技術開発ニュース No.168

- ページ: 13
-
研 究 成 果
第 3 図 油中ガス分析の結果
駆動部が動作する際の金属摩耗粉によってスラッジが発
第 5 図 接点アークの痕跡
生し、これが絶縁油に混合されると耐電圧性能が低下する
次に、別の現場撤去品(動作回数が 9.3 万回~ 17 万回の
可能性がある。そこで、採取した絶縁油の絶縁破壊電圧を
合計 3 台)に SVR 定格電流を通電させ、接点アークが最大
測定した(第 4 図)。全て判定基準値(30kV/2.5mm)を
となる条件おいて動作回数が累計 40 万回になるまで加速
上回っていた。また、動作回数との絶縁破壊電圧にも明確
劣化試験をおこなった。これらの現場撤去品の真空バルブ
な相関は見られなかった。
(合計 9 本)の消耗量を測定し、動作回数との相関関係を検
証した。動作回数 40 万回時の消耗量が最大になった現場
撤去品(動作回数 9.3 万回 5,000kVA)の試験結果を第
6 図に示す。
第 4 図 絶縁破壊電圧の測定結果
また、現場撤去品の駆動部の動作状態についても調査し
た結果、動作性能に異常はなかった。
第 6 図 加速劣化試験の結果
4
真空バルブの調査結果
40 万 回 ま で 動 作 さ せ て も 消 耗 量 が 判 定 基 準 値(2.0
㎜)を上回ることはなかった。動作回数と消耗量は比例
真空バルブ内部の電極接点が接点アークによって影響を
関係にあると仮定した場合、今回の試験条件において進
受けると、接点部分が消耗する。これが進展すると、可動
展速度の最大は 22.3 μ m/ 万回(真空バルブ A)であっ
電極を投入しても接続状態にならない不具合状態となる。
た。この速度で新品から 40 万回動作させた場合の消耗量
そこで、動作回数が 16.4 万回~ 17.5 万回の合計 3 台の現
は 0.892mm と算出でき、これは判定基準値以下である。
場撤去品から 25 本の真空バルブを取り出し、それぞれの
また、加速劣化試験後、真空バルブは全て、中部電力パ
消耗量を測定した結果、接点箇所に接点アークの痕跡が見
ワーグリッドの規格で定める絶縁性能(開放状態で電極間
られた(第 5 図)。しかし、消耗量は極めて微量であり、製
AC3kV/1 分、±IMP10kV)を満足しており、駆動部の動
造上の公差範囲内を上回るものはなかった。接点アークは
作状態にも異常はなかった。
電極間を流れた通電電流の大きさと正の相関があるため、
現場撤去品が設置された箇所には、大きな負荷電流が流れ
ていなかったと考えられる。
5
今後の展開
今回の調査によって、現行のメンテナンス周期(動作回
数 20 万回毎)を延伸化しても問題ないことが示された。
この結果を、新たなメンテナンス基準に反映する。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
12
- ▲TOP