技術開発ニュース No.168

- ページ: 12
-
研 究 成 果
Results of Research Activities
真空バルブ式 SVR の劣化調査
Investigation into the Degradation of「Vacuum valve type SVR」
加速劣化試験による耐久性能の評価
2007 年から採用された真空バルブ式自動電圧調整器(以下、真空バルブ式 SVR とい
う)は、密閉されたバルブの中に電気接点があり、絶縁油が接点アークの影響を受けず劣
化し難いため、長寿命化が期待されていた。今回、撤去品ならびに加速劣化品を調査した
結果、現行のメンテナンス周期(20 万回動作毎)を更に延伸化できることがわかった。
執筆者
電力技術研究所
電力設備グループ
伏屋 貴文
1
背景および目的
旧型 SVR は 10 万回動作毎にメンテナンスをおこなって
いたが、真空バルブ式 SVR は 20 万回動作毎にメンテナン
スする運用を採用している。今回、更なるメンテナンス費
配電線の電圧は、負荷電流による線路電圧降下が発生す
用の削減を目的に、真空バルブ式 SVR の現場撤去品ならび
るため供給地点、時間帯によって変動する。自動電圧調整
に加速劣化品を調査し、20 万回以上動作しても問題ないか
器(Step Voltage Regulator 以下、SVR という)は、
検証した。
配電線の電圧を規定範囲内に収めることを目的として、
6.6kV 高圧配電線路の途中に設置し、自動で電圧を調整す
る変圧器である(第 1 図)。
2
動作回数によって劣化が進展する部位
経年数ならびに動作回数によって進展する劣化部位を第
1 表のとおり分類した。
第 1 表 劣化部位の分類
大分類
第 1 図 SVR の外観
小分類
経年数と
相関がある
SVR(三相昇降圧)には単相変圧器が 3 台(三相分)内
蔵され、これらの変圧タップを無停電で切り替えること
前タップの電気回路に次タップの電気回路をバイパス接続
した後、前のタップの電気回路を開放する仕組みがあり、
電気接続・開放箇所には接点アークが発生する。旧型 SVR
錆劣化
・外箱
吸湿劣化
・パッキン
・絶縁油,絶縁紙,ブッシ
ングカバー,その他絶縁物
紫外線劣化
・ブッシングカバー
応力・振動劣化
・ナット(緩み)
酸化劣化
・絶縁油,絶縁紙
熱・冷熱劣化
で、電圧を昇圧・降圧する。無停電で切り替えるために、
動作回数と
相関がある
劣化進展する部位
・絶縁紙
・コンデンサなど電子部品
(制御部)
機 械 摩 耗, 金 属 摩
耗粉の影響
・絶縁油
・駆動部(歯車,ばね)
接点アークの影響
・真空バルブ内部の電極
は、この接続・開放を絶縁油中でおこなうため、接点アー
絶縁油、駆動部および真空バルブ内部の電極の劣化進展
クによって絶縁油が汚損し、有害な可燃性ガスが発生する
は動作回数と相関関係があると考え、それらについて調査
弱点があった。そのため、接続・開放の動作回数が増える
することとした。
と絶縁油を取り替える等のメンテナンスが必要だった。そ
こで、メンテナンス費用を削減することを目的に、絶縁油
と分離された真空バルブ中で接続・開放をおこなう真空バ
ルブ式 SVR を導入した(第 2 図)。
3
絶縁油・駆動部の調査結果
動作回数が 1.7 万回~ 24 万回の合計 30 台の現場撤去品
から絶縁油を採取し、油中ガス分析した(第 3 図)。絶縁油
に含まれる可燃性ガス総量は、判定基準値(電気共同研究
65 巻 1 号に定める要注意レベル:500)を大きく下回って
いた。また、動作回数との可燃性ガス総量に明確な相関は
見られなかった。
第 2 図 真空バルブ式 SVR 内部 と 真空バルブの外観・構造
11
技術開発ニュース 2024.03/No.168
- ▲TOP