技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
復水器洗浄装置ボールカウンタの開発と精度向上
New development of sponge rubber ball counter for a condenser cleaning system
工業用カウンタを応用した光学式ボールカウンタの開発
執筆者
従来の復水器洗浄装置ボールカウンタは、ボールを 1 個ずつカウントするため細い配管
を複数使用しており、詰まり等によるトラブルが多発していた。そこで、幅広に流れる物
体を複数個同時にカウントできる光学式の工業用カウンタを応用し、トラブルの無いボー
ルカウンタを開発したので紹介する。
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研究の背景
電力技術研究所
機械グループ
石川 明
カウンタ
火力発電所の復水器洗浄装置に用いられているボールカ
カ
メ
ラ
流れ
ウンタは、配管内を通過する洗浄用のボールを LED センサ
照
明
流れ
によりカウントしている。この装置は、ボールを 1 個ずつ
カウントするため、ボール 1 個のみが通過できる細い配管
を用いており、貝等による詰まりが発生しやすい。また、
第 1 図 従来式(左)と光学式(右)のイメージ
貝の詰まりやセンサ劣化による、エラー発生時(洗浄ボー
ルの過不足による警報発報時)に、現場で装置の分解清掃
ボールの重なりについては、流速とボールのカウント
および、人による数量確認を実施する必要がある。
速度(600 個 / 分)をもとに、300mm 幅の範囲を 600 個
夏場等の特定時期に故障が集中し、故障時の対応に労力
ボールが 1.5m/s で、ランダムに 1 分間で通過すると想定
を要していることから、抜本的な装置の改良を検討して
した。1 万回のモンテカルロシミュレーションを行い、ボー
欲しいとの要望が、JERA 新名古屋火力発電所から研究所
ルの重なりの頻度を予想した。第 2 図に結果を示す。中心
に寄せられた。発電所のニーズをまとめると次のとおりで
間隔 1.25cm(0.5 φ ) 以下はボールを 1 個とカウントする
あった。
可能性が高いが、その個数は 10 個 (2%) 程度であり、精度
①ボールの詰まりが発生しない構造
(太い配管)
としたい。
上は大きな問題とならないことが予想された。
②センサのトラブルが少ない画像・光学式としたい。
③カウントの誤差は 5% 以下で極力少ない方が良い。
④価格は現行カウンタと同程度に抑えたい。
⑤できるだけ短期間で実用化したい。
2
基本構想の検討
第 2 図 モンテカルロシミュレーションの結果
画像・光学式のカウンタを中心に、有望と考えられる
メーカーに聞き取り調査を実施した。その結果、ベルトコ
配 管 は 100 φ で、 こ れ が カ ウ ン タ 窓 部 で 52mm×
ンベアを流れる部品を光学的にカウントする工業用カウン
300mm となることから、流れの断面積が約 2 倍に拡大す
タを利用することが、開発期間や価格の面も含め総合的に
る。そのままでは、カウンタ部で流れが広がらないことか
有望と考えられた。(株)光伸舎の工業用カウンタを適用
ら、配管の曲がりを利用し、流れを拡散することとした。
することとし、関係者で協議の上、基本構想を次のとおり
WindowsPC で利用できる流体シミュレーションソフト
とした。
(FlowSquere+) を用いて、簡易形状でシミュレーショを
①ボールのカウンタ部は、縦方向(流れと直角方向)に
行い、流れが全体に拡散することを確認した。
30cm 程度必要。
②ボールの重なりは誤差要因となるので、流れを拡散さ
せ、ボールを分散させる。
ボール (26mm φ ) の詰りが発生しないためには、配管
試作機の実機適用
の全ての場所において、ボール 2 個が並んで通過できる幅
配管の製作と、実機適用に関しては、JERA 新名古屋火
が必要となる。①を踏まえカウント部の断面を 52mm×
力発電所にて実施した。第 3 図にその配管形状を示す。
300mm とした。
画像・光学式カウンタのイメージを第 1 図に示す。
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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