技術開発ニュース No.168

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- Results of Research Activities
分割式特殊柱の開発
Development of Split Type Special Pole
コストダウン、施工効率向上、お客さまニーズの達成、環境負荷低減の実現
執筆者
近年の電力業界を取り巻く環境変化を踏まえ、さらなるコストダウン、施工効率向上、お
客さまニーズの達成、環境負荷低減が求められている。一方で、従来の継台式特殊柱はそ
の構造から高コスト、用地交渉難航、リユース不可といった課題があった。このため、従来
品と同等の長期信頼性確保を前提に、これらの課題を解決した分割式特殊柱を開発した。
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エンジニアリングセンター
用品グループ
小森 隼登
2 種類に大別される。それぞれの接続方式の運搬費・製造
背景および目的
費・工期を比較検討し、最もメリットのあるフランジ式を
採用することとした(第 2 表)。
配電部門では、高圧電線を長径間施設する箇所など長尺
第 2 表 接続方式の比較
で高強度な電柱が必要な箇所を対象に全長 18m 以上での
項目
施設が可能な継台式特殊柱を施設してきた。1 本柱で製造
継台式
フランジ式
鋼管式
可能な最大長は 17m 以下のため、18m 以上の継台式特殊
柱では継台に上部柱を建込することによる接続方法を採用
してきた。この継台式特殊柱は、直径 600m の継台の中に
接続イメージ
モルタルを充填した上で 16m の 1 本柱を建込する構造かつ
ラインアップが多数のため、
「製造費が高い」、「地際径が
工費が高い」、「リユース不可」といった課題があった。
これらの課題に対応するため、新たなコンクリート柱の
接続方式としてフランジ式を採用した分割式特殊柱「20D
分割柱」、「24D 分割柱」を開発した。
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分割式特殊柱の仕様検討
(1)部材長の検討
運搬費
×
高い
○
安い
○
安い
価
太く用地交渉が難航」、「運搬費が高い」、「建柱工期が長く
評
研 究 成 果
製造費
○
安い
○
安い
×
高い
工期
×
長い
○
短い
○
短い
(3)ラインアップの検討
従来の継台式特殊柱は製造数量が少ないもののライン
アップが 11 種類と多く、資材管理費の増加および製造ラ
イン稼働率の低下を招いていた。現場が必要とするライン
アップを見極めた上で、ボリュームゾーンに統一し「20D
長尺柱の運搬には、大型車両である電柱専用トレーラー
分割柱」、「24D 分割柱」の 2 種類に決定した。
の使用および道路法第 47 条の 2「特殊車両通行許可」に基
づく誘導車 2 台の配置が必要となり、運搬費の増加を招い
ている。
現場に施設する上では、お客さま用地交渉の容易化およ
このため、一般的な車両であるクレーン付トラックが使
び施設後のお客さま負担軽減の観点から地際径が細い方が
用可能かつ誘導車の配置が不要となるよう、各部材長が
良いが、地際径が細すぎると鉄筋量の増加により材料費が
8m 以下の 3 本継構造とした(第 1 表)。
高くなる。このため、高強度鉄筋の採用および構造の最適
第 1 表 運搬車両の外観
大型電柱専用トレーラー
一般クレーン付トラック
(2)接続方式の検討
一般的に使用されている継台式以外の分割柱の接続方式
は、コンクリート台柱の上部に鋼管を差し込む鋼管式、コ
ンクリート部材をフランジでボルト接続するフランジ式の
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(4)地際径細径化の検討
技術開発ニュース 2024.03/No.168
化により下柱をノーテーパとすることで 450mm への細径
化と低コスト化の両立を実現した(第 3 表)。
第 3 表 地際径の比較
項目
継台式
(従来品)
下柱テーパ
ノーテーパ
1/75
ノーテーパ
地際径
φ 600
φ 497
φ 450
コスト
100%
96%
95%
分割式
(5)耐久性の検討
フランジ式の分割柱は接続部に鋼材を使用する構造であ
ることから、コンクリート部と接続部の寿命協調を図る必
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