技術開発ニュース No.168

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- Results of Research Activities
脱炭素対応アルミインゴット急速予熱装置の開発
Development of Decarbonized Super High Speed Aluminum Ingot Preheating Installation
高効率加熱で工場の脱炭素化に貢献
執筆者
アルミ工業製品の原材料である数 kg のアルミインゴットの溶解工程において、従来は
不可能であった極めて短い時間での予熱を実現する急速予熱装置を開発した。これによ
り、自動車関連工場等の大きな脱炭素と生産性向上が可能となる。
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開発の背景と目的
アルミインゴットとは、アルミ製品の原材料であるアル
ミニウム地金の数 kg の延べ板のことである。アルミは軽
量で加工しやすいことから、自動車部品をはじめ様々な工
業製品に使用されており、これらの製品の多くは、溶解炉
でアルミインゴットを約 650℃まで加熱し、溶解した液状
のアルミを成型し生産されている。従来、溶解炉の熱源に
定格電圧
AC200V 三相三線式(60Hz/50Hz)
本体寸法
幅1,485mm×奥行 3,120mm×高さ2,370mm
電気容量
加熱寸法
溶解工程の電化に向けて研究開発が進められているが、品
加熱運転時 50kW /起動時 30kW
長さ700mm×奥行100mm×高さ40mm 程度
本体質量
はガスや重油を燃料とするバーナーが用いられており、溶
解工程の脱炭素化が求められていた。脱炭素化のために、
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
長 伸朗
プロジェクト推進グループ
遠藤 紀之
第 1 表 開発品の基本仕様
加熱性能
研 究 成 果
加熱方式
2,300kg
流体制御式(電気ヒータ+熱風)
昇温時間
最短 23 秒 / 個(第 2 表参照)
処理量
最大 800kg/h(第 2 表参照)
昇温温度
最高 500℃
熱効率
最大 86%(第 2 表参照)
※お客さまニーズ(温度・処理量等)に合わせた別仕様も可能
質維持と加熱時間短縮の両立が大きな課題となっていた。
そこで、アルミインゴットの溶解工程において、従来は
不可能であった極めて短い時間で予熱できる急速予熱装置
を、株式会社日本高熱工業社および株式会社豊電子工業と
共同で開発した。
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開発品の仕様
第 2 図 開発品の内部イメージ
開発品の外観および基本仕様を、第 1 図と第 1 表に示
す。開発品内部には、熱風吹出ノズルと電気ヒータが設置
されている(第 2 図)
。観覧車状に配置した収納容器に複数
のアルミインゴットを同時に収納して、アルミインゴット
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開発品の特長
開発品の加熱性能は第 2 表のとおりであり、開発品の特
が加熱される。
長は以下のとおりである。
① 短時間かつ均一の加温を実現
数百℃の熱風を、装置内で高速かつ整流化して循環させ
ることで、従来は両立が難しかった急速加熱とインゴット
全体の均一な加熱を可能とした。5kg のインゴット 1 個を、
最短 23 秒で加熱することが可能である。また、電気ヒー
タによる精密な制御により、装置内に温度変動があった場
合でも、瞬時に温度を回復することが可能である。
② 高い熱効率で脱炭素に貢献
開発品の熱効率(対象物への入熱量 ÷ 消費電力量)は、
バーナー式の 20 ~ 50%を大幅に上回り、最大 86% を達
第 1 図 開発品の外観
成した。
③ 多連装式収納による高い処理能力
観覧車状に配置した収納容器に複数のアルミインゴット
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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