技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
圧発生器をおいても良いのでは?という発想の元、高電圧
高電圧検電法および高電圧印加法については、実際の風
発生器の接地側を風車のタワーに繋げ、高電圧側を接地線
車でも問題なく導通確認が出来ることを確認した。なお、
を通じて、ドローンに積んだ検電器の胴体部分(把持部
この 2 つの手法の使い分けについては、第 1 にはより簡易
分)に接続することとした。図 4 にその原理図を示す。
な高電圧印加法で行うこととし、レセプタ部の塗膜が厚い
(3)高電圧印加法
場合には高電圧検電法を用いるのが良いと考えられる。図
本法は高電圧を印加する電線をドローンを用いてレセプ
7 に高電圧印加法で導通確認をした際にオシロスコープに
タ部に近づけ放電させ、ダウンコンダクタの導通を確認す
より計測された電流波形を、図 8 に実風車での検証試験の
るものである。導通があればループ回路が形成されること
様子を示す。
から放電に伴い電流が流れる。これを地上でオシロスコー
プ等で確認することにより導通が確認できる。図 5 に原理
図を示す。なお、この高電圧源は 1kV 程度の電圧が一時的
に印加できればよく、小型のコンデンサを用いメガー(絶
縁抵抗計)で充電するような簡易なものでも十分である。
高電圧印加
高電圧印加
検電器
I
第 7 図 高電圧印加法による通電電流波形の例
高電圧印加
HV
第 4 図 高電圧検電法
3
電流を検出し
導通を確認
V
高電圧源
(小型コンデンサに充電)
第 5 図 高電圧印加法
検証結果
考案した前述の 3 つの手法について、屋内での模擬実験
を実施し問題なく計測できることを確認した後、静岡県御
前崎市にある実際の風車を用いて 3 つの方法の実用性検証
第 8 図 ドローンを用いた導通確認の様子
を行った。図 6 に風車ブレードのレセプタにアプローチす
るための電極を搭載した特殊仕様のドローンの写真を示
す。高周波印加法の電極は表面に絶縁ゴムを付けた平板電
極を、高電圧検電法および高電圧印加法では、写真に示す
ような金属たわしのような形状の電極を用いた。どの方法
4
本開発の効果
も原理的には非接触での計測となるが、ドローンを用いる
本手法を用いれば、従来 1 基当たり 6 時間掛かっていた
場合、触れるか触れないかの状態で電極を静止させること
点検時間が 1 時間ほどに短縮され約 80% の削減が見込まれ
はできないため、導通確認時には電極がレセプタに軽く触
る。また、点検人工についても、従来 1 基当たり 3 人必要
れることとなる。
だったものが 2 人で可能となり、約 30% の削減が見込ま
高周波印加法について、屋内試験では断線有り無しで明
れる。
確な共振周波数の差がみられたが、実際の風車を用いた試
験では、明確な共振点の差は見出せなかった。この理由と
して、考案時には、等価回路として、直列の静電容量分だ
けを考慮したが、実際には、風車タワーや地面に並列に入
る浮遊静電容量が存在するためと考えられた。
5
まとめ
短時間の軽微な接触でダウンコンダクタの導通確認でき
る技術を考案し、ドローンを用いることで点検の大幅な効
率化が図れることを実証した。本手法は 2024 年度より実
際の風車点検で採用される予定である。なお、本研究は、
中部大学工学部電気電子システム工学科の山本研究室と共
同で実施した。
第 6 図 電極棒を搭載した特殊仕様のドローン
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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