技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
第 3 図 試作機の配管形状
配管と工業用カウンタを組み合わせた試作機を実機適用
した結果、ボールを実用的な精度でカウントでき、従来式
のような詰まりの発生は皆無であった。
第 5 図 改良後の配管形状
また、改良配管と工業用カウンタを実機に配置した現場
の状況を図 6 に示す。
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精度向上をめざした配管形状の改良
カメラ
照明(裏側)
旧カウンタ用センサ
試作機は、洗浄用ボール 550 個に対して最大でも誤差
25 個 ( 約 5%) 程度の精度が得られたが、安定的な運用の
ために、さらなる精度向上を達成する必要がある。データ
を分析した結果、一部に流速の遅いボールがあり、これを
制御盤
2 個と誤認することが誤差の要因となっていることが判明
した。これは、配管内の流速が均一でないことが原因と考
えられる。
第 6 図 改良配管の現場設置状況
そこで、WindowsPC で利用できる 3D-CAD(Fusion360)
を使用し、配管内部の流路設計を詳細に行った。流路設計
改良配管による試験結果を第 7 図に示す。これは、ボー
と流体シミュレーション(FlowSquere+ 使用 )の結果を第 4
ルを 1 個ずつカウンタ部に通過させ、その通過面積(流速
図に示す。
の逆数に相当)を計測した結果である。この分布から 1 個
と 2 個を区別する閾値を決めるので、分布の幅が狭いほど
精度が向上する。改良配管(橙色)は、試作配管(水色)
と比べて通過面積の分布の幅が狭く、精度が向上している
ことがわかる。
120
試作配管と改良配管の通過面積との比較
平均
試作配管と改良配管の通過面積のデータを比較するた
100
め、それぞれの平均を基準(1.0)として、データを変換
し、度数がボール550個相当となるように補正した。
度数
80
試作配管
60
改良配管
40
20
0
速い
誤差要因
遅い
通過面積
第 7 図 試作配管と改良配管の性能比較
第 4 図 試作配管(左)と改良配管(右)の内部流路
第 4 図の窓部断面の流速分布からわかるとおり、試作配
改良配管の実機適用結果は、誤差 10 個 (2%) 以下とな
り、良好な精度が確認できた。
管(左)では断面部の流速に大きなムラがあるが、改良配
管(右)では、ほぼ均一な流速分布となっている。
5
改良配管の実機適用
6
成果の活用と展開
開発したボールカウンタは、発電所で 2022 年 4 月から
運用されている。JERA では、長期運用に伴う窓への藻類
流路設計結果にもとづき、JERA 新名古屋火力発電所に
付着等の課題に取り組むとともに、2023 年度中に新名古
て改良配管の製作と、実機適用を実施した。第 5 図に改良
屋火力発電所の 7 号機全軸に適用する計画である。さら
後の配管形状を示す。
に、他発電所への適用も検討している。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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