技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
線)に沿っており、脚内の非集中箇所と集中箇所では粒径
堆積が見られることから表面侵食が進行していると思われ
4㎜を超える雨滴が様々な速度で落下していた。これは上
る場所である(第 4 図)。鉄塔敷中央および各脚間の計 5 地
部の鉄塔構造の様々な高さから落下するため終端速度に達
点の点群データを合成し、12 月と 7 月の差分を算出し、差
しないからで、高さ 2 ~ 3m 程度の位置にある交点プレー
分 50 ~ 200㎜のプラスを赤、マイナスを青となるよう可
トからは 5m/s 前後の雨滴が多数落下していることがわ
視化した。
かる。
第 3 図は高さの異なる雨滴集中箇所の落下速度を示して
いる。直上の構造までの距離が 3.7m 地点での雨滴落下速
度が 5 ~ 6m/s に集中しているのに対し、距離が 8.2m 地
点では 7 ~ 8m/s と終端速度に近づいており、大粒の雨滴
が速い速度で落下することから大きな運動エネルギーを有
することがわかる。
第 4 図 BLK360(左)と表面侵食が進行している鉄塔敷(右)
(2)検出結果
第 5 図に示した鉄塔敷では、変化が 50㎜以下であること
を示す淡色部分も多いが全面で色の変化があり、土砂の移
動を捉えていた。また、半年間に青色の筋が複数形成され
ていた。これは 50 ~ 200㎜深度の水みちができたことを
示し、それらの起点、向き、長さも詳細に読み取ることが
第 3 図 高さの異なる位置から落下する雨滴径と落下速度
できた。現地で目視した限りではこれらをすべて視認する
ことは困難であった。
(3)鉄塔敷の雨滴衝撃力の算出
BLK360 は軽量で持ち歩きも容易であり、設定にもよる
2021 年 6 ~ 12 月の降雨について、2 基の鉄塔下の雨滴
が測定時間も 1 地点数分と短い。侵食状況を客観的かつ明
の総運動エネルギーを算出した(第 1 表)。これが鉄塔敷へ
確に記録するのに有効なツールとなる可能性がある。
の雨滴衝撃力となる。測定した 2 基では、非集中箇所にお
いても脚外の 1.2 倍、1.3 倍と雨滴衝撃力は大きく、集中箇
所では最大で 10.3 倍、18.5 倍にもなった。レーザー雨滴
計直下に設置した転倒ます型雨量計(第 1 図)のデータか
ら、雨量についても脚内で脚外の最大 11.2 倍の観測値とな
り、雨量、雨滴衝撃力ともに脚内の降雨による負荷が大き
いことが数値で示された。
第 1 表 鉄塔敷の雨滴衝撃力
雨滴の総運動エネルギー(kJ/㎡)
脚内 A
鉄塔 1
鉄塔 2
脚外 B
脚内 / 脚外
A/B
第 5 図 鉄塔下における半年間の侵食の進行
測定期間
非集中箇所
17.08
13.31
1.3
6/23 ~ 10/8
集中箇所 1
127.15
14.18
9.0
7/3 ~ 12/3
集中箇所 2
145.61
14.18
10.3
7/3 ~ 12/3
非集中箇所
24.01
20.26
1.2
6/23 ~ 12/7
集中箇所 1
78.42
14.76
5.3
8/6 ~ 12/7
集中箇所 2
128.26
6.93
18.5
9/3 ~ 12/7
4
今後の展開
現在、これらの計測結果をもとに送電鉄塔下の雨滴衝撃
力を再現した降雨装置を製作し、緑化植物の定着に与える
影響を把握しながら対策方法の検討を進めている。
3
地上 LiDARを用いた土壌侵食の可視化
(1)土壌侵食の検出方法
地上型レーザースキャナ BLK360(Leica Geosystems
社)を用い、山間地の鉄塔敷において、2021 年 7 月と 12
月に点群データを取得した。計測地の鉄塔敷は大きなガリ
侵食はないものの全面が裸地化しており、斜面下部に土砂
共同研究先
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
国立大学法人 京都大学
既発表
送電鉄塔下の敷地における雨滴衝撃力の定量化:(2023/9)水文・
水資源学会 / 日本水文科学会 2023 年度研究発表会
Detection of soil erosion under transmission towers:(2023/11)
13th ICLEE Korea
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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