技術開発ニュース No.168

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- 型ベーン工 1) が既往技術としてある。今回、この没水型
今回、検討における排砂効果の指標として、排砂率を次
ベーン工にヒントを得て、さらなる排砂促進を検討した。
のように定義し比較評価した。
なお、ベーン工もそうであるがこのような局所的な構造
物はモデル格子の関係で解析にて評価するのが困難であ
る。そこで、水理模型を用いてどのような構造物が効果的
排砂率(%) =
か試行錯誤した結果、ベーン工を連続的に配置するような
排砂により沈砂池から排砂した土砂量
排砂前に沈砂池に堆砂した土砂量
排砂時にも没水する壁状の導流体(導流壁)を見出し、模
実験による排砂率の結果を第 5 図に示す。実験の結果、
型実験にて評価することとした。
今回考案した沈砂池の底面に曲がりに沿って排砂時でも没
新たに考案した形状は、第 3 図に示すように沈砂池の底
水する低い壁状の導流体のレーン(導流壁)を複数設置す
面に曲がりに沿って排砂時でも没水する低い壁状の導流体
ることにより、排砂率が 10% 以上向上し、排砂促進効果が
のレーン(導流壁)を複数設置するものである。
あることが明らかにした。
100
93.7
90
81.8
80
導流体レーン
(%)
(%)
研 究 成 果
70
60
従来形状
ケース
今回提案形状
第 5 図 排砂実験の結果
第 3 図 底面に設置した没水する壁状の導流体
4
まとめ
前述した①曲がりに沿って均等に流れを導流すること、
立地上、高低差がほとんどなく曲がりがあり排砂が非常
②部分的に流れを攪乱させて排砂を促進させること、を満
に困難な場所に設置する水力発電所沈砂池において、新た
足するためにこの導流体の効果的な高さを検討した結果、
に考案した「沈砂池の底面に曲がりに沿って排砂時でも没
排砂時の水位の約 20 ~ 80% で没水する高さが効果的であ
水(排砂時の水位の約 20 ~ 80%)する複数の導流体レー
ることを見出した。模型実験(提案形状)では、この導流
ン(導流壁)」を設置することにより、効果的な排砂が可
体の高さを排砂時水位の約半分として模型を製作し実験を
能となることを示すことができた。
行った。
今回考案した排砂に効果的な沈砂池の形状については特
実験の結果、第 4 図に示すように、排砂時の流れが「導
許出願済みである。
流壁に沿った流れ」と「導流壁を乗り越える流れ」に分配
され、乗り越えた流れは導流壁の裏側で攪乱することで堆
砂した土砂を巻き上げて排砂が促進していることを確認
した。
参考文献
1) 太田一行・佐藤隆宏,取水口土砂流入制御用ベーン工の特性把握と水力発電へ
の適用性に関する水理的考察 -海外の火力・原子力発電所における既往事例の
調査-,電力中央研究所報告,SS22006, 2023
導流壁に沿った流れ
導流壁を乗り越える流れ
第 4 図 提案形状における排砂の状況
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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