技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
誤切断防止用リングアタッチメント型ケーブルカッターの開発
Development of Ring Attachment Type Cable Cutter for Preventing Accidental Disconnection
撤去制御ケーブルの誤切断防止対策に関する概念実証研究より
変電所をはじめ発電所や工場プラントでは、設備取替工事等で保護制御盤と電力用機器
を接続する制御ケーブル(CVV, CVV-S)を撤去する作業において、作業員が誤って運
転中ケーブルを切断してしまう誤切断事象が発生している。そのため変電部門では、制御
ケーブルは末端からリングを通して同一線であることを確認したうえで切断するルールと
なっているが、それでも誤切断が発生するリスクがある。
そこで、ルールを守りつつ安全で確実に使うことができる新たな工具を開発した。
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執筆者
電力技術研究所
電力設備グループ
杉本 敏文
現場の実態調査
制御ケーブルの撤去作業の様子を第 1 図に示す。
① 大口径品
第 2 図 リング
2
② 小型品
第 3 図 現状のカッター
リングアタッチメント型ハンドカッターの
考案
現場の実態調査にて判明したリスクを解消するため、制
第 1 図 制御ケーブル撤去作業
御ケーブルにリングを通して、器具を入れ替えることな
く、ケーブルを包み込むようにその場でそのまま切断でき
制御ケーブルの撤去作業では、撤去するケーブルを先端
るハンドカッターを考案した。なお、リング単体としても
からたどり、たるませることまではかろうじて可能という
使いやすくなるよう、カッター刃内蔵のリングをヘッド部
状況であるが、制御ケーブルを全線引き抜くことは困難な
として脱着できる構造としたことから「リングアタッチメ
ため、途中切断が効率的であるといえる。しかし、この途
ント型ハンドカッター」と呼ぶこととした。
中切断においては過去から誤切断が発生しており、現状で
まず、大径ケーブルを手動・電動油圧の両方で切断でき
は、監督者立会いのもと、末端からリング(第 2 図参照)
る「スタンダードタイプ」(第 4 図参照)を設計した。
を通して同一線であることを確認したうえで黄色テープの
目印を付けて切断することをルールとしている。
こうしたルールが適用されているものの、それでも誤切
断のリスクは無くなっていない。また、監督者立会いを要
するため現場の人手不足にもつながっている。
このリスクの要因を現場の実態から考察すると、以下の
2 つが考えられた。
(1)リングを通したケーブルとは別のケーブルを切断
リングとは別工具であるカッターを用いているため、
誤って別のケーブルに挿入して切断してしまう。
(2)隣のケーブルも巻き込んで切断
制御ケーブルの切断は、主に市販の大口径カッター(第
3 図①参照)で実施しているため、カッターの刃先が大き
第 4 図 リングアタッチメント型ハンドカッター「スタンダードタイプ」
く、隣の制御ケーブルを巻き込んで切断してしまう。な
リング機能とカッター刃は同一品のカッター刃内蔵のリ
お、小型ハンドカッター(第 3 図②参照)もあるが、多数
ングとし、重量を 5kg 以下の軽量品とした。そして、リン
回の素早い操作を要するラチェット方式のため扱いづら
グとして使用する際にはカッター刃が出ないような安全上
く、実際はあまり使われていない。
の配慮を徹底した。スタンダードタイプのカッター刃内蔵
のリングの構造を第 5 図に示す。カッター刃内蔵のリング
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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