技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
以上より、蓄電池劣化プロセスは以下のとおりである。
①充電装置から交流重畳した浮動充電電流を蓄電池に供給
②充放電サイクルによる電極材が体積変化(膨張・収縮)
5
検証試験による充放電反応抑制装置適用検討
③酸化被膜の密着性が失われ、剥離が促進
充放電反応抑制装置挿入による他機器(遮断器など)へ
④剥離片により極間を電気的に短絡
の影響について、当社訓練設備にてフィールド試験を実施
⑤セルの電圧低下
した。第 5 図に蓄電池単独運転時(充電装置からの電源供
⑥電圧低下故障発生(蓄電池劣化)
給不可時)における負荷電流(遮断器 5 台同時遮断時の制
したがって充電装置からの交流重畳深度を抑制すること
御電流)波形および本装置両端電圧を示す。第 5 図より、
で、充放電反応を抑制し、蓄電池を長寿命化することがで
負荷電流に比べ、蓄電池からの供給電流の立ち上がりが遅
きると考えられる 。
れている様相が確認できる。これは、挿入した本装置のリ
[1]
アクトル特性であると考えられる。
4
以上の結果より、充電装置-蓄電池間に本装置を挿入す
充放電反応抑制装置について
ることで、以下 2 点を確認できた。
①充電装置からの電流波形のうち交流重畳深度を抑制し、
本研究では、充電装置と蓄電池の間にリアクトルを直列
挿入することで、充電装置からの電流波形のうち交流重畳
深度を抑制し、蓄電池における充放電反応の抑制について
充放電反応を抑制することが可能
②蓄電池単独運転時における蓄電池からの供給電流は、立
ち上がり遅れが発生
検討した。第 3 図に試作した充放電反応抑制装置を示す。
ただし、②については、他機器との連携を考慮し、適用
外形:W 250 mm × D 200mm ×H 250 mm、重量:約
可否を検討する必要がある。(故障遮断遅れ裕度のない変
10 kg となっており、小型であるため容易に可搬および設
電所への適用困難)
置可能である。また、本装置は外付けにて使用可能である
ため、製造メーカによる充電装置内部改造あるいは蓄電池
改造が不要である。
第 4 図に、充放電反応抑制装置のリプル電流低減効果を
示す。充電装置からの電流波形のうち主交流周波数成分であ
る 360 Hzにおいて、1 mH 以上で 90% 以上のリプル電流低
減効果があることを確認できた。また実機適用時(当社訓練
設備)についても同様にリプル低減効果を確認できた。
第 5 図 蓄電池単独運転時における遮断器 5 台同時遮断時の
電流波形(充放電反応抑制装置:32 mH)
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蓄電池寿命年数について定量的な評価を行うため、交流
(a) 外観 (b) 内部
第 3 図 充放電反応抑制装置(1 ~ 32 mH)
成分のリプル-寿命の相関関係を実験的に検証し、充放電
反応抑制装置を実運用設備へ適用することによる費用対効
果の算出および最適なリアクトル容量の選定を実施してい
100.0
Ripple current reduction rate[%]
今後の展望
く予定である。
95.0
90.0
85.0
[1] 電力技術研究所「変電所鉛蓄電池陽極はく離現象に関する研究」(2021 年)
[2] 電池工業会「SBA R 0302 据置鉛蓄電池陽極のはく離現象について」
(1996
年)
180 Hz
80.0
360 Hz
75.0
70.0
参考文献
120 Hz
0
5
10
15
20
Inductance[mH]
25
30
35
第 4 図 充放電反応抑制装置のリプル電流低減効果
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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