技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
水力発電所沈砂池の効率的な排砂形状の開発
Development of an Efficient Sediment Discharge Shape for the Reservoirs of Hydroelectric
Power Plants
水理模型実験を用いた狭隘地点での効果的な水理設計
執筆者
地形や立地上の制約により取水口と河床との標高差が小さい水力発電設備の場合、河川
からの土砂が流入しやすく、また溜まった土砂を沈砂池から除去する期間は発電停止によ
る減電となる。そこで、通常の発電取水には影響を与えず、かつ土砂の排砂時には効率的
に排砂が可能な形状の沈砂池を開発した。
電力技術研究所
土木グループ
山田 浩司
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背景と課題
する排砂路が設けられる。
一方、検討モデルは第 2 図に示すような河川から取水
した直後に 90° の曲がり水路を経て沈砂池が配置されてい
脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギー電源の保
る。また、堆砂後の排砂は沈砂池下端から直角に河川に向
有拡大に向け新規水力開発等を加速している。しかし水力
かう排砂路が配置され、全区間においてトンネル構造とい
発電所については、これまで開発が行われてきた建設に適
う特殊な配置である。
した好立地な地点はほとんどなくなり、残された地点は立
さらに、河川からの取水口と沈砂池下端は立地上の制約
地的に狭小等制約条件が多い。
により標高差は僅か 1.5m しか確保できず排砂設計に対し
特に発電用取水に伴い河川からの土砂の流入が多い地点
て非常に厳しい条件である。
では、土砂排除のための長期発電停止を引き起こすため、
これを防ぐために土砂を取り除く沈砂池 ( 第 1 図 ) が設けら
れる。沈砂池に堆積した土砂は出水後の発電停止中に排砂
門を開けて流水により河川へ排砂を行う ( 数時間程度の自
取水口
動排砂 )。しかし、沈砂池が立地的制約(曲がり、緩勾配
排砂路
等)等により十分に排砂ができない形状であると、職員が
現地に出向し手動操作による排砂に加え手作業による土砂
排除が必要となり、沈砂池の規模によってはこの作業に数
日要することが想定され大きな減電となる。
そこで、曲がりや緩勾配等の制約のある沈砂池を検討モ
沈砂池
デル対象として模型実験により排砂に効果的な形状を検討
した。
第 2 図 検討モデルの沈砂池配置
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模型実験による検討
模型実験においては、排砂の前提となる堆砂過程の再現
(通常時の取水流量 10m3/s)を行い、その後排砂の実験
(排砂流量 1.3m3/s、3 時間)を行うこととした。
まず従来の沈砂池形状での模型実験を行い、排砂を行っ
第 1 図 一般的な沈砂池の例
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検討モデル
ても河川から取水した直後の 90° の曲がり部以降で内側に
土砂が残ることを確認した。そこで今回、曲がり部以降の
排砂を向上する方法をさらに検討することとし、①曲がり
に沿って均等に流れを導流すること、②部分的に流れを攪
乱させて排砂を促進させること、を両立できる方法を検討
一般的な沈砂池は第 1 図に示すように河川からの取水
することとした。
後、流速を落として沈砂するため拡幅された沈砂池が水路
通常時の取水に影響を与えず局所的な流砂および河床変
と直線的に配置され、沈砂池下端には排砂時に土砂を排出
動を制御できる方法として、短い板状の構造物である没水
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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