第 1 図 変電所における制御用直流回路の構成および
充放電反応発生の概要
について解体調査を実施した際、陽極材の剥離が発生して
微短絡が発生し、電圧および容量低下に至っている。この
SO42
PbO2
3
充放電反応による蓄電池劣化(陽極剥離)
が繰り返されることが一因であることがわかっている [1]。
蓄電池で起こる化学反応は以下の通りであり、充電装置
そこで本研究では、蓄電池陽極剥離現象の一因である充放
からの交流重畳により、この反応は短期間で繰り返されて
電反応を抑制することによる蓄電池長寿命化について検討
いる。
した。
陰極:( 充電 )Pb + SO42 -
⇔ ( 放電 )PbSO4 + 2e-
陽極:( 充電 )PbO2 + 4H + SO4 + 2e ⇔ ( 放電 )PbSO4 + 2H2O
+
2-
-
この充放電反応により、陽極において急激な体積変化
変電所における直流回路および蓄電池に
おける充放電反応について
(膨張・伸縮)が発生する。これにより陽極表面と酸化被
第 1 図に変電所における制御用直流回路の構成および直
いくことで、第 2 図のような剥離片が生成・脱落すると考
流回路への交流重畳について概要を示す。充電装置では交
えられる。したがって充電装置からの交流重畳深度が大き
流電流・電圧を、装置内にある整流器により直流電流・
くなると、陽極の体積変化も大きくなり、剥離が促進され
電圧に変換している。整流器通過後、平滑コイルおよび平
ると考えられる [2]。
2
膜との間にき裂が広がり、酸化被膜との密着性が失われて
滑コンデンサにより平滑化し、蓄電池の充電および各種負
荷(遮断器等他機器、制御・保護盤等)へ供給を行ってい
る。この充電装置からの直流出力は完全に平滑されている
わけではなく、直流にわずかな交流が重畳した電流波形と
なっている。変電所における蓄電池は、充電装置から電源
供給できない場合のバックアップ電源としての機能がある
ことから、充電回路と負荷が常に並列接続された状態で充
電されており、充電装置電圧≒蓄電池電圧の状態が保たれ
ている。これを充電装置から蓄電池への浮動充電と呼ぶ。
この浮動充電中に、充電装置から蓄電池へ交流重畳され
技術開発ニュース 2024.03/No.168
第 2 図 鉛蓄電池陽極剥離について
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